八百万の学校 其の弐

浅井 ことは

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救出!

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「おいおい、それは結婚してからにしてくれ。俺はどちらの意見も聞かん!テチ、飯を持ってきてやれ。ここまで喋れるなら、飯を食えば体力もつくはずだからな」

直ぐにと言って、何故か祖母と共に行ってしまったが、何故か迦具土は石長さんの布団を隣に持ってきて敷き直している。

まるで夫婦みたいだな……

「おい、お前も寝てろ。純平の横ならば良いだろう?」

「そそそそそ、それは……」

とにかく横になれと迦具土に無理やり布団に入れられているが、熱でもあるんじゃないかと心配になるほど顔が真っ赤で、やはりこっちが恥ずかしくなるが、祖父は「婆さんが若い頃を思い出す」などと呑気なことを言っている。

暫くして、祖母とテチがご飯を持ってきたので、ゆっくりでいいのでと食事をしてもらい、水分は沢山摂ってもらう。

「純平、少し寝なさい。まだ顔色が悪いわよ?」

「そうだけど、気になって」

「気にしてても八意様がいつお戻りになるか分からないんですからね?」

「わかったよ」

「石長さんも横になった方がいいんじゃない?」

「私は……」

なにか言おうとしているのは分かったが、兄も石長さんもまだ顔色が悪い。

祖母に頼んで二人を見ていてもらうことにして、自分たちは元いた広間に戻る。

「大国さん、八意さんはいつ頃戻るのかな?」

「後少しで戻るだろう。上の者達は何でもかんでも俺たち任せか、決めると融通は聞かないから、八意でも話し合いに持っては行けないだろう」

「その通りじゃ」

フッと姿を現したのは八意さん。

「こちらと、上の時間は少し違うからのぅ」

「で!どうなったんですか?」

「ふむ。何ともならなんだ……ことは無かった」

「と言うと?」

八意さんをみんなで囲み、早く話せと大国さんや道真さんが急かす。

「まず、石ちゃんを神の国に一旦戻す」

そう聞いて迦具土の時のことを思い出さない訳じゃあない。

「俺の時みたいになにかさせるのか?」

「そうではない。神気の回復を先に……との事じゃ。で、純平は翔平と共に儂らの使いとして認めるという事で、様子を見てもらえることになった」

「じゃあ、誰も死んだりとか、傷ついたりとかしなくて済むんですね?」

「そうなる」

「八意、何をしてきたんだ?」

「もしかしたら、石ちゃんの神気が純平の中から消える可能性も否定はできんとなってのぅ。ほれ、祖父殿に渡した神気をいちど回収した後に、また渡したじゃろう?それも結局は代替わりの後すぐじゃったから、濃さ的には純平と変わらんと言うておった。じゃから、様子を見る方向に持っていけたんじゃが、どうも、佐野家に興味がかなりあるようでのぅ」

「そうか……」

「てことは、兄貴はどうなるの?」

「暫くは石ちゃんの神気で体力なども戻るじゃろぅ。その後、石ちゃんの神気回復を待って少しずつ神気を抜きつつ魂を戻していくか、自然に無くなるのを待つかじゃな」

「何にせよ、石長が上に行ったら凡そひと月は戻ってこれん。この……石長の渡してきた布。これを使えば俺にも神気は抜けるが、やるかやらないかの前に、回復が先だ。翔平、これを決めるのはお前の兄だ。分かるな?」

「はい……」

「よし、ならば石長を連れて俺は上に行くとしよう。八意あとは任せた」

「年寄り扱いが過ぎるぞ?」

「何言ってんだ!もっと働け!」

その後石長さんは八意さんに連れられて、テチさんと共に神様の所へ。

兄貴と祖父母は大国さんが家に送ってくれ、道真さんと迦具土と俺は神社の茅葺き屋根の家の中に戻った。

戻ったのはいいのだが、なんで茅葺きの家なんだろう?

「翔平、この本を。学業に役に立つから使ってくれ。解釈がちょっと古くなるが、今の参考書というのをやってみた。今の言葉に置き換えたらいいだろう」

渡されたのはいつもやってる分厚い参考書。
全て答え合わせは済んでいるといい、解説が書き込まれている。
しかもとってもわかりやすい。

「ありがとうございます」

「何、二日で終わったから大したことは無い。なにか礼をと思っていたので喜んでもらえて良かった」

よかったも何も、一番役に立つ教科書だ!

「道真、もう帰るのか?」

「もっと居たいが、本来はこの参考書を渡すために来たのだから、目的は果たしておる」

「そうか。送るか?」

「いや、一人で大丈夫だ。あ、これも渡しておこう。学業のお守りで、直接気を入れた物だから試験では緊張せずに出来るだろう」

「ありがとうございます。俺、頑張ります」
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