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奈良へ__
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「あー!」
「なんだ?」
「宿どうしよう……」
「迦具土、術で取り消して荷物ごとここに持ってこれるか?」
「はいはい。行ってきますよっ」
迦具土に宿のことは任せ、行く寸前に引き止めてお金を渡し、飲み物とお土産で売ってるものでいいからと何やら大国さんが頼んでいて、「金払え!」との言葉と共に消える。
ちゃんと買い物ができるのか心配でたまらない……
「爺ちゃん、横になったら?顔色悪いよ?」
「いい……純平が心配なだけだ」
「でも……」
「源三郎、横になってきた方がいい。眠れなくてもいいから。翔平も寝てこい。夜は長いからな」
「大国さん達は?」
「テチを残していく。俺は今夜の準備にちょっと回ってくるから、晩飯残しておいてくれ」
大国さんも出ていき、テチにも隣の部屋にと言われて渋々行くと、祖母も「じゃあ、みんなで昼寝でもしましょうか」と呑気に布団を敷いてくれている。
神様にしても祖母にしても緊張感というものがないのか?と思いながらも布団に入るとすぐに寝てしまった。
起こされたのは夕方の十七時。
「翔平、夕飯にと大国様の使いの方からおにぎりと材料を貰ったのだけど……」
「材料?」
「野菜とか肉とか……お台所って五重塔にあるのかしら?」
いやいや、普通に考えてないだろう。
それに、晩飯は来るんじゃなかったのか?
そんな心配をしていると、迦具土がちょうど戻ってきたので材料を見せると、「バカなのか?やっぱり、頭まで幼稚園児になったんじゃねーのか?」と怒りながら、テチに何かを話している。
「今から近くの社にテチと祖母殿を飛ばす。お前も行くか?」
「うん」
迦具土に連れてきてもらったのは山の中の小さな社。
なのに、中に入ると近代的で、台所も家とあまり変わらない作りとなっている。
「ここは誰の社なの?」
「テチの神社と繋がってる所なんだが、まぁ良く中をこんなふうにしたものだ」
「中くらいは……竈だと作るのが面倒だからと言っていたらこうなった」
「じゃあ、お台所借りましょうかねぇ。翔平はじゃがいも剥いてちょうだいな」
テチも手伝うと言うが、流石に台所を借りたのに手伝えとは……「あら、じゃあ、こっちをこんなふうに切って」と指示している。
もう婆ちゃんについていけない……
テチが切っていたのはウインナー。
そのウインナーより少し大きめに短冊切りにしたジャガイモを水に晒しておき、祖母に言われるまま人参の皮を剥いたり、肉を切ったり。
鍋に水を入れて煮込み始めて、肉じゃがかな?と思っていたら、袋から出てきたのはシチューの素。
シチューにおにぎりに……ジャーマンポテト。
この献立はちょっと微妙だが、そこに追加されたのは、じゃがいもと大葉の梅じそ揚げ。
輪切りにしたじゃがいもとじゃがいもの間に、大葉と梅、そしてチーズを挟み、パン粉をつけて揚げたものなのだが、大きな手の割に器用に挟んで揚げていくテチは料理が好きなのだろう。
祖母と特に会話をすることは無いものの、息がピッタリだ。
「テチ様、お皿など借りて行っても良いのかしら」
「好きなのを使ってください。後で纏めて戻すので」
「じゃあ、人数分のお椀とお箸にスプーン。後、大皿を二つお借りしますね。翔平、お盆に乗せてちょうだいな」
「うん。でも、凄いじゃがいも尽くしなんだけど」
「沢山とれたのかしらねぇ?季節じゃないと思うんだけど」
「この前、大国様がスーパーでじゃがいもを箱売りで買い占めてました。じゃがいもがあれば、死なぬとか何とか……」
「なんだ?」
「宿どうしよう……」
「迦具土、術で取り消して荷物ごとここに持ってこれるか?」
「はいはい。行ってきますよっ」
迦具土に宿のことは任せ、行く寸前に引き止めてお金を渡し、飲み物とお土産で売ってるものでいいからと何やら大国さんが頼んでいて、「金払え!」との言葉と共に消える。
ちゃんと買い物ができるのか心配でたまらない……
「爺ちゃん、横になったら?顔色悪いよ?」
「いい……純平が心配なだけだ」
「でも……」
「源三郎、横になってきた方がいい。眠れなくてもいいから。翔平も寝てこい。夜は長いからな」
「大国さん達は?」
「テチを残していく。俺は今夜の準備にちょっと回ってくるから、晩飯残しておいてくれ」
大国さんも出ていき、テチにも隣の部屋にと言われて渋々行くと、祖母も「じゃあ、みんなで昼寝でもしましょうか」と呑気に布団を敷いてくれている。
神様にしても祖母にしても緊張感というものがないのか?と思いながらも布団に入るとすぐに寝てしまった。
起こされたのは夕方の十七時。
「翔平、夕飯にと大国様の使いの方からおにぎりと材料を貰ったのだけど……」
「材料?」
「野菜とか肉とか……お台所って五重塔にあるのかしら?」
いやいや、普通に考えてないだろう。
それに、晩飯は来るんじゃなかったのか?
そんな心配をしていると、迦具土がちょうど戻ってきたので材料を見せると、「バカなのか?やっぱり、頭まで幼稚園児になったんじゃねーのか?」と怒りながら、テチに何かを話している。
「今から近くの社にテチと祖母殿を飛ばす。お前も行くか?」
「うん」
迦具土に連れてきてもらったのは山の中の小さな社。
なのに、中に入ると近代的で、台所も家とあまり変わらない作りとなっている。
「ここは誰の社なの?」
「テチの神社と繋がってる所なんだが、まぁ良く中をこんなふうにしたものだ」
「中くらいは……竈だと作るのが面倒だからと言っていたらこうなった」
「じゃあ、お台所借りましょうかねぇ。翔平はじゃがいも剥いてちょうだいな」
テチも手伝うと言うが、流石に台所を借りたのに手伝えとは……「あら、じゃあ、こっちをこんなふうに切って」と指示している。
もう婆ちゃんについていけない……
テチが切っていたのはウインナー。
そのウインナーより少し大きめに短冊切りにしたジャガイモを水に晒しておき、祖母に言われるまま人参の皮を剥いたり、肉を切ったり。
鍋に水を入れて煮込み始めて、肉じゃがかな?と思っていたら、袋から出てきたのはシチューの素。
シチューにおにぎりに……ジャーマンポテト。
この献立はちょっと微妙だが、そこに追加されたのは、じゃがいもと大葉の梅じそ揚げ。
輪切りにしたじゃがいもとじゃがいもの間に、大葉と梅、そしてチーズを挟み、パン粉をつけて揚げたものなのだが、大きな手の割に器用に挟んで揚げていくテチは料理が好きなのだろう。
祖母と特に会話をすることは無いものの、息がピッタリだ。
「テチ様、お皿など借りて行っても良いのかしら」
「好きなのを使ってください。後で纏めて戻すので」
「じゃあ、人数分のお椀とお箸にスプーン。後、大皿を二つお借りしますね。翔平、お盆に乗せてちょうだいな」
「うん。でも、凄いじゃがいも尽くしなんだけど」
「沢山とれたのかしらねぇ?季節じゃないと思うんだけど」
「この前、大国様がスーパーでじゃがいもを箱売りで買い占めてました。じゃがいもがあれば、死なぬとか何とか……」
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