八百万の学校 其の弐

浅井 ことは

文字の大きさ
上 下
38 / 103
奈良へ__

.

しおりを挟む
「ここからは?」

「タクシーというので宿に行こうと思うが、昼がまだだったの」

「あ、そう言えば。でも、宿に食事つけてないから、夜はどこかで食べようと思ってて……今食べたら夜はいらないんじゃないかな?」

「俺は腹が減ったぞ?」

「俺もだよ!でも、夜食べられなくなったら嫌じゃん」

「仕方がない。一先ず宿へと行こうか」

道真さんの後を追って、タクシーを拾って宿まで行きチェックインすると、なぜだか同じ部屋、そして食事付きとなっていたので、何かしたんだなと部屋について聞くと、「車から見ていたが、ここは山の中腹。買い物もままならんぞ?」と言われ、それでかと納得するも、なるべく術は使わないでもらいたいとお願いをして、風呂へと行く。

「おおー!広い!」

頭と体を洗ってゆっくり浸かり、一面ガラス張りの窓から外を見るとほぼ全体が見渡せ、東大寺と五重塔もしっかりと見える。
夕暮れになったらもっと綺麗なんだろうなと思いながら部屋に戻り、祖父に電話を入れる。

『もしもし、爺ちゃん?』

『無事に着いたか?』

『うん、今宿についてお風呂はいった。道真さんが食事付きにしてくれたんだけど……』

『何か買うところはなかったのか?』

『山の中だよ?』

『すまんな、そこしか空いてなかったから。それより、純平と連絡が取れんのだ。翔平、掛けてみてくれんか?』

『あ、俺も聞きたかったんだよ。昨日も電話繋がらなかったし。どうしたんだろう』

『分かった。私も何度か掛けてみるとしよう。明日私達は夜に大国様の神社へ行くことになったが、翔平、迦具土君がいるからと言って気を抜いてはダメだぞ?』

『分かってる』

何かあれば連絡をして欲しいと頼んで電話を切り、兄に電話をかけるがやはり留守電のまま。

「迦具土、兄貴とやっぱ連絡取れないんだけど」

「爺さん達もか?」

「そう。何かあったのかな?まさか一人で法隆寺行ってないよね?」

「それは無いだろ?行ってどうにかなるものでもないし」

「だよなー」

部屋に戻ると食事の用意がされ、懐石料理のようだが、黒いお椀の蓋を開けると中にはカブか何かの味噌でんらくのようなものが入っていた。

「なんだろうこれ」

そばに置いてあった紙を見ると、『柿の味噌田楽』と書いてあり、作り方も書いてあったので祖母に渡そうと写メを撮ってから紙を鞄の中に入れる。

食事を堪能してから布団を敷いてもらい、「ご家族でで観光ですか?お爺さん孝行ですねぇ」と言われ、道真さんがお爺ちゃん、迦具土と俺が兄弟だと仲居さんに勘違いされてるようで、つい、ポカーンとしてしまった。

確かに見えない訳では無いが、平安時代のお爺ちゃんて何代前だよ!

「どうぞごゆっくり」

仲居さんが部屋を出たので、明日どうやっていくのかを教えてもらうために地図を出す。

「ここからまた興福寺までタクシーとやらで行く。その後にこの建物の裏。人も少ないのは確認してあるから、そこから法隆寺まで飛ぶ。法隆寺に着いたら、周りから一周して中に入り、どこに何があるのかを覚えてもらうんだが……流石にずっとここにいる訳にも行かないと思うのじゃが……」

「何か問題でも?」

「翔平よ、お主、お昼ご飯とかはどうするつもりじゃ?」

「あ……二日目の宿にも荷物おきに行かないと」

「朝、預かってもらおう。一度見て回ったら、食事をして一度宿に戻ろう。そこで大国様達と合流する予定なんだが……テチと言うやつを知っておるか?」

「え、うん」

「もしかしたら連れてくるかもしれんのぅ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

大正石華恋蕾物語

響 蒼華
キャラ文芸
■一:贄の乙女は愛を知る 旧題:大正石華戀奇譚<一> 桜の章 ――私は待つ、いつか訪れるその時を。 時は大正。処は日の本、華やぐ帝都。 珂祥伯爵家の長女・菫子(とうこ)は家族や使用人から疎まれ屋敷内で孤立し、女学校においても友もなく独り。 それもこれも、菫子を取り巻くある噂のせい。 『不幸の菫子様』と呼ばれるに至った過去の出来事の数々から、菫子は誰かと共に在る事、そして己の将来に対して諦観を以て生きていた。 心許せる者は、自分付の女中と、噂畏れぬただ一人の求婚者。 求婚者との縁組が正式に定まろうとしたその矢先、歯車は回り始める。 命の危機にさらされた菫子を救ったのは、どこか懐かしく美しい灰色の髪のあやかしで――。 そして、菫子を取り巻く運命は動き始める、真実へと至る悲哀の終焉へと。 ■二:あやかしの花嫁は運命の愛に祈る 旧題:大正石華戀奇譚<二> 椿の章 ――あたしは、平穏を愛している 大正の時代、華の帝都はある怪事件に揺れていた。 其の名も「血花事件」。 体中の血を抜き取られ、全身に血の様に紅い花を咲かせた遺体が相次いで見つかり大騒ぎとなっていた。 警察の捜査は後手に回り、人々は怯えながら日々を過ごしていた。 そんな帝都の一角にある見城診療所で働く看護婦の歌那(かな)は、優しい女医と先輩看護婦と、忙しくも充実した日々を送っていた。 目新しい事も、特別な事も必要ない。得る事が出来た穏やかで変わらぬ日常をこそ愛する日々。 けれど、歌那は思わぬ形で「血花事件」に関わる事になってしまう。 運命の夜、出会ったのは紅の髪と琥珀の瞳を持つ美しい青年。 それを契機に、歌那の日常は変わり始める。 美しいあやかし達との出会いを経て、帝都を揺るがす大事件へと繋がる運命の糸車は静かに回り始める――。 ※時代設定的に、現代では女性蔑視や差別など不適切とされる表現等がありますが、差別や偏見を肯定する意図はありません。

世界的名探偵 青井七瀬と大福係!~幽霊事件、ありえません!~

ミラ
キャラ文芸
派遣OL3年目の心葉は、ブラックな職場で薄給の中、妹に仕送りをして借金生活に追われていた。そんな時、趣味でやっていた大福販売サイトが大炎上。 「幽霊に呪われた大福事件」に発展してしまう。困惑する心葉のもとに「その幽霊事件、私に解かせてください」と常連の青井から連絡が入る。 世界的名探偵だという青井は事件を華麗に解決してみせ、なんと超絶好待遇の「大福係」への就職を心葉に打診?!青井専属の大福係として、心葉の1ヶ月間の試用期間が始まった! 次々に起こる幽霊事件の中、心葉が秘密にする「霊視の力」×青井の「推理力」で 幽霊事件の真相に隠れた、幽霊の想いを紐解いていく──! 「この世に、幽霊事件なんてありえません」 幽霊事件を絶対に許さない超偏屈探偵・青木と、幽霊が視える大福係の ゆるバディ×ほっこり幽霊ライトミステリー!

ハイブリッド・ブレイン

青木ぬかり
ミステリー
「人とアリ、命の永さは同じだよ。……たぶん」  14歳女子の死、その理由に迫る物語です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

Rasanz‼︎ーラザンツー

池代智美
キャラ文芸
才能ある者が地下へ落とされる。 歪つな世界の物語。

少年神官系勇者―異世界から帰還する―

mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる? 別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨ この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行) この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。 この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。 この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。 この作品は「pixiv」にも掲載しています。

処理中です...