八百万の学校 其の弐

浅井 ことは

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夏祭り

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とーっても話しかけずらかったが、兄に先程聞いた話をすると、石長さんが「うずめ様ですと?降りてこられたのですか?」と驚いている。

「うん。迦具土がものすごく嫌がってて、でも浴衣は着てくれたよ?」

「あぁ、それならば……」

みんな知ってるんだ。

あられもない姿で踊っていたのを……

「あの、うずめちゃんて呼んでほしいって言われたから、兄貴もそう呼んだ方がいいかも」

「純平さん、そのようにしてください。普段は陽気な方ですが、機嫌が悪くなるとちょっと面倒なので……」

「じゃあ、挨拶だけしてからまわろうか?俺たちもう食べてから話してただけだし。ね?」

「は、ははははいー」

そこで赤くなるってことは、またどこか遊びに行くんだな!

石長さんバレバレだよー。

祖父たちのところにみんなが集合したので、兄と石長さんだと紹介すると、「よろしく、うずめちゃん」と女ったらしそうな顔で握手しているその横では、自信なさげに下を向いて挨拶している石長さん。

「ん?んんん?石長?あの石長?ほーぅ、これはまた見違えるようじゃな。そちらの方が私も好きじゃ」

「うずめ様……ですが、このように浮かれているところを……」

「石長は頭が固いのじゃよ。楽しむ時は楽しむ。務めの時はちゃんと務めるで良いのじゃ!にしてもこうも変わるものなのか?翔平、何をした?」

「え?俺?俺はただ肌にいい薬と洗顔方法を教えただけで、後は石長さんが毎日頑張ったからだと思うんだけどなぁ」

「ほうほうほう!石長、ちゃんと顔を上げて前を見て進むのじゃぞ?下を向いていては見えるものも見えなくなってしまい、元のお主に戻ることもあるやもしれん」

「はい。私は……もうあのように卑屈になることはございません。この、佐野家の皆様が教えてくださいましたから」

「そうか。新しい当主はなかなか見込みがあるな。よし、みんな食べたな?ならば各々持ち場を回って、何かあればテチに報告してくれ。私は踊りきるまで降りれんのじゃ」

「分かりました。あ、大国さんは?」

「今はまだ社の中じゃ。そろそろ神輿が戻ってくるから、そのあと自由になれる」

「あ!そのあいだ踊ってないといけなかったんじゃ」

「一曲は踊りきったから平気じゃ。次の舞までの休憩と思うてくれ。ではまた後でな」

ふと消えたかと思うと、浴衣はどうした?という姿になりまた踊る準備をしていて、どこからともなく聞こえる音と共に舞が始まった。

「行きましょうか」

「あ、婆ちゃん。ゴミなら俺捨ててくるよ?」

「歩いてたら見つかるでしょう?」

「うん、ジュースだけ持っていこうかな」

「お前またコーラ?」

「そうだよ?」

「たまには違うの飲めよ」

「えー、いいじゃん。兄貴は何飲んでたんだよ」

「メロンソーダ!」

「変わんないじゃん……取り敢えず自然にいればいいみたいだから、回ってないとこ回ってきたら?」

「だな。石長さん、金魚すくい行きましょ!何匹取れるかは補償無しだけど!」

石長さんと兄が金魚釣りの方に行ったので、俺達も行こうと言ったのに、祖父母はニヤニヤとして、反対側の射的に行かされる。

「翔平、あの下の扇子狙ってちょうだい」

「何で?」

「持ってくるの忘れたから!」

「当たるのかなー?」

三回中、二回命中したのに倒れるどころかビクともしていない。

「扇子のくせにー!」

「待て!何かが掴んでるのが見えないか?」
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