八百万の学校 其の弐

浅井 ことは

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夏祭り

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祖父に言われるままに弓を出して構え、真ん中を狙うものの、少し右にずれたが何とか黒い塊のようなものは消えた。

消えたと言うよりは散らばったかのようにも見えるが……

「爺ちゃん、これ消えてないんだけど」

「仕方ない……婆さん、扇子の風で追い払ってくれ。私の竹刀では何ともならないから」

「ほほ、任せてくださいな」

祖母が扇子をひと振りすると、また集まって塊だしていた黒いものが風のお陰で少しずつ消えてはいくものの、完全には消えない。

「あら、やっぱり練習不足なのかしらねぇ」

「十分!翔平、残りは槍の部分で祓ってしまいなさい。私も近いものは片付ける」

祖父と何とかかたをつけて見えた祠の中はちゃんと祀られており、そこに三人で手を合わせてからまた道に出て神社へと向かう。

思っていたよりも人が多く、浴衣姿の人や早めに行ったであろう小さな子供連れの人がいて、花火の場所取りに河原のほうに向かっている。

「そう言えば、翔平が幼稚園くらいかしら?よくこの辺りまで花火を見に来ましたねぇ」

「肩車をしてな。純平はもう大きかったから、その頃はついてきたり来なかったりしてたが、言われてみると三人でここを歩くのも久しぶりだな」

「俺、全然覚えてないんだけど」

「そりゃあ、まだ四つか五つ位だったもの。でも、出店はこの辺になくて、最後は神社でりんご飴買わされたわよ?」

「わがままだったの?俺って……」

「いや?大人しいものだった。それに比べて純平はいつも勝手に走って行って迷子になってる子供だったが……まさか石長さんを連れて迷ってないだろうな……」

「は?もう大人じゃん。大丈夫でしょ?」

「地元だから平気でしょう?お爺さんも心配性なんですから。ほほほ」

河原から小さな橋を渡り神社に近づくと、神輿が出てきたのか人だかりが凄い。

これは手でも繋いでないとはぐれるかもしれない……と思っていたら、しっかりと祖父母は仲良く手を繋いでいる。

全く、いい歳をしても仲が良いんだから!

神社に着くまでに神輿はちらっと見えたが、毎年見ている神輿とはちょっと違うような気がして祖父母に聞くと、祭りによって違うという。

人混みを掻い潜りながら、やっと石段まで来た時には、何やら祭囃子とは違う鈴の音と笛の音がして上を向く。

「どうした翔平」

「うん、なんか上の方で音楽みたいなのが聞こえるなって思って」

「私には聞こえないけれど、話に聞いていた踊りが始まってるのかしらねぇ?」

「あ、天宇受売命が踊るんだっけ?」

見てみたいから早く行こうと急かし、階段を上ると、境内にもたくさんで店が出ていて、参拝する前にある手水のところに迦具土が立っていた。

「迦具土!」

「遅い!」

「ごめんごめん。兄貴達は?」

「何やら手を繋いで、たこ焼きと焼きそばを持ってあっちの椅子に座りに行ったが?」

「俺も買ってこよう!」

「翔平!邪魔しちゃダメよ?」

「婆ちゃんは迦具土といて。俺何か買ってくるから!」

祖父が着いてきたので、一緒にたこ焼きと焼きそばにフランクフルトなどを買って戻ると、ちゃっかりと兄貴達と反対側に座って待っていたので机の上に置いて、みんなで食べる。
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