八百万の学校 其の弐

浅井 ことは

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夏祭り

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何やら濁しながら話す大国さんと八意さんに、文句をまだ言っている迦具土。

天宇受売命と何かあったのだろうか?

すっごく気になるのに聞けないので、兄をちらっと見ると、兄も分からないと言った顔をしていたので、聞いてよと視線を送るものの、首を横に振るので話は明日という事なのだろう。

「さてと。俺たちは帰るが、今日はゆっくりと休め。特に祖母殿?いくら小さい妖と言っても悪いやつは何をするかわからん。あまり近寄らんほうがいい」

「そうします。でも、どう見分けたら良いのか……小さいのはよってきた時に可愛いのもいるから、つい手に乗せちゃうんですよ」


乗せるな!


そんな心配も虚しく、肩を落とすのは祖父と大国さん。

八意さんは、無意識に分かっているのだろうと言って帰ってしまった。

「じゃあ、明日はよろしく頼む」

そう言って大国さんも帰り、残ったのは家族のみ。

明日も早いから寝ようと言われ、布団を敷いたものの、兄が暑い!と扇風機を占拠したので、諦めてベッドにゴロンと寝転ぶと、体は疲れているのかまたもや朝までぐっすりと眠ってしまった。

おはようと起きていくと、兄がご飯を食べており、石長さんが10時に来るという。

「祭りは……あ、昼にはもう屋台出るんだっけ」

「昼は町内の人とかで子連れが多いだろ?夜は学生やカップルも増えるし、花火見たい人とかも来るんじゃないか?」

「昼は暑そうだよね。なのに浴衣着てくの?」

「いや?石長さんが来たら、俺と石長さんで町内の見回りに行くんだって。一度帰ってきてから着替えていくけど、翔平も来るか?」

「俺はいいよ」

「そうよ?お勤めがあると言っても翔平は宿題があるんだから」

「婆ちゃん、俺たち三年は宿題無しなんだけど」

「あら、そうなの?だったら、行けばいいのに」

朝ごはんを用意してくれたので食べながら、迦具土は?と聞くと、道場にいるというので祖父と一緒だろう。

「結局何時に行くの?」

「五時に神輿が周り出して、二時間くらいで戻るから、夜の七時には境内って迦具土が嫌そうな顔して言ってた。俺達が回るのがその時間かららしいから、四時に家でたらいいんじゃないか?」

「車で行こうよー」

「ダメ。駐車場までの道神輿が通るから封鎖って回覧板来てたから」

「マジか!婆ちゃんやっぱり俺服で行くよ」

「折角直したのに。迦具土君も着るのよ?だから翔平も着てちょうだい」

言い出すと、絶対逆らえないのはわかっていたのでガクッと肩を落として「わかった」と返事をし、豆腐とわかめのお吸い物を最後に飲んで、「道場行ってくる」と、食器をつけてから向かう。

バチッと静電気に触れた感覚がして、頭とか顔とかチクチクすると言いながら入ると、「おーまーえー!折角貼った結界壊す気か!」と怒られ、奥では祖父が本を見ながらあちこちに何かを置いて回っていた。

「ごめん!知らなかったから!」

「ちょっと奥で待ってろ。ここ直しておかないと……」

奥の畳部分に座りながら、二人が来るのを待っている間に、広げられた地図を見る。

町内周りに円が書いてあり、中心は大国さんの神社となっている。

町内の見回りどころか、ほかも見て回らないといけないんじゃないか?

祖母と兄も道場に入ってきて、迦具土になんの結界かと聞くと、家が留守になる間だけでも変なものが入らないようにと外側の道場から結界を張っているという。

「そんな事しなくても平気じゃない?」

そう言うと、帰ってくるのが遅くなることと、もし帰れなかった時のため。

それと、神である自分の気に寄せられてくるものがいないとも限らないという。

一体なんの祭りになってるんだ!?

「でだ。俺は一旦神社に行ってから合流することになったんだが、爺さんと婆さんと翔平は離れるなよ?」

「うん。兄貴は石長さんがいるから大丈夫だよね?」

「そうだけど、男としては守ってあげないと行けないよな」

いやいや、石長さんは神様だし……

「取り敢えず、全員が出たら結界が張られる。忘れ物するなよ?」

「分かった。でもさ、この地図だと結構回らないといけないんじゃない?」

「ああ、強そうなのは俺が排除しながら行くから、雑魚は頼む。後、神社の井戸には近ずくなよ?」

「井戸なんてあったっけ?」
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