八百万の学校 其の弐

浅井 ことは

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小学校につくまでは特に何も無く、兄がナイフのようなものの伸び縮みをさせながら倒していくのには、もう何も言うまいと黙って後ろを歩いていくと、小学校の裏門に出た。

裏門と言っても正門よりは小さいが、開ければワゴン車一台は通れるくらいには大きい。

「俺は先に池のほうを見てくる」

迦具土がそう言って離れたので、校庭の方にまわろうと歩いて進んでいくと、校舎の中からガラスにへばりついてこちらを見てくるモノや、走っているのかかなりのスピードで追い抜かしていくモノ。

色んなモノを見たが、それらからは今までと違って悪い感じはしなかった。

その事を聞くと、全部が悪さをするものでは無いと言われ、特に話の出来るものが一番怖いとも教えられた。

「自分が気持ち悪いと思ったのやっつけて、本当は良い奴でしたとかないのかな?」

「気分の悪くなるのをやっつければいいんだろ?」

「そうみたいだけど、間違えたら嫌じゃん」

「お前、ホントに真面目だなぁ」

「純平、翔平、下がりなさい」

「どうしたの?爺ちゃん」

祖父の見ている先には青白い人の大きさの倍はするであろう人魂の形をした物が。

でも、人魂って小さいものなんじゃ……

「爺ちゃんは力は使うなって言われただろ?俺と翔平で何とかできないのか?」

「そうだが……お前達、あれが何に見える?」

そう聞かれたので、「でかい人魂!」と言うと、兄には違う見え方がしているようで、「宮司さん!」などと言っている。

「お前達、二人で一人分だな。どっちも正解だ。青白い……まぁ、翔平の言う人魂の中に宮司姿の物の怪が居る。まだこちらの様子を見ているだけだが、もしかしたら、迦具土君の言っていた物の怪かもしれん」

「でも、先に行ったのに何で?」

迦具土は強いと思う。

何度か練習の時に助けてもらっていたが、指一本向ければそこから火の玉が飛び出し、あっという間に倒してくれる。

接近戦も見たが、かなりの速さで動き、蹴り一発で消してしまったりするので、格というものが違うのだろうと思っていたのだが……

そんなに目の前のやつが強いとしたら、迦具土が心配だ!

「そいつがいるってことは、迦具土は負けたってことか?」


兄貴!

仮にも神だぞ?

呼び捨てすんな!

と思いつつも、自分も迦具土と呼んでいるとこの状況で気付く俺。

耐性がついてきたのか分からないが、怖いものは怖い!

「翔平、お前の武具は弓だ。遠距離で攻撃出来る。雑魚どもは鈴でなんとかなるだろうから、あっちが動いてくるまでは出すな。力の無駄遣いになる。
純平は下がりながら、校庭の迦具土君を見てきてくれ」

「爺ちゃんは?」

「翔平の補佐に入る。これでも十七代目当主補佐だし、前当主でもあるからな。お前が連れてきてくれるまでは持つだろう」

「無茶すんなよ!」

それだけ言って、少しずつ後ろに下がっていき、曲がり角で走り出すのが見えたので、祖父と二人で相手を見る。

近づいて……来てるのか?

微妙にこちらに進んできているようにも見えるが、あまりにもゆっくりなので良く分からない。
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