八百万の学校 其の弐

浅井 ことは

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次の日から兄の帰ってくるまでの三日間、祖父と迦具土に しごきまくられ、「ちくしょー」と言いながらちょっと大きめの影のような物に鈴を向けると、ぼやっとした緑色の光が形を形成していく。

「おお!」

「何で竹刀じゃないんだよっ!」

「知るか!」

とにかく撃てばいいんだと勝手に出てきた矢を放ち、消滅させた時点で膝をついてしまった。

かなりキツい……

「そう言えば、うちの道場で一時弓道も教えてたが、翔平は遊び道具みたいに触ってたことがあったな」

「それいつの話だよ……覚えてるの小学校の時に、おじさん先生が基礎を教えてくれただけだよ?なんで弓?しかも矢が勝手に出てきたし」

「お前の武器は弓ってことだな。遠距離も力をつけたら行けるだろうし、弓の先に矛のようなものも付いていたから、中距離型という所か?」

「いや、あれは翔平の気をかなり吸い取ってる。扱いになれないと、こいつがへばって襲われることもある」

「なるほど……」

「なるほどじゃないってば!お祭りもうすぐだよ?兄貴帰ってくるの明日だし、明日の夜は兄貴にも鈴の使い方教えるんでしょ?
それに、婆ちゃんはどうなってるの?」

「それなら、庭にいた小さいものは鈴で祓って、ほほほとか言ってたから大丈夫だろう。婆さんは器用だから」

「俺も器用になりたい!」

「三日で武具が出たんだからいいだろ?それより、祭りは二日後だぞ?」

「もー!たこ焼きとか買い食いしてればいいと思ってたのに」

文句を言いつつも一日で慣れろと訳の分からないことを言われ、帰ってからは泥のように眠り、学校へといきさらに眠る。

周りからは、ついに成長期か?と言われたが、言い返す元気もなく、今日の放課後の三者面談で、寝てばかりいますとか言われたらどうしよと言う不安しか残らない。

ホームルームのあとすぐの面談だったので、進路指導室まで行くと、兄と祖父が椅子に座って待っていた。

「兄貴、今日泊まってくの?」

「ああ、まとめて休みもらえたから、日曜に帰る。石長さんも祭りに行きたいって言ってたから誘ったんだけど、婆ちゃんに華習ってるらしくて、浴衣着つけてもらうとか言ってたぞ」

いつの間に……

「あのさ、連絡って何でとってんの?」

「前にスマホ買いに行ったからLINEでやり取りしてるけど?」

神様がLINE……いいのか?日本の神様!

先生に呼ばれて入ると、最近寝ていることが多いとやはり言われてしまい、成績や希望校の事はそんなに心配しなくてもいいとの事だったが、家に帰ってすぐに、兄と祖父のお説教。

「もー、足が!」

「ほほほ。居眠りしてるからでしょう?明日は学校は午前で終わりよね?」

「うん。なんで今日じゃないのか不思議だけど、前に大雨で休校になったのがどうのこうの言ってた。全校集会とホームルームだけで帰ってくるよ」

「なら、翔平も浴衣着る?」

「俺持ってないよ?」

「純平のを直したのよ。純平は石長さんと行くからって新調したんですって。ほほほ」

若いっていいわねーぇ。

そんなことを言いながら直した浴衣を羽織ってみろと言われて羽織り、明日までに出来上がると言われて、ご飯を食べてから迦具土を含めて四人で出かける。

男だらけって、むさくるしい……しかも祖父と兄は背が高い!

そして男前!

かく言う俺は童顔で背は173cmあるものの、チビにしか見えない。

隣を歩く迦具土は俺より高いだろうが、顔は整っていて、パッチリ二重なのに少し切れ長の目がいやらしい……
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