2 / 103
平穏な日々
.
しおりを挟む
学校が始まり、三年生になって三ヶ月。
あれ以来ずっと大国主命の大国さんは現れてはいないが、近くの大国さんの神社には家族で月に一度お参りに行っている。
前まではいたずら好きな大国さんは、小学校低学年位の格好を好んでしていて、時に園児、巫女さんなどコスプレをするほど困らせてくれていたが、今では姿さえ見ていない。
「大国さん、何してるのかなぁ?」
夕飯時にそう言うと、祖母が「石長さんはたまに来るのにねぇ?」と意味深なことを言ってくる。
「俺、会ってないよ?」
「お華の稽古に来てるのよ」
「へぇ。だから会わない……あれ?この前は兄貴にテーマパーク行くとか聞いたけど」
「お前嫌われてるとか?」
「迦具土ー!」
「そのうち連絡してくださるだろう。このような事はたまにあるから」
「そうなの?」
「たまにだが……私の先代はどうだったか……渡してある日記の中に書いてあるかもしれんぞ?」
後で読んでみるといい、ご馳走様と食器を下げ風呂に入る。
もう七月になるのに……そう考えながら湯船に浸かっていると、壁から手が……
こっちこっちと手招きしいるのを見るとなにかのホラー映画のように気味悪いが、この三ヶ月で良く得体のわからないものに遭遇するようになったので、少しは耐性がついているはず……
でも、気持ち悪いものは気持ち悪い。
「あ、あの……」
ぬっと、顔が出てきて、「俺だ俺!!!」と大国さんが顔を出してくる。
「お前の気を探ったらここに出てしまったんだが、風呂か……」
「風呂かじゃないですって。手だけ出てくるとか怖いんですけど」
「すまんな。お前と迦具土、後祖父母殿と兄にこれを渡しておいてくれないか?」
そう言って渡されたのは小さなお守り。
それともう一つは鈴の形をしたキーホルダー。
「その鈴は普段は鳴らん。妖あやかしが最近多いと思うんだが、その時に反応する。
祖父母殿と兄の方は俺達が見えて、神気に当てられ無いようにしてるだけで力はない。
源三郎には元々力はあるが歳だ。
その鈴を振れば、多少の妖は逃げるから持ってろ」
なにか急いでいるのかそれだけ言って壁の中に消えてしまった……
風呂場で渡されてもなぁ……
相変わらずなんだから。
そう言いながらも元気そうでよかったと頬が緩む。
風呂から出て、中での出来事を話して鈴とお守りを祖父母と迦具土に渡す。
兄は来週の学期末面談の時に来てくれると言うから、その時に渡せばいいだろう。
「あれ?石長さんの分はないのかな?」
「アホか。あいつは神だぞ?」
「そう言う迦具土だって神様じゃん」
「まあ、そうなんだが。人の振りをしてるぶん力は人前で使えないからな……」
「それもそうか」
「それにしても、いきなり出てきてこれ渡されて。何かあるのかな?」
「俺も聞いてないからわからんが、それを持ってろってことは、祭りが近いからかもな」
「何か関係あるの?」
「翔平、前に祭りの時の話をしただろう?お前が小さい時に変なものが見えていたこととか」
「あ……」
「祭りではその土地が活性化するんだ。それで、普段大人しいもの達も出てくるようになる。確か大国様の神社が祭りだったな」
「え?そうだったの?俺行きたい!」
「行くのはいいが、日にちがわからんことにはなぁ」
あれ以来ずっと大国主命の大国さんは現れてはいないが、近くの大国さんの神社には家族で月に一度お参りに行っている。
前まではいたずら好きな大国さんは、小学校低学年位の格好を好んでしていて、時に園児、巫女さんなどコスプレをするほど困らせてくれていたが、今では姿さえ見ていない。
「大国さん、何してるのかなぁ?」
夕飯時にそう言うと、祖母が「石長さんはたまに来るのにねぇ?」と意味深なことを言ってくる。
「俺、会ってないよ?」
「お華の稽古に来てるのよ」
「へぇ。だから会わない……あれ?この前は兄貴にテーマパーク行くとか聞いたけど」
「お前嫌われてるとか?」
「迦具土ー!」
「そのうち連絡してくださるだろう。このような事はたまにあるから」
「そうなの?」
「たまにだが……私の先代はどうだったか……渡してある日記の中に書いてあるかもしれんぞ?」
後で読んでみるといい、ご馳走様と食器を下げ風呂に入る。
もう七月になるのに……そう考えながら湯船に浸かっていると、壁から手が……
こっちこっちと手招きしいるのを見るとなにかのホラー映画のように気味悪いが、この三ヶ月で良く得体のわからないものに遭遇するようになったので、少しは耐性がついているはず……
でも、気持ち悪いものは気持ち悪い。
「あ、あの……」
ぬっと、顔が出てきて、「俺だ俺!!!」と大国さんが顔を出してくる。
「お前の気を探ったらここに出てしまったんだが、風呂か……」
「風呂かじゃないですって。手だけ出てくるとか怖いんですけど」
「すまんな。お前と迦具土、後祖父母殿と兄にこれを渡しておいてくれないか?」
そう言って渡されたのは小さなお守り。
それともう一つは鈴の形をしたキーホルダー。
「その鈴は普段は鳴らん。妖あやかしが最近多いと思うんだが、その時に反応する。
祖父母殿と兄の方は俺達が見えて、神気に当てられ無いようにしてるだけで力はない。
源三郎には元々力はあるが歳だ。
その鈴を振れば、多少の妖は逃げるから持ってろ」
なにか急いでいるのかそれだけ言って壁の中に消えてしまった……
風呂場で渡されてもなぁ……
相変わらずなんだから。
そう言いながらも元気そうでよかったと頬が緩む。
風呂から出て、中での出来事を話して鈴とお守りを祖父母と迦具土に渡す。
兄は来週の学期末面談の時に来てくれると言うから、その時に渡せばいいだろう。
「あれ?石長さんの分はないのかな?」
「アホか。あいつは神だぞ?」
「そう言う迦具土だって神様じゃん」
「まあ、そうなんだが。人の振りをしてるぶん力は人前で使えないからな……」
「それもそうか」
「それにしても、いきなり出てきてこれ渡されて。何かあるのかな?」
「俺も聞いてないからわからんが、それを持ってろってことは、祭りが近いからかもな」
「何か関係あるの?」
「翔平、前に祭りの時の話をしただろう?お前が小さい時に変なものが見えていたこととか」
「あ……」
「祭りではその土地が活性化するんだ。それで、普段大人しいもの達も出てくるようになる。確か大国様の神社が祭りだったな」
「え?そうだったの?俺行きたい!」
「行くのはいいが、日にちがわからんことにはなぁ」
0
お気に入りに追加
94
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
世界的名探偵 青井七瀬と大福係!~幽霊事件、ありえません!~
ミラ
キャラ文芸
派遣OL3年目の心葉は、ブラックな職場で薄給の中、妹に仕送りをして借金生活に追われていた。そんな時、趣味でやっていた大福販売サイトが大炎上。
「幽霊に呪われた大福事件」に発展してしまう。困惑する心葉のもとに「その幽霊事件、私に解かせてください」と常連の青井から連絡が入る。
世界的名探偵だという青井は事件を華麗に解決してみせ、なんと超絶好待遇の「大福係」への就職を心葉に打診?!青井専属の大福係として、心葉の1ヶ月間の試用期間が始まった!
次々に起こる幽霊事件の中、心葉が秘密にする「霊視の力」×青井の「推理力」で
幽霊事件の真相に隠れた、幽霊の想いを紐解いていく──!
「この世に、幽霊事件なんてありえません」
幽霊事件を絶対に許さない超偏屈探偵・青木と、幽霊が視える大福係の
ゆるバディ×ほっこり幽霊ライトミステリー!
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

元魔法少女の後日談は珈琲が飲めるようになってから。
キリ
キャラ文芸
雨谷しぐれが魔法少女の頃はどんなところにでも手が届いた。手の届く範囲内にだけは手を差し伸べたがるしぐれにとって魔法少女は居心地の良いものだった。しかし永遠に魔法が使えなくなる総魔力切れを起こしてしまい、魔法少女を引退する。いきなり手の届く範囲が激減し自分の力のなさを痛感する。
そんなしぐれは同級生の伏名みとまに染髪に連れ出したり、少しずつ普通の生活に慣れようとする。そんな時に一人の怪しげなドレスの女に出会い……
魔法少女を引退してもなお大きくなる正義感にしぐれは振り回されてばかり……。そんな自分にしぐれは納得出来なかった。だから、魔法少女を引退した彼女が選んだのは魔女になることだった。
少年神官系勇者―異世界から帰還する―
mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる?
別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨
この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行)
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。
この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。
この作品は「pixiv」にも掲載しています。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる