八百万の学校 其の弐

浅井 ことは

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平穏な日々

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学校が始まり、三年生になって三ヶ月。

あれ以来ずっと大国主命 おおくにぬしのみことの大国さんは現れてはいないが、近くの大国さんの神社には家族で月に一度お参りに行っている。

前まではいたずら好きな大国さんは、小学校低学年位の格好を好んでしていて、時に園児、巫女さんなどコスプレをするほど困らせてくれていたが、今では姿さえ見ていない。

「大国さん、何してるのかなぁ?」

夕飯時にそう言うと、祖母が「石長さんはたまに来るのにねぇ?」と意味深なことを言ってくる。

「俺、会ってないよ?」

「お華の稽古に来てるのよ」

「へぇ。だから会わない……あれ?この前は兄貴にテーマパーク行くとか聞いたけど」

「お前嫌われてるとか?」

「迦具土ー!」

「そのうち連絡してくださるだろう。このような事はたまにあるから」

「そうなの?」

「たまにだが……私の先代はどうだったか……渡してある日記の中に書いてあるかもしれんぞ?」

後で読んでみるといい、ご馳走様と食器を下げ風呂に入る。

もう七月になるのに……そう考えながら湯船に浸かっていると、壁から手が……

こっちこっちと手招きしいるのを見るとなにかのホラー映画のように気味悪いが、この三ヶ月で良く得体のわからないものに遭遇するようになったので、少しは耐性がついているはず……

でも、気持ち悪いものは気持ち悪い。

「あ、あの……」

ぬっと、顔が出てきて、「俺だ俺!!!」と大国さんが顔を出してくる。

「お前の気を探ったらここに出てしまったんだが、風呂か……」

「風呂かじゃないですって。手だけ出てくるとか怖いんですけど」

「すまんな。お前と迦具土、後祖父母殿と兄にこれを渡しておいてくれないか?」

そう言って渡されたのは小さなお守り。
それともう一つは鈴の形をしたキーホルダー。

「その鈴は普段は鳴らん。妖あやかしが最近多いと思うんだが、その時に反応する。
祖父母殿と兄の方は俺達が見えて、神気に当てられ無いようにしてるだけで力はない。
源三郎には元々力はあるが歳だ。
その鈴を振れば、多少の妖は逃げるから持ってろ」

なにか急いでいるのかそれだけ言って壁の中に消えてしまった……

風呂場で渡されてもなぁ……

相変わらずなんだから。

そう言いながらも元気そうでよかったと頬が緩む。

風呂から出て、中での出来事を話して鈴とお守りを祖父母と迦具土に渡す。

兄は来週の学期末面談の時に来てくれると言うから、その時に渡せばいいだろう。

「あれ?石長さんの分はないのかな?」

「アホか。あいつは神だぞ?」

「そう言う迦具土だって神様じゃん」

「まあ、そうなんだが。人の振りをしてるぶん力は人前で使えないからな……」

「それもそうか」

「それにしても、いきなり出てきてこれ渡されて。何かあるのかな?」

「俺も聞いてないからわからんが、それを持ってろってことは、祭りが近いからかもな」

「何か関係あるの?」

「翔平、前に祭りの時の話をしただろう?お前が小さい時に変なものが見えていたこととか」

「あ……」

「祭りではその土地が活性化するんだ。それで、普段大人しいもの達も出てくるようになる。確か大国様の神社が祭りだったな」

「え?そうだったの?俺行きたい!」

「行くのはいいが、日にちがわからんことにはなぁ」
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