八百万の学校 其の参

浅井 ことは

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石長比売の家出

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「やはり滑るから靴も考えればよかった」

まさかそんなに滑るとは思わず、ショートブーツできてしまったが、気をつけて進めば全部見て回れるだろうと急な階段を上る。

「狭いし急だし……腰に……」

ただの山ならば歩き慣れているが、鍾乳洞とは冷えるし上からの水滴が落ちてくるし、所々天井が低く屈んで歩いたり、狭いところではお腹を引っ込めたり。

「やっと真ん中……この先は……」

出口と書いてある前にはさらに長い急な階段。

「せっかく来たのだし」と階段を上る。

「今度はジーンズというのを購入してみよう」

急な階段を登りきると、壁に映し出された絵があり、それを一通りみながら休憩をして振り向くと、今度は急階段に変わりは無いが降りなくてはならない。

気をつけておりたところには『しんどい坂』と書いてあり、小さな照明が着いている。

「あ、そういう事か」

登ったと思ったら降りて、今度はまた登る。

「本当にしんどい……」

登りきったところから、最初見た滝とは違い、勢いよく流れ落ちてくる滝。

色はコバルトブルーに照らし出され、グリーンに変わったりとかなり幻想的で美しい。

「癒される……」

朝早く誰もいないので、のんびりと水の音を聞きながら周りの小さな鍾乳石に触れる。

まだ小さな赤ちゃんのようで、これから何年もかけて大きくなるだろう石がまた可愛く、先に進むのに振り向いておでこをぶつける。

「いったぁ!低くなるならば案内板を……ん?」

何かいるな?と思ったら小さな妖精。

「そなたは……」

「ご、ごめんなさい」

「いや、構わぬ。この洞窟のものでは無いな?」

「山から使いに。帰り道が分からなくなってしまい……。あの、神ですよね?」

「あー、まぁ。外まで一緒に行くゆえ、内緒にしておいてくれぬか?」

「本当ですか?感謝いたします」

服装は違うが、どこの社の子だろう?と肩に乗せて先へと進む。

今からまたあの階段を昇り降りして中間地点に戻ることも出来ないし。





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