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石長比売の家出

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「純平さん、今日から父とみなさんで暮らすのですよね?」

『そう。いつもの木から会社に行けるようにしてもらったから、今は家に行く途中』

「父は酒が好きなのです。晩酌程度で済めばいいのですが、飲みすぎると騒がしく、眠ってしまうまで飲んでしまうので……」

『気をつけるね。爺ちゃんも付き合って飲まないように見張らなきゃ』

「私は……本来ならばそこに居なければならなかったと思います。でも、逃げたのです」

『あれは売り言葉に買い言葉というか、咄嗟に出たんだろ?』

「そうです。でも嫌になってしまったのです……また父の言う通りにさせられるのかと思ってしまって」

『酒飲んだら愚痴言いそうだよね大山さん。面白そうだから聞いておくよ』

「純平さん、ありがとう」

『気にしないで。ゆっくり休むんだよ』

「はい」

電話を切ってつくづく思う。

電話でなら純平にも素直に話が出来る。
会うと緊張して上手く話せなくなる。

時間はかかるだろうが顔を見てこんなふうに話せる時が来るのだろうか。

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