101 / 103
秋・冬の場
.
しおりを挟む
夜は熱が出たが、朝には微熱に変わり朝食も人間界から持ち込んでいるお米で、卵の雑炊だった。
ブランも1晩中付いていてくれていたようで、今は窓の近くの陽のあたる場所にうまく座り、丸まって寝ている。体が茶色いので、大きなおはぎみたいだなと思いながら、近くにより頭を撫でる。
クキョッ?
頭だけこちらに向け、大きな目を細めて嬉しそうに笑う姿は癒される。
「奏太様……寝ていて下さい。今、あちらと陛下の方と連絡が取れました。陛下は挨拶はいいから帰ってゆっくりするようにと……」
「でも、札も返さないといけないし、あの女の子のことも気になる。それにブラン……連れていける?」
「陛下からお許しをいただきました。普段連れ歩く際はアヒルに変化できるよう、王宮薬師から薬を頂いてきましたし、あちらの屋敷でも庭が広いので普段の姿のまま過ごせます。姫様にも許可をいただきました」
クキョッ?
「一緒に行けるって!良かったな」
「うん。ありがとう」
「それと、女の子なのですが……御両親のご遺体が……猟師によって発見されました」
「え?」
「ですが、宿屋のご夫婦にお子様がいらっしゃらなかったこともあり、そちらも陛下のお許しを頂いて、引き取っていただけることに」
「良かった……あの主人、優しそうだったからきっと大丈夫だね」
「はい。それとこちらを」
渡されたのは人間界の服。キャリーバッグに半袖から長袖、下着に至るまで揃っている。
「いいの?」
「どの服がいいのかわかりませんでしたので、見繕っていたらこのような量に……もう、隠す必要はございませんので、着て歩いてもらっても構いません」
「どういう事?」
「外を見ますか?」
「うん」
部屋から出てベランダへと行く。少し高台にあるので街が一望できるが、屋敷の門の前まで人だかりが出来ていて、奏太様ーと声がする。
「何これ……俺なにかしたっけ?」
「陛下がお触れを出したのです。天魔界とも連絡を取っていて、奏太様を隠す必要は無いと」
「でも昨日の今日でって……あ、魔法?」
「はい。王宮には陛下のお触れなどを出す専門の者がいますので、四つの都市とでも言いましょうか……春・夏・秋・冬の主要の街にお触れを。ですので、あと二・三日もすれば街から町へそして村へ広まるでしょう」
「顔は?」
「今はこの街のものくらいでしょうか?」
「あ、あの女の子!ほら、あそこに……」
まだ寝てないとと言われたが、ガウンを羽織り門まで行く。
「君……」
「お兄ちゃん!」
すいません、通してくださいと言うと、すぐに道が開け、女の子の前に立つ。
女の子の横には宿屋の主人と綺麗な女性が立っていた。
「その、御両親のこと聞いたよ」
「うん、でもおじさん……パパになってくれるって。ママも……あの……」と下を向いている。
「ありがとうございました」と宿の主人に頭を下げる。
ブランも1晩中付いていてくれていたようで、今は窓の近くの陽のあたる場所にうまく座り、丸まって寝ている。体が茶色いので、大きなおはぎみたいだなと思いながら、近くにより頭を撫でる。
クキョッ?
頭だけこちらに向け、大きな目を細めて嬉しそうに笑う姿は癒される。
「奏太様……寝ていて下さい。今、あちらと陛下の方と連絡が取れました。陛下は挨拶はいいから帰ってゆっくりするようにと……」
「でも、札も返さないといけないし、あの女の子のことも気になる。それにブラン……連れていける?」
「陛下からお許しをいただきました。普段連れ歩く際はアヒルに変化できるよう、王宮薬師から薬を頂いてきましたし、あちらの屋敷でも庭が広いので普段の姿のまま過ごせます。姫様にも許可をいただきました」
クキョッ?
「一緒に行けるって!良かったな」
「うん。ありがとう」
「それと、女の子なのですが……御両親のご遺体が……猟師によって発見されました」
「え?」
「ですが、宿屋のご夫婦にお子様がいらっしゃらなかったこともあり、そちらも陛下のお許しを頂いて、引き取っていただけることに」
「良かった……あの主人、優しそうだったからきっと大丈夫だね」
「はい。それとこちらを」
渡されたのは人間界の服。キャリーバッグに半袖から長袖、下着に至るまで揃っている。
「いいの?」
「どの服がいいのかわかりませんでしたので、見繕っていたらこのような量に……もう、隠す必要はございませんので、着て歩いてもらっても構いません」
「どういう事?」
「外を見ますか?」
「うん」
部屋から出てベランダへと行く。少し高台にあるので街が一望できるが、屋敷の門の前まで人だかりが出来ていて、奏太様ーと声がする。
「何これ……俺なにかしたっけ?」
「陛下がお触れを出したのです。天魔界とも連絡を取っていて、奏太様を隠す必要は無いと」
「でも昨日の今日でって……あ、魔法?」
「はい。王宮には陛下のお触れなどを出す専門の者がいますので、四つの都市とでも言いましょうか……春・夏・秋・冬の主要の街にお触れを。ですので、あと二・三日もすれば街から町へそして村へ広まるでしょう」
「顔は?」
「今はこの街のものくらいでしょうか?」
「あ、あの女の子!ほら、あそこに……」
まだ寝てないとと言われたが、ガウンを羽織り門まで行く。
「君……」
「お兄ちゃん!」
すいません、通してくださいと言うと、すぐに道が開け、女の子の前に立つ。
女の子の横には宿屋の主人と綺麗な女性が立っていた。
「その、御両親のこと聞いたよ」
「うん、でもおじさん……パパになってくれるって。ママも……あの……」と下を向いている。
「ありがとうございました」と宿の主人に頭を下げる。
0
お気に入りに追加
30
あなたにおすすめの小説
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?
碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。
まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。
様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。
第二王子?いりませんわ。
第一王子?もっといりませんわ。
第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は?
彼女の存在意義とは?
別サイト様にも掲載しております
下宿屋 東風荘 4
浅井 ことは
キャラ文芸
下宿屋 東風荘4
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:..
大きくなった下宿に総勢20人の高校生と大学生が入ることになり、それを手伝いながら夜間の学校に通うようになった雪翔。
天狐の義父に社狐の継母、叔父の社狐の那智に祖父母の溺愛を受け、どんどん甘やかされていくがついに反抗期____!?
ほのぼの美味しいファンタジー。
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:..
表紙・挿絵:深月くるみ様
イラストの無断転用は固くお断りさせて頂いております。
☆マークの話は挿絵入りです。
なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが
マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって?
まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ?
※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。
※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
白い結婚三年目。つまり離縁できるまで、あと七日ですわ旦那様。
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
異世界に転生したフランカは公爵夫人として暮らしてきたが、前世から叶えたい夢があった。パティシエールになる。その夢を叶えようと夫である王国財務総括大臣ドミニクに相談するも答えはノー。夫婦らしい交流も、信頼もない中、三年の月日が近づき──フランカは賭に出る。白い結婚三年目で離縁できる条件を満たしていると迫り、夢を叶えられないのなら離縁すると宣言。そこから公爵家一同でフランカに考え直すように動き、ドミニクと話し合いの機会を得るのだがこの夫、山のように隠し事はあった。
無言で睨む夫だが、心の中は──。
【詰んだああああああああああ! もうチェックメイトじゃないか!? 情状酌量の余地はないと!? ああ、どうにかして侍女の準備を阻まなければ! いやそれでは根本的な解決にならない! だいたいなぜ後妻? そんな者はいないのに……。ど、どどどどどうしよう。いなくなるって聞いただけで悲しい。死にたい……うう】
4万文字ぐらいの中編になります。
※小説なろう、エブリスタに記載してます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる