69 / 103
旅
.
しおりを挟む
「お、俺も手伝う……本当は見たくないし、可愛そうだけど」
「では、尾の方を綺麗に剥いでください」
教えてもらいながら、小さめのナイフでお尻から切れ目を入れ 左右に引っ張りながら毛皮を剥いでいく。何故城を出てすぐにこんな狩りをしなければいけないのか、生き物を殺さなくてはいけないのか……色々考えていると涙が出てきた。
「……最初はみんな同じなんです。私も普通に暮らしていたので気づかなかったことも多かったのですが、旅が終わる頃には理解もできていました。奏太様なら大丈夫です」
「に……肉も切るんだろ?」
「気持ち悪いかも知れませんが、まずは見て覚えてください。その前に毛皮を干しておきましょうか……」と荷台の上の日避け布の上に重しを置いて乾かすように干す。
「次の街まで近く見えますが、明日の朝にしか着かないので、今夜の夕食は幻虎ですね」
「うん」
最初に穴を掘り、解体していきながらいらない部位を穴に捨てながら一塊ずつに切り分けていく。それを布で包み、一部は綺麗にスライスして細い紐に通していく。
紐を通した肉は塩を振ってなじませ、馬車の邪魔にならない影の部分に吊り下げ、乾かす。
「これだけで大分と時間が掛かってしまいました。初めての解体であればもっと時間がかかりますし、幻獣などが出るところでの解体はおすすめできません。川があればそこでした方がいいです。手を洗うにも水は欠かせませんし、貴重ですので、川があればこの樽に常に補充するようにしてください」
「分かった。後は穴を埋めたら終わり?」
「はい。ここの様な何も無い草原ではこのやり方が一般的です。おわかりだと思いますが、野菜を作っている農民もいれば、狩りをして肉を捌き売る者がいて我々は買い物をし、食事を得ることが出来る。人間界と同じです」
「確かに。昔ばあちゃんに、食べ物は粗末にするな、感謝して食えって教えられたよ……」
「生き物を殺し食すのですから、余計に今回は感じるところもあると思います」
「ノアは最初平気だった?」
「実は……出来ずに逃げました」
「逃げた?」
「恥ずかしい話ですが、殺せなかったのです。魔法もほとんど使えずに、火さえも起こせず、水で我慢していたのですが、空腹に耐えられずにやっと。解体も初めてしたので滅茶苦茶で、泣きながら食べたのは忘れられません」
「俺も殺すのは……弓で鳥とか撃つなら……練習しないといけないけど」
「そうですね、まだ最初の街にも着いていません。今夜は野営になりますし、一通りのことは教えられるかと思います。街についたら通貨の説明と、買い物の仕方をお教えしますので」
「うん……」
行きましょうとノアが御者台に乗ったのを見て、自分も横に乗る。
精神を鍛える旅と聞いたが、精神が壊れそうだ。動物を狩って食べ、売れる部分は取って置いて売る。人間界では機械がするのだろうが、こちらでは人の手でしなければいけない。それだけで全然違うと城から出た瞬間に思わされた一面だった。
「では、尾の方を綺麗に剥いでください」
教えてもらいながら、小さめのナイフでお尻から切れ目を入れ 左右に引っ張りながら毛皮を剥いでいく。何故城を出てすぐにこんな狩りをしなければいけないのか、生き物を殺さなくてはいけないのか……色々考えていると涙が出てきた。
「……最初はみんな同じなんです。私も普通に暮らしていたので気づかなかったことも多かったのですが、旅が終わる頃には理解もできていました。奏太様なら大丈夫です」
「に……肉も切るんだろ?」
「気持ち悪いかも知れませんが、まずは見て覚えてください。その前に毛皮を干しておきましょうか……」と荷台の上の日避け布の上に重しを置いて乾かすように干す。
「次の街まで近く見えますが、明日の朝にしか着かないので、今夜の夕食は幻虎ですね」
「うん」
最初に穴を掘り、解体していきながらいらない部位を穴に捨てながら一塊ずつに切り分けていく。それを布で包み、一部は綺麗にスライスして細い紐に通していく。
紐を通した肉は塩を振ってなじませ、馬車の邪魔にならない影の部分に吊り下げ、乾かす。
「これだけで大分と時間が掛かってしまいました。初めての解体であればもっと時間がかかりますし、幻獣などが出るところでの解体はおすすめできません。川があればそこでした方がいいです。手を洗うにも水は欠かせませんし、貴重ですので、川があればこの樽に常に補充するようにしてください」
「分かった。後は穴を埋めたら終わり?」
「はい。ここの様な何も無い草原ではこのやり方が一般的です。おわかりだと思いますが、野菜を作っている農民もいれば、狩りをして肉を捌き売る者がいて我々は買い物をし、食事を得ることが出来る。人間界と同じです」
「確かに。昔ばあちゃんに、食べ物は粗末にするな、感謝して食えって教えられたよ……」
「生き物を殺し食すのですから、余計に今回は感じるところもあると思います」
「ノアは最初平気だった?」
「実は……出来ずに逃げました」
「逃げた?」
「恥ずかしい話ですが、殺せなかったのです。魔法もほとんど使えずに、火さえも起こせず、水で我慢していたのですが、空腹に耐えられずにやっと。解体も初めてしたので滅茶苦茶で、泣きながら食べたのは忘れられません」
「俺も殺すのは……弓で鳥とか撃つなら……練習しないといけないけど」
「そうですね、まだ最初の街にも着いていません。今夜は野営になりますし、一通りのことは教えられるかと思います。街についたら通貨の説明と、買い物の仕方をお教えしますので」
「うん……」
行きましょうとノアが御者台に乗ったのを見て、自分も横に乗る。
精神を鍛える旅と聞いたが、精神が壊れそうだ。動物を狩って食べ、売れる部分は取って置いて売る。人間界では機械がするのだろうが、こちらでは人の手でしなければいけない。それだけで全然違うと城から出た瞬間に思わされた一面だった。
0
お気に入りに追加
30
あなたにおすすめの小説
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?
碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。
まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。
様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。
第二王子?いりませんわ。
第一王子?もっといりませんわ。
第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は?
彼女の存在意義とは?
別サイト様にも掲載しております
下宿屋 東風荘 4
浅井 ことは
キャラ文芸
下宿屋 東風荘4
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:..
大きくなった下宿に総勢20人の高校生と大学生が入ることになり、それを手伝いながら夜間の学校に通うようになった雪翔。
天狐の義父に社狐の継母、叔父の社狐の那智に祖父母の溺愛を受け、どんどん甘やかされていくがついに反抗期____!?
ほのぼの美味しいファンタジー。
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:..
表紙・挿絵:深月くるみ様
イラストの無断転用は固くお断りさせて頂いております。
☆マークの話は挿絵入りです。
なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが
マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって?
まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ?
※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。
※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
白い結婚三年目。つまり離縁できるまで、あと七日ですわ旦那様。
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
異世界に転生したフランカは公爵夫人として暮らしてきたが、前世から叶えたい夢があった。パティシエールになる。その夢を叶えようと夫である王国財務総括大臣ドミニクに相談するも答えはノー。夫婦らしい交流も、信頼もない中、三年の月日が近づき──フランカは賭に出る。白い結婚三年目で離縁できる条件を満たしていると迫り、夢を叶えられないのなら離縁すると宣言。そこから公爵家一同でフランカに考え直すように動き、ドミニクと話し合いの機会を得るのだがこの夫、山のように隠し事はあった。
無言で睨む夫だが、心の中は──。
【詰んだああああああああああ! もうチェックメイトじゃないか!? 情状酌量の余地はないと!? ああ、どうにかして侍女の準備を阻まなければ! いやそれでは根本的な解決にならない! だいたいなぜ後妻? そんな者はいないのに……。ど、どどどどどうしよう。いなくなるって聞いただけで悲しい。死にたい……うう】
4万文字ぐらいの中編になります。
※小説なろう、エブリスタに記載してます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる