下宿屋 東風荘 5

浅井 ことは

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守り

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「なぁ、お前達、俺の膝に乗ってもいいんだぞ?」と秋彪が面白半分で言うと、「と、とんでもない。秋彪様はお社のお狐様なのでそんな失礼なことは出来ないのですー」という紫狐に、煌輝までもがウンウンと首を縦に振っている。

「面白そうだったのに」

「やっぱり、格差みたいなのとかあるの?」

「そりゃあるにはあるさ。でかい社狐の方が威張ってるし。俺たちの神社も結構でかいと思うけど、もっと昔からある神宮とかは仙以上の管轄だからな」

「仙人と仙は違うの?前から気になってたんだけど」

「単に千年で飛ぶだけで終わった者は仙。そこから仙人になるのか、冬弥みたいに天狐になるのかは誰にもわからないとされてるんだ。なんだっけ、素質の問題?だったかな?」

「じゃあ、みんながみんなそうなるとは限らないんだ」

「千年さえ飛べば仙の資格は得られる。力も強くなる。それは、社を守るためでもあるんだが、その分任されることも色々出てくるって聞いてる」

「何か複雑だね。あ、煌輝君お代わりする?」

「あのハンバーグ……」

「うん、中にチーズ入ってるんだ。美味しいよ?」

「ち、チーズ」

「嫌いだった?」

「す、好き。一番好き」

照れながらいうのでハンバーグを取ると、ナイフとフォークで上手に切り分け、中からトロッと出てきたチーズに満面の笑みを浮かべる。

パクパクと勢いよく食べるので、もっとゆっくりよく噛んでと言うと、チラッと見上げられ、「いつもだよ?」と言われる。

「え?」

「だってみんなが取っていくから。最近は外に出てることが多いから、力も使うしって事で那智様が食事を多めにくれたりするんだけど、本来は那智様の中で気だけもらってればいいから、たまの食事はご馳走なんだよ?」

「みんな食欲旺盛なんだね」

「雪翔、影の中でも縦社会の所もあるから。俺のとこはそんな事はないが、やっぱり外に出てることが多いやつ優先にはなるんだよ」

「じゃあ、煌輝君以外にも出てる狐がいるってこと?」

「那智の影武者。仕事でいくつか被った時に、狐達を自分のふりして行かせるんだ。だから、余計に出てこない煌輝に回らないんだろうな」

「それ可愛そう。栞さんの所も?」

「うちはそんなことないけど。みんな仲良く分けて食べてるわよ?やっぱり力を使った子に多くあげるようにはしてるけど、量的には沢山いらないのよ。私たちが怪我とかしない限りはね」

「こ、煌輝君、お代わりあるから」

「だって、美味しい……」

口が小さいので、小さめのハンバーグでも口に含む量は少ないが、パンを食べながら時たま咳き込むので、お茶を渡してゆっくりだよ?と心配する。

翡翠は翡翠で航平に甘え、「おににぎ!」とねだっているが、それをうまく交わしてスプーンで「はい、これ食べてね」と航平の笑顔に騙される翡翠。

焼きもちを焼くかなと思っていた紫狐は、どこで覚えたのか、ラザニアを食べながら「でりしゃすー!」と言いながら食べている。

「秋彪さん、例えばなんだけどね、僕って他にも狐が増えたりするのかな?本では紙に書いた式神っていうのを使うって書いてあって、能力が高いほど本物に変わりなく見えるってあったんだ」

「んー!俺も今迄あったこともなかったからなんとも言えないけど、俺達の国では影……つまり、使役狐とも言うんだが、縁がなければ会えないって言ったりもする。こっちで言う運命とかご縁てやつ?」

「だったらこれからどうなるのか分からないよね」

「相性もあるから、第一印象は大事だぞ?可愛いからって適当に拾うなよ?」

「う、うん」

「俺は?」

「無理だろう。影にも狐が入れないように、なんだっけ、精霊?が守ってるから。嫌ってないのは分かるんだけど、お前を守ってる感じ?」

「そうですか。ちょっと残念かな」

「だが、連れてる分には問題はなさそうだな」

「そうね、嫌がってる感じはしないもの。そんなに気にすることないわよ?」
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