下宿屋 東風荘 5

浅井 ことは

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守り

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大人達はリビングで酒を交わしながら食べて飲み、航平と秋彪と栞と四人でダイニングのテーブルで食事をする。

「俺もあっちで飲みたいのに!兄貴が飲み出すと俺がとばっちり食うんだから」

「玲さんかなり飲むもんね。前びっくりした」

「体もデカけりゃ態度もでかいし、大食いで大酒飲みときたら、でっかい所だけ目立つんだよなぁ」

予備の椅子に、三郎たちにも座ってもらって、ダイニング組は秋彪と三郎と四郎が少しずつ日本酒を口にし、料理を眺めている。

「これは?」

「四角い箱に香ばしい匂いですね……」

「なにか伸びてるが……」

「これはラザニアっていってね、スパゲティをひらべったくしたのと、ひき肉とトマトのソースで挟んで焼いたやつだよ。僕これ好きなんだ!器は熱いから気をつけてね」

そう言って取り皿に少しずつ取り分けて渡す。

「これは『ほーく』というので食べるんですか?」

「うん。お箸でもいいけど」

「つ、使ってみます……」

「一族と言っても、こっちに来たことあるやついないのか?」

「頭目は昔来たと聞いたことがありますが、我らは数度来たことがあるだけで、後は書物でしかこちらの事は……」

「雪翔と航平が大変だな」

「慣れるよ。二人共器用だから」

「で、これは?」と秋彪が指を指したのは山積みにされたイチゴ。
翡翠のであろうが、こんなには食べないから後でなにかに使うのかと栞に聞くと「みんなの狐ちゃんたちにもと思ったの。みんな疲れてるしね」

言うが早いか顔を知っている狐たちがどんどん出てきて、栞からいちごをもらって影に戻って行っている。

隅っこに煌輝がいたので手招きすると、トコトコとこちらに来て、「僕は何もしていないのでもらえません」と言って下を向いている。

「良いのよ?みんなで分けて食べましょう?それに、ちゃんと那智様の後ろで戦ったって聞いたわ」と頭を撫でている。それに那智が気づいたのか、「煌輝、貰っておけ。お前も頑張った」と言うと、やはり嬉しかったのか表情が明るくなる。

その一方で不機嫌になるのが一匹……

「ひーたんの、少ない!」

「まだ沢山あるのよ?」

「やっ!」

「ほら、みんな五つずつだったでしょう?翡翠ちゃんのはもっと多いのよ?」

「むむーぅ」

「翡翠ちゃん、みんなより多くてよかったね」と航平が言うと、「あいっ!」と手を挙げてすぐにご機嫌になる。

「何だろう?僕のいうこと聞いてくれないのに……最近膝にも来てくれないし」

「反抗期かしら?」

「あー、あるある。チビは拗ねるんだよ。うちの狐たちもあった!」

「そうなの?」

「誰かが面倒見てたんだけどさ、雪翔の狐はみんなチビだろ?だから、航平が兄ちゃんに見えるんじゃないか?」

そんなものなのかな?と他の料理も小皿にとって、二人に説明しながら食事を進めていくと、那智が気分が良くなったのか紫狐を呼びつけ、何やらヒソヒソと話をしている。

「しーちゃんなんだったの?」

「金と銀はまだ寝てますよね?」

「うん。感じからするとそう見たい」

「だったら、煌輝君、ひーちゃんはちょっとこっちに来てください。那智様がお呼びですのでー」と言いながら、部屋の外に出ていく。
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