下宿屋 東風荘 5

浅井 ことは

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守り

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三郎におんぶされて玄関まで行くと昴が来ており、「一応俺が送り届ける!と言いたい所だが、これでも忙しくてな。直接家の前の森に出れるようにだけしておいた。その前には結界があるから、家までまず走れよ?」

「昴さん、昨日正式に親子になりました。ご尽力ありがとうございました」

「なぁに、大切にしてやるんだぞ?航平、那智の事頼むぞ」

「は、はい」

その後、ソロっと祖父を見て、「お、お爺ちゃん。また遊びに来ます」と言うと、祖父が満面の笑みで頷き、早く行きなさいと背中を押してくれる。

前の旅行の時にも感じた変な感覚が取れると、もう目の前は家が見えていて、みんなが走って玄関まで行く。

一応、ピンポンとインターフォンを押して、ただいまと玄関を開けると、早く入ってと栞に急かされリビングにみんなが入る。

「ただいま」

「お帰りなさい。あ、車椅子持ってくるわね」

ソファに降ろしてもらってから、冬弥さんは?と聞くと、玲と街を見に行っていると返事が返ってきた。

「航平、お前下宿に残るのか俺のマンションに来るのか決めたのか?」

「はい。下宿にいます」

「そうか。俺の家はわかるな?」

「はい」

「た、たまには訪ねてこい。その、雪翔と一緒に」

「はい」

「ハイしか言えんのか!」

「照れ隠しじゃねーの?ってかさ、那智の事だから手放さん!とか言いそうだったけどなぁ」

「そんなことは無いが、バイトの事もあるし、暫くは一緒の行動が多いだろうが……ちゃんと後期は大学にいけよ?」

「行きますよ。留年だけはしたくないですから」

「なんで一緒にすまないの?」

「「恥ずかしいから!!」」

「ふふっ、似てるね!」


話している内に、冬弥と玲が帰ってきて、四社にそれぞれ影を二匹ずつ置くことになり、あちらからも警備が四社とは別に周りの社にも配備されることが決まって、今慌ただしく動いているということだった。

「那智、勝手にと思いましたが、下宿の者には既に術をかけてあります。那智が雪翔の叔父とは刷り込んであったので、その子供が航平。秋彪と玲が兄弟で親戚ってことにしてありまして、家も近いのでよく遊びに来るという風にしましたが、他になにか付け加えることあります?」

「無い。親は?」

「しました。いつものようにしなくていいとの事だったので、簡単なすり替えだけ。戸籍もこちらで用意しましたし、なんの不備もありません。次の書き換えは50年後くらいですかねぇ」

「俺とお前は代替わりしたって書き換えでいいが……まぁ、適当に航平も変えておけばいいか」

「適当って……」

「そんなものですよ?じゃあ、那智、毎月家賃下さい。月に10万でいいですよ?」

「家賃上がってるじゃねーか!」

「航平君、ダディがケチですよ?」

「ケチって……」

「分かったよ。払えばいいんだろ?毎月引き落としてくれ」

冬弥が準備よく引き落としの紙を差し出し、「これに書いて銀行に出しておいてくださいね」とニコニコしている。
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