67 / 76
守り
.
しおりを挟む
目が覚めると、祖父の家に作ってもらった自分の部屋だと言うことがわかり、体を起こす。
「ぼ、坊ちゃん!」
「周太郎さん……僕、どのくらい寝てたの?」
「三日です。もう心配で心配で……すぐに御館様たちに知らせてきます」
バタバタと周太郎が出ていき、横にあった桶の水とタオルで軽く顔を洗う。
「雪翔!良かった……」
「京弥さん!冬弥さん達は?」
「今あんまり社は離れない方がいいから戻ってもらった。代わりに秋彪君が来てるよ」
「秋彪さんは怪我は?」
「彼もボロボロでね、合う着物がなかったから、今栞さんの御両親の家に見繕いに行ってる。元気なものだよ」
「そっか……みんな戻っちゃったのか……」
「あ、那智は航平君と南の家に行ってるよ。親子手続きの事もあるから。今夜にでも戻ってくると思うけど、雪翔はもう少しここで休んでいった方がいい」
「でも……」
「昴さんの治療は終わってるけど、まだ動くのは早いと思うんだ。花ちゃんが毎日治しに来てくれるから、せめてあと一日だけでも大人しく寝ててくれたら嬉しいんだけど」
そう言われてしまうと、「はい」としか返事ができず、横になろうとした時に祖父母が入ってきた。
「雪翔。どこか痛まんか?何かおかしなところはないか?」
「な、無いと思う」
両腕をがっしりと握られブンブンと前後に振られるので、その手を離してほしいと思いながら、祖母に目をやると、ちゃんと分かってくれていたのか、祖父を退けてくれる。
「あのね、金ちゃんと銀ちゃんは広間でまだ寝てるの。疲れたんでしょうねぇ。お布団に入れても全く起きなかったのよ?それと、白龍と黒龍だったかしら?戻ってきて話を聞いたのよ。私達は見てないけど、ちゃんと岩戸の中に入ったそうよ。今は岩戸も冬弥が術で塞いでいるから、誰にも開けることは出来ないわ。だから安心して寝てなさい」
「うん、でも、どうやって帰ればいいの?」
「城から帰れる。昴が迎えに来てくれるで、それまで雪翔はゆっくりとしておればいい」
「あ、京弥さんの影に入ったしーちゃんは?」
「今、あのチビちゃんたちを見てるよ。翡翠も出てきてしまってね、呼んでこようか?」
「僕、見に行きたい」
「じゃが、車椅子もないしのう。こっちにも一つ置いておかねばいかんの。周太郎、連れて行ってやってくれんか。儂等も一緒に行くとしよう」
「じゃあ私はお茶の用意でもしてきますね」
ほほほほほっ!と出ていく祖母に、呑気にした祖父に見えるが何か隠しているように、少し雰囲気がピリピリとしている。
部屋の中では金も銀も気持ちよさそうに寝ており、隅には白龍と黒龍が姿を現して座っていた。
「白!黒!怪我は無い?」
「雪翔の事ずっと待っておったみたいじゃ。儂等が戻っても良いと言っておったんじゃが、主の命しか聞かんと言うての……」
「白も黒も、そう言う時はお爺ちゃん達の言う事聞いてよ……」
「申し訳なかった。だが報告ができていない」
「そんなの後で良かったのに。疲れて無いの?」
「我等は大きな怪我がない限りこれで十分です。主の体は……」
「主ってやつやめてよ。みんなと同じように呼んで欲しいんだけど……」
「それは御命令か?」
「う、うん」
「承知した」
黒の方が話がわかるなと思いながら、祖父から聞いた話をして、それがちゃんと冬弥達に見えていたのかと聞く。
「この二人は、今は二人で一人分の力が出るが、まさか主……雪がそこまで力を使えるとは思っていなかった」
「我らの姿はちゃんと見えていたと聞くし、あの光の中、岩戸の戸が少し開いて中に入ったのは確認しました。その後、あとをつけようかとも思いましたが、我らもこれ以上離れない方が良いと判断し、暫く見張った後黒が冬弥様を呼びに行き、封をしてもらいました。この後、金と銀が眠りにつき、翡翠は二人の治療で今縁側で眠っております」
「ぼ、坊ちゃん!」
「周太郎さん……僕、どのくらい寝てたの?」
「三日です。もう心配で心配で……すぐに御館様たちに知らせてきます」
バタバタと周太郎が出ていき、横にあった桶の水とタオルで軽く顔を洗う。
「雪翔!良かった……」
「京弥さん!冬弥さん達は?」
「今あんまり社は離れない方がいいから戻ってもらった。代わりに秋彪君が来てるよ」
「秋彪さんは怪我は?」
「彼もボロボロでね、合う着物がなかったから、今栞さんの御両親の家に見繕いに行ってる。元気なものだよ」
「そっか……みんな戻っちゃったのか……」
「あ、那智は航平君と南の家に行ってるよ。親子手続きの事もあるから。今夜にでも戻ってくると思うけど、雪翔はもう少しここで休んでいった方がいい」
「でも……」
「昴さんの治療は終わってるけど、まだ動くのは早いと思うんだ。花ちゃんが毎日治しに来てくれるから、せめてあと一日だけでも大人しく寝ててくれたら嬉しいんだけど」
そう言われてしまうと、「はい」としか返事ができず、横になろうとした時に祖父母が入ってきた。
「雪翔。どこか痛まんか?何かおかしなところはないか?」
「な、無いと思う」
両腕をがっしりと握られブンブンと前後に振られるので、その手を離してほしいと思いながら、祖母に目をやると、ちゃんと分かってくれていたのか、祖父を退けてくれる。
「あのね、金ちゃんと銀ちゃんは広間でまだ寝てるの。疲れたんでしょうねぇ。お布団に入れても全く起きなかったのよ?それと、白龍と黒龍だったかしら?戻ってきて話を聞いたのよ。私達は見てないけど、ちゃんと岩戸の中に入ったそうよ。今は岩戸も冬弥が術で塞いでいるから、誰にも開けることは出来ないわ。だから安心して寝てなさい」
「うん、でも、どうやって帰ればいいの?」
「城から帰れる。昴が迎えに来てくれるで、それまで雪翔はゆっくりとしておればいい」
「あ、京弥さんの影に入ったしーちゃんは?」
「今、あのチビちゃんたちを見てるよ。翡翠も出てきてしまってね、呼んでこようか?」
「僕、見に行きたい」
「じゃが、車椅子もないしのう。こっちにも一つ置いておかねばいかんの。周太郎、連れて行ってやってくれんか。儂等も一緒に行くとしよう」
「じゃあ私はお茶の用意でもしてきますね」
ほほほほほっ!と出ていく祖母に、呑気にした祖父に見えるが何か隠しているように、少し雰囲気がピリピリとしている。
部屋の中では金も銀も気持ちよさそうに寝ており、隅には白龍と黒龍が姿を現して座っていた。
「白!黒!怪我は無い?」
「雪翔の事ずっと待っておったみたいじゃ。儂等が戻っても良いと言っておったんじゃが、主の命しか聞かんと言うての……」
「白も黒も、そう言う時はお爺ちゃん達の言う事聞いてよ……」
「申し訳なかった。だが報告ができていない」
「そんなの後で良かったのに。疲れて無いの?」
「我等は大きな怪我がない限りこれで十分です。主の体は……」
「主ってやつやめてよ。みんなと同じように呼んで欲しいんだけど……」
「それは御命令か?」
「う、うん」
「承知した」
黒の方が話がわかるなと思いながら、祖父から聞いた話をして、それがちゃんと冬弥達に見えていたのかと聞く。
「この二人は、今は二人で一人分の力が出るが、まさか主……雪がそこまで力を使えるとは思っていなかった」
「我らの姿はちゃんと見えていたと聞くし、あの光の中、岩戸の戸が少し開いて中に入ったのは確認しました。その後、あとをつけようかとも思いましたが、我らもこれ以上離れない方が良いと判断し、暫く見張った後黒が冬弥様を呼びに行き、封をしてもらいました。この後、金と銀が眠りにつき、翡翠は二人の治療で今縁側で眠っております」
1
お気に入りに追加
70
あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
下宿屋 東風荘 4
浅井 ことは
キャラ文芸
下宿屋 東風荘4
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:..
大きくなった下宿に総勢20人の高校生と大学生が入ることになり、それを手伝いながら夜間の学校に通うようになった雪翔。
天狐の義父に社狐の継母、叔父の社狐の那智に祖父母の溺愛を受け、どんどん甘やかされていくがついに反抗期____!?
ほのぼの美味しいファンタジー。
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:..
表紙・挿絵:深月くるみ様
イラストの無断転用は固くお断りさせて頂いております。
☆マークの話は挿絵入りです。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
便利屋ブルーヘブン、営業中。~そのお困りごと、大天狗と鬼が解決します~
卯崎瑛珠
キャラ文芸
とあるノスタルジックなアーケード商店街にある、小さな便利屋『ブルーヘブン』。
店主の天さんは、実は天狗だ。
もちろん人間のふりをして生きているが、なぜか問題を抱えた人々が、吸い寄せられるようにやってくる。
「どんな依頼も、断らないのがモットーだからな」と言いつつ、今日も誰かを救うのだ。
神通力に、羽団扇。高下駄に……時々伸びる鼻。
仲間にも、実は大妖怪がいたりして。
コワモテ大天狗、妖怪チート!?で、世直しにいざ参らん!
(あ、いえ、ただの便利屋です。)
-----------------------------
ほっこり・じんわり大賞奨励賞作品です。
アルファポリス文庫より、書籍発売中です!
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる