下宿屋 東風荘 5

浅井 ことは

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非日常

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「雫ちゃん達は今どこ?」

「あ、用事を頼んだんですよ。私に化けてもらってまして、夕餉のカレーを……」

「阿呆か!カレーより今の状況を考えんか!可愛い孫二人が傷ついたらどうするんじゃ」

「お爺ちゃん……何か違う……」

「俺も孫?」

「そうじゃ、航平も分家とはいえ那智の子になるんじゃろう?じゃったら、宗家の当主の儂の孫じゃわい!爺ちゃんとちゃんと呼ぶんじゃぞ?」

「は、はい」

「なんじゃ?聞こえんのぅ?」

「はい、お爺さん」

「『ちゃん』じゃ!」

「お爺ちゃん!」

「宜しい。で、狙われたのは雪翔で良いのか?」

「ええ。あの温泉の時は雪翔の力がどの程度なのか知りたかったと言ってまして、自分が育てると言ってましたねぇ。あ、術師としてですが」

「え?やだ」

「当たり前です、可愛いわが子を誰があんな変態男に渡すものですか!」

「変態?」

「冬弥様、冬弥様の言い方のが変態っぽいのですけど……」

「何か言いました?し・お・り・さん」

ブンブンと手を振って、「何でもないです」とお茶を入れながら目をそらし、視線で早くお茶飲んでと言われるのでグビッと航平と一気飲みをしてお代わりを貰う。

「何にしても、あの洞窟の印は昔からだそうで、力を強めてくれる場所だそうです。それと、雪翔が嫌がった祠の骨。あれは変態がすり替えたと言ってました。雪翔が気づくかどうか試したかったそうです」

「饒舌じゃのぅ」

「話したいことはペラペラ喋りまくってましたよ?式に私たちを攻撃させながら、妖まで操ってね」

「そうだ、あいつ雪翔は自分から頼ってくるって言ってたぞ?」

「それ前にも言われたよ?」

「ったく!雪翔が可愛いからって手を出そうなどと……」

「えっと、航平ちゃんは?」

すると今度は那智がイラッとした顔をして、「式だか何だか知らんが、航平が美少年で面白い術を使うからちょっと貸してとか言ってきてな。美少年なのは俺の子だから当たり前だとして、あんな奴になんで貸さないといけないんだ!」

「那智さん……やめて。美少年とかやめて。恥ずかしいから」

「あ?」

那智が睨みながら「うるせぇ」とドスの聞いた声で「ダ・ディ・と・い・え!」と馬鹿なことを言っていて話がだんだんと脱線していく。

「航平ちゃん王子だってみんなに人気だもんね?それに那智さんと少し似てるし。だから、話し戻してほしいなーって思うんだけど……」

「パパ「ダディ」って呼んだら」など、合わなくていい所だけ合い、二人でこっちをじーっと見てきたが、そこに割って入ったのは祖母だった。

「あなた達、バカ親するなら後で好きにしたらいいわ。お爺さんもよ?今はお社のことと雪翔と航平ちゃんの事でしょう?」

「ちゃん?」

「あら、ずっと言いたかったのよ。目の色も髪の色もお人形さんみたいで可愛いんですもの。ほほほほほ!」

「お婆ちゃんまで……」
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