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非日常
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紫狐が中に入り、あらかた治療が終わったのか、ほかの狐たちも影に戻っていく。
「ひーたんも、おににぎ!」
「おにぎり欲しいの?」
うんうんと首を振り、女中が一つ小さなおむすびを渡すと、両手で上手に持ってパクパクと食べ、大根のお漬物までポリポリと食べている。
「雪ー、おににぎっ!」
「え?僕?」
そう言いながらも小さいのをひとつ作って渡すと、またパクパクっとすぐに食べ終えてしまった。
「ひーちゃん、お水飲む?」
「のむ!いちごもー」
「今?買いに行かないと無いかも……」
「むむぅー!おやつ、いちごっ!」
「分かったよ。それよりもさ、臭いって何?」
「くちゃいの!とやさんクッチャーイの!」
「多分、妖の臭いだと思います。かなり集まっていたので」
「何があったの?服もボロボロだし、那智さんもそうだったけど……」
「ちゃんと話しますから、お風呂行ってきていいですか?私の着物でいいので、玲にも一つお願いします」
祖母が用意すると出ていき、冬弥たちが出ていった入れ替わりに那智が起きてきた。
「俺も飯……なんだ?」
「那智さんが着物着てるから……」
「仕方ないだろう?借りるしかなかったから。ちょっと丈が短いけどな」
「那智が大きすぎるんですよ。私の着物でさえ短いとか文句言わないでください。この家で体格が似てるのは私しかいないんですから」
「はいはい、でも地味だよな?」
朱色の着物に黒に近いグレーの帯をしながら、地味と言える那智に、京弥も呆れたのか、それだけ文句が言えるなら体も平気だろうと背中を叩く。
ガタンと襖が勢いよく開けられ、入ってきたのは航平。
「見に行ったら居なかったんで、探したんですよ?何ほっつき歩いてんですか?」
「航平、仮でも今俺はお前の親父だぞ?」
「わ、分かってますけどっ!心配したんですから……」
「俺のことは人前では名前でいいが、それ以外なんて呼ぶんだったかな?」
「だ……」
「だ?」
「ダディ……」
その場にいたみんなが一瞬固まったあと、大笑いしたのは言うまでもないが、顔を赤らめて正座をして下を向いてる薄いブロンドのハーフが言うには結構似合っている。
「航平ちゃん、言いにくかったのわかったよ。僕なんてパパってまだ呼んでないもん。那智さんに言われて言ったことはあるけど……ダディって……あー、お腹痛い」
「だからいいたくなかったのに……辞めましょうよ人前ではっていったじゃないですか」
「ん?ここは親戚の家。お前にとっても親戚の家になり家族と一緒だ。分家ということは忘れちゃダメだが、普段はダディでいいぞ?」
「勘弁してください……」
「で?『だでー』とは何じゃ?」
「叔父上、外国ではそう呼ぶ国があるそうです。航平の母国でも子供はそう呼ぶと聞いたことがあるので、そう呼ばせようとしてるんですが……反抗期……ですかね?」
「違いますっ!ダディなんて小さい子しか言いませんよ……どこで覚えたんですか?」
「テレビ」
「那智さんでいいじゃないですか」
「嫌だ」
「那智よ、航平が困っておるぞ?まぁ、親子になるんならお前達で好きに呼び名は決めればいいが、那智が親とはのう」
「結婚する気は無いんですけど、航平ならって思ったんです。勘みたいなものですが」
「そうか。まぁ、儂等は孫が増えるのは歓迎じゃ。雪翔のいい兄であってほしいと願うだけじゃがな」
「それは勿論です」
航平の言葉に安心したのか、祖父も頷くと航平の食事も用意させて、しっかり食べろと二人に言っている。
早く何があったか聞きたいのに、なかなか話が進まないので、仕方なく冬弥たちがお風呂から戻ってくるまで足を伸ばし、壁にもたれかかる。
「ひーたんも、おににぎ!」
「おにぎり欲しいの?」
うんうんと首を振り、女中が一つ小さなおむすびを渡すと、両手で上手に持ってパクパクと食べ、大根のお漬物までポリポリと食べている。
「雪ー、おににぎっ!」
「え?僕?」
そう言いながらも小さいのをひとつ作って渡すと、またパクパクっとすぐに食べ終えてしまった。
「ひーちゃん、お水飲む?」
「のむ!いちごもー」
「今?買いに行かないと無いかも……」
「むむぅー!おやつ、いちごっ!」
「分かったよ。それよりもさ、臭いって何?」
「くちゃいの!とやさんクッチャーイの!」
「多分、妖の臭いだと思います。かなり集まっていたので」
「何があったの?服もボロボロだし、那智さんもそうだったけど……」
「ちゃんと話しますから、お風呂行ってきていいですか?私の着物でいいので、玲にも一つお願いします」
祖母が用意すると出ていき、冬弥たちが出ていった入れ替わりに那智が起きてきた。
「俺も飯……なんだ?」
「那智さんが着物着てるから……」
「仕方ないだろう?借りるしかなかったから。ちょっと丈が短いけどな」
「那智が大きすぎるんですよ。私の着物でさえ短いとか文句言わないでください。この家で体格が似てるのは私しかいないんですから」
「はいはい、でも地味だよな?」
朱色の着物に黒に近いグレーの帯をしながら、地味と言える那智に、京弥も呆れたのか、それだけ文句が言えるなら体も平気だろうと背中を叩く。
ガタンと襖が勢いよく開けられ、入ってきたのは航平。
「見に行ったら居なかったんで、探したんですよ?何ほっつき歩いてんですか?」
「航平、仮でも今俺はお前の親父だぞ?」
「わ、分かってますけどっ!心配したんですから……」
「俺のことは人前では名前でいいが、それ以外なんて呼ぶんだったかな?」
「だ……」
「だ?」
「ダディ……」
その場にいたみんなが一瞬固まったあと、大笑いしたのは言うまでもないが、顔を赤らめて正座をして下を向いてる薄いブロンドのハーフが言うには結構似合っている。
「航平ちゃん、言いにくかったのわかったよ。僕なんてパパってまだ呼んでないもん。那智さんに言われて言ったことはあるけど……ダディって……あー、お腹痛い」
「だからいいたくなかったのに……辞めましょうよ人前ではっていったじゃないですか」
「ん?ここは親戚の家。お前にとっても親戚の家になり家族と一緒だ。分家ということは忘れちゃダメだが、普段はダディでいいぞ?」
「勘弁してください……」
「で?『だでー』とは何じゃ?」
「叔父上、外国ではそう呼ぶ国があるそうです。航平の母国でも子供はそう呼ぶと聞いたことがあるので、そう呼ばせようとしてるんですが……反抗期……ですかね?」
「違いますっ!ダディなんて小さい子しか言いませんよ……どこで覚えたんですか?」
「テレビ」
「那智さんでいいじゃないですか」
「嫌だ」
「那智よ、航平が困っておるぞ?まぁ、親子になるんならお前達で好きに呼び名は決めればいいが、那智が親とはのう」
「結婚する気は無いんですけど、航平ならって思ったんです。勘みたいなものですが」
「そうか。まぁ、儂等は孫が増えるのは歓迎じゃ。雪翔のいい兄であってほしいと願うだけじゃがな」
「それは勿論です」
航平の言葉に安心したのか、祖父も頷くと航平の食事も用意させて、しっかり食べろと二人に言っている。
早く何があったか聞きたいのに、なかなか話が進まないので、仕方なく冬弥たちがお風呂から戻ってくるまで足を伸ばし、壁にもたれかかる。
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