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非日常
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みんなが揃い夕飯が来たが、中々みんな口を開かずお通夜のようにシーンとしていた。
「お爺ちゃん……」
「ん?」
「まだかな?」
「冬弥は天狐じゃ。秋彪と玲じゃったか?あ奴らもそれなりに強いじゃろう。儂等は待つしかないんじゃ。その為にはこちらもちゃんと食べて力を蓄えて置かんとな」
「うん」
「雪翔、心配だろうが、食え。そしてちゃんと寝ろ。冬弥が帰ってきた時怒られるのは儂のような気がするからな!航平もだぞ?」
「はい。いただきます。雪翔も無理してでも食べないと。な?」
「そうだよね。あ、栞さんもちゃんと食べなきゃね。それは僕が怒られると思う」
「赤ちゃんの為……だものね。冬弥様達を信じましょう」
みんなで黙々と食べ、薬を飲めと言われ、飲みはしたがいつものように眠気が全然来ない。
部屋でずっと窓の外を眺めていたら、航平に寝ろと布団に連れていかれ、布団をかけられる。
航平も那智が心配だろうに、いつも他の人のことを優先して世話を焼いてくれる。そこがいい所であり、優しすぎるところでもあると思うのだが、ありがとうとしか言えず、航平には何もお返しができていない。
「航平ちゃん、明日には冬弥さん帰ってくるよね?みんなも大丈夫だよね?」
「うん。秋彪君や玲さん兄弟って血の気多そうだし、他のお社の狐の人も手伝ってくれてるとかなんとか言ってた。だから、寝よう。何かあったらみんな起こしてくれるよ」
「うん。お休み」
その後もうとうととしながら、寝たり起きたりを繰り返し、少し空が明るくなった頃、表が騒がしくなってきたので周太郎を呼ぶ。
「坊ちゃん、冬弥様がお帰りに。玲様もご一緒です」
「は、早く連れてって!航平ちゃん……は寝てるからいっか!早く!」
「は、はい」
おんぶして貰っての方が早いからとお願いして玄関まで連れて行ってもらい、使用人のみんなを避けて前に出てもらう。
「と、冬弥さん!玲さん!」
着物はボロボロになっていたが、二人共大きな怪我はなく、笑っていたので少し安心しながらも翡翠を出す。
「ひーちゃん、治せるよね?二人の怪我なおして」
「ひーたん眠……ひゃー!クサイ!」
「クサイって言わないの!早く!」
「いちごー」
「あげるからお願いだよ!」
フワフワっと飛んで冬弥の肩に乗ったと思ったら、「くちゃい!むむーーー!」と言いながらも、傷口に向かって手を伸ばしている。
「とにかく中で治療したらどうじゃ?周太郎、みんなに食事の用意と、お湯とタオルを用意させよ。他のものは京弥と栞さんを呼んでくるのじゃ」
祖父の一言で集まってきていた使用人たちもみんな動き出し、器用に肩に乗った翡翠と一緒に、冬弥と玲が客間に入る。
用意されたお湯で二人共顔や手などを拭き、座布団の上で胡座をかいたままガツガツと食事をしている。
「すごい食べっぷり……」
「すいませんねぇ。力を使うとお腹が空くんですよ」
「冬弥様……」
栞が二人にお茶を渡し、もう少しゆっくりと食べてくださいとお茶碗にご飯のお代わりも注いで渡し、雫に花、翡翠とで治療が行われている。
「冬弥様ー!」
「何ですか?寝てていいですよ?」
「し、紫狐は全く気づきませんでした!琥珀様も気付いていたのに教えてくれなかったものですから」
「気配は消してましたから。気にしなくていいですよ?それより、二人に怪我はありませんね?」
「はい!」
「紫狐は暫く父上か兄の影に入れてもらいなさい。私の中は今穢れてますから」
「冬弥様、ほかの者は?桜狐や水狐達は!?」
「中で結界張ってます。暫くかかるので、仲良くしていてください。そうですねぇ……兄上頼めますか?」
「いいよ。紫狐、一度影に入ってみてくれるかい?私の影はみんな知ってるだろう?」
「で、ですが……」
「いいから」
「分かりました」
「お爺ちゃん……」
「ん?」
「まだかな?」
「冬弥は天狐じゃ。秋彪と玲じゃったか?あ奴らもそれなりに強いじゃろう。儂等は待つしかないんじゃ。その為にはこちらもちゃんと食べて力を蓄えて置かんとな」
「うん」
「雪翔、心配だろうが、食え。そしてちゃんと寝ろ。冬弥が帰ってきた時怒られるのは儂のような気がするからな!航平もだぞ?」
「はい。いただきます。雪翔も無理してでも食べないと。な?」
「そうだよね。あ、栞さんもちゃんと食べなきゃね。それは僕が怒られると思う」
「赤ちゃんの為……だものね。冬弥様達を信じましょう」
みんなで黙々と食べ、薬を飲めと言われ、飲みはしたがいつものように眠気が全然来ない。
部屋でずっと窓の外を眺めていたら、航平に寝ろと布団に連れていかれ、布団をかけられる。
航平も那智が心配だろうに、いつも他の人のことを優先して世話を焼いてくれる。そこがいい所であり、優しすぎるところでもあると思うのだが、ありがとうとしか言えず、航平には何もお返しができていない。
「航平ちゃん、明日には冬弥さん帰ってくるよね?みんなも大丈夫だよね?」
「うん。秋彪君や玲さん兄弟って血の気多そうだし、他のお社の狐の人も手伝ってくれてるとかなんとか言ってた。だから、寝よう。何かあったらみんな起こしてくれるよ」
「うん。お休み」
その後もうとうととしながら、寝たり起きたりを繰り返し、少し空が明るくなった頃、表が騒がしくなってきたので周太郎を呼ぶ。
「坊ちゃん、冬弥様がお帰りに。玲様もご一緒です」
「は、早く連れてって!航平ちゃん……は寝てるからいっか!早く!」
「は、はい」
おんぶして貰っての方が早いからとお願いして玄関まで連れて行ってもらい、使用人のみんなを避けて前に出てもらう。
「と、冬弥さん!玲さん!」
着物はボロボロになっていたが、二人共大きな怪我はなく、笑っていたので少し安心しながらも翡翠を出す。
「ひーちゃん、治せるよね?二人の怪我なおして」
「ひーたん眠……ひゃー!クサイ!」
「クサイって言わないの!早く!」
「いちごー」
「あげるからお願いだよ!」
フワフワっと飛んで冬弥の肩に乗ったと思ったら、「くちゃい!むむーーー!」と言いながらも、傷口に向かって手を伸ばしている。
「とにかく中で治療したらどうじゃ?周太郎、みんなに食事の用意と、お湯とタオルを用意させよ。他のものは京弥と栞さんを呼んでくるのじゃ」
祖父の一言で集まってきていた使用人たちもみんな動き出し、器用に肩に乗った翡翠と一緒に、冬弥と玲が客間に入る。
用意されたお湯で二人共顔や手などを拭き、座布団の上で胡座をかいたままガツガツと食事をしている。
「すごい食べっぷり……」
「すいませんねぇ。力を使うとお腹が空くんですよ」
「冬弥様……」
栞が二人にお茶を渡し、もう少しゆっくりと食べてくださいとお茶碗にご飯のお代わりも注いで渡し、雫に花、翡翠とで治療が行われている。
「冬弥様ー!」
「何ですか?寝てていいですよ?」
「し、紫狐は全く気づきませんでした!琥珀様も気付いていたのに教えてくれなかったものですから」
「気配は消してましたから。気にしなくていいですよ?それより、二人に怪我はありませんね?」
「はい!」
「紫狐は暫く父上か兄の影に入れてもらいなさい。私の中は今穢れてますから」
「冬弥様、ほかの者は?桜狐や水狐達は!?」
「中で結界張ってます。暫くかかるので、仲良くしていてください。そうですねぇ……兄上頼めますか?」
「いいよ。紫狐、一度影に入ってみてくれるかい?私の影はみんな知ってるだろう?」
「で、ですが……」
「いいから」
「分かりました」
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