59 / 76
非日常
.
しおりを挟む
「前から思ってたんだけど、影にはどんな影響が出るの?」
「人や影によって違うけど、弱っていると影は治そうとするから力を使って疲れるとかはあるね。イライラしたりしてると、中の狐達にもわかるんだよ。伝染みたいにイライラしてしまうって言ったらわかりやすいかな?喜怒哀楽も同じだよ?」
「その時は出してた方がいいのかな?」
「人間界では出せないからね。ここなら出してもいいと思うけど、今はやめておいた方がいい。何時動くか分からないから」
「うん」
家の門の方が騒がしくなったので見に行きたいと言って玄関先まで行くと、那智がボロボロの姿で航平を連れてきた。
スーツは破れ、いつもセットしてある髪もボサボサになっていて顔も汚れている。
「那智さん!」
「航平は無傷だ。俺はもう一度戻らないと」
「無理じゃ……周太郎、床の用意をせい。他のものはお湯と着替えを。婆さん、花を出してやってくれんか」
「そうですね。花ちゃん、那智を治してあげてくれるかしら?」
「はい。春?夏?あれ……?」
「両方よ?」
「でも……二つするのは……」
「那智は大丈夫よ。お願いね?」
「はい」
那智が三郎に担がれて連れていかれ、花もそれについて行くので、自分もと思ったが祖父に止められる。
「お爺ちゃん?」
「花が春と夏をすると言っておったろう?春は痛みなどを和らげたり眠らせたりする。夏は傷を塞ぐんじゃ。邪魔になる」
「秋と冬は?」
「冬は相当の大怪我じゃから儂もほとんど見たことは無い。秋はあまり使わんが、冬を使う手前の作業のようなもので、感覚を奪うんじゃ。花は言葉が少し少ないから言い方を春夏秋冬に分けて使っておるだけじゃ」
「那智さんの怪我って……」
「何、那智にとってはかすり傷じゃよ。じゃが、気が乱れておるから、春の術で眠らせておこうということ……じゃよな?」
「そうですよ。お爺さんの説明でわかった?那智はひどい怪我はないのだけど、骨の一本や二本は持っていかれてると思うの。花ちゃんならすぐ直してくれるから平気よ」
「大怪我じゃん!」
「そうねぇ。でも、あれだけ元気なら回復も早いわ。あの子昔から『たふ』とか言うのだったかしら。航平君はどこも怪我はないようだけど、少し休む?」
「いえ、大丈夫です。いきなりちょっと来いって言われて連れ出されて……あ、これ雪翔の鞄に薬詰め込んでたけど……」
「ありがとう」
中をみると、本当に適当に詰めたのだろう。袋のまま入れてあるが、それがまた、どれだけ急いで居たのかがわかる。
「航平ちゃん、那智さんいつ怪我したの?」
「俺がバイトに行く道にいきなり来て、その時にはもうあんな感じだった。道には誰もいなかったけど、多分見えないようにしてたんだとは思う。浮いてたから……」
「空飛んでたの?」
「そんな感じ?」
「相当急いでおったようじゃの。とにかく、部屋に行くとしようか」
みんなで客間へと行き、座ってお茶を飲むが、その間に昴も着き一冊の本を渡される。
「俺も向こうに行ったんだが、冬弥にこれを渡されて雪翔に渡すように言われたんだ」
「え?」
糸で端を縛ってあるかなり古い本のようだが、パラパラと捲ると星のマークとは別に紙の御札のようなものの書き方が載っていた。
「冬弥さんたちは?」
「無事だ。玲がかなり強くてな、逃げながら結界を張って俺たちをこっちにやった後、冬弥達の所に行ってもらった」
「人や影によって違うけど、弱っていると影は治そうとするから力を使って疲れるとかはあるね。イライラしたりしてると、中の狐達にもわかるんだよ。伝染みたいにイライラしてしまうって言ったらわかりやすいかな?喜怒哀楽も同じだよ?」
「その時は出してた方がいいのかな?」
「人間界では出せないからね。ここなら出してもいいと思うけど、今はやめておいた方がいい。何時動くか分からないから」
「うん」
家の門の方が騒がしくなったので見に行きたいと言って玄関先まで行くと、那智がボロボロの姿で航平を連れてきた。
スーツは破れ、いつもセットしてある髪もボサボサになっていて顔も汚れている。
「那智さん!」
「航平は無傷だ。俺はもう一度戻らないと」
「無理じゃ……周太郎、床の用意をせい。他のものはお湯と着替えを。婆さん、花を出してやってくれんか」
「そうですね。花ちゃん、那智を治してあげてくれるかしら?」
「はい。春?夏?あれ……?」
「両方よ?」
「でも……二つするのは……」
「那智は大丈夫よ。お願いね?」
「はい」
那智が三郎に担がれて連れていかれ、花もそれについて行くので、自分もと思ったが祖父に止められる。
「お爺ちゃん?」
「花が春と夏をすると言っておったろう?春は痛みなどを和らげたり眠らせたりする。夏は傷を塞ぐんじゃ。邪魔になる」
「秋と冬は?」
「冬は相当の大怪我じゃから儂もほとんど見たことは無い。秋はあまり使わんが、冬を使う手前の作業のようなもので、感覚を奪うんじゃ。花は言葉が少し少ないから言い方を春夏秋冬に分けて使っておるだけじゃ」
「那智さんの怪我って……」
「何、那智にとってはかすり傷じゃよ。じゃが、気が乱れておるから、春の術で眠らせておこうということ……じゃよな?」
「そうですよ。お爺さんの説明でわかった?那智はひどい怪我はないのだけど、骨の一本や二本は持っていかれてると思うの。花ちゃんならすぐ直してくれるから平気よ」
「大怪我じゃん!」
「そうねぇ。でも、あれだけ元気なら回復も早いわ。あの子昔から『たふ』とか言うのだったかしら。航平君はどこも怪我はないようだけど、少し休む?」
「いえ、大丈夫です。いきなりちょっと来いって言われて連れ出されて……あ、これ雪翔の鞄に薬詰め込んでたけど……」
「ありがとう」
中をみると、本当に適当に詰めたのだろう。袋のまま入れてあるが、それがまた、どれだけ急いで居たのかがわかる。
「航平ちゃん、那智さんいつ怪我したの?」
「俺がバイトに行く道にいきなり来て、その時にはもうあんな感じだった。道には誰もいなかったけど、多分見えないようにしてたんだとは思う。浮いてたから……」
「空飛んでたの?」
「そんな感じ?」
「相当急いでおったようじゃの。とにかく、部屋に行くとしようか」
みんなで客間へと行き、座ってお茶を飲むが、その間に昴も着き一冊の本を渡される。
「俺も向こうに行ったんだが、冬弥にこれを渡されて雪翔に渡すように言われたんだ」
「え?」
糸で端を縛ってあるかなり古い本のようだが、パラパラと捲ると星のマークとは別に紙の御札のようなものの書き方が載っていた。
「冬弥さんたちは?」
「無事だ。玲がかなり強くてな、逃げながら結界を張って俺たちをこっちにやった後、冬弥達の所に行ってもらった」
0
お気に入りに追加
70
あなたにおすすめの小説


百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
下宿屋 東風荘 4
浅井 ことは
キャラ文芸
下宿屋 東風荘4
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:..
大きくなった下宿に総勢20人の高校生と大学生が入ることになり、それを手伝いながら夜間の学校に通うようになった雪翔。
天狐の義父に社狐の継母、叔父の社狐の那智に祖父母の溺愛を受け、どんどん甘やかされていくがついに反抗期____!?
ほのぼの美味しいファンタジー。
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:..
表紙・挿絵:深月くるみ様
イラストの無断転用は固くお断りさせて頂いております。
☆マークの話は挿絵入りです。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
便利屋ブルーヘブン、営業中。~そのお困りごと、大天狗と鬼が解決します~
卯崎瑛珠
キャラ文芸
とあるノスタルジックなアーケード商店街にある、小さな便利屋『ブルーヘブン』。
店主の天さんは、実は天狗だ。
もちろん人間のふりをして生きているが、なぜか問題を抱えた人々が、吸い寄せられるようにやってくる。
「どんな依頼も、断らないのがモットーだからな」と言いつつ、今日も誰かを救うのだ。
神通力に、羽団扇。高下駄に……時々伸びる鼻。
仲間にも、実は大妖怪がいたりして。
コワモテ大天狗、妖怪チート!?で、世直しにいざ参らん!
(あ、いえ、ただの便利屋です。)
-----------------------------
ほっこり・じんわり大賞奨励賞作品です。
アルファポリス文庫より、書籍発売中です!
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる