下宿屋 東風荘 5

浅井 ことは

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非日常

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「まぁ、状況はわからねーけど、後から航平を送り届けりゃいいんだろ?」

「玲さん、お願いね?」

「お、おう……大丈夫だ。心配すんな」

と玲に頭を撫でられ、秋彪と玲が道を繋いでくれると言うので任せていたら、狐の国まですぐに着いた。

「社から社ならば奴らでも簡単じゃろうが、狐の国までつなげる力が付いたか……それか冬弥の気が残ってたからそれを利用したかじゃな」

「お爺ちゃん、何があったのかな……また僕の……」

「雪翔は心配しすぎじゃ。冬弥達を信じてやれ」

「うん」

玄関の門を入ると、すぐに京弥と幸、周太郎が駆け付けてきた。

「早く入ってください。お部屋はそのままにしてありますからね」

「幸さん赤ちゃんは?」

「今寝てるの。後で遊んであげてね」

「うん。でも、京弥さん仕事は?」

「連絡を受けて帰ってきました。昴さんもそのうちくると思うんですけど」

「そんなに大事なの?もし、僕が関係してるなら、僕帰らなきゃ」

「待て待て。早るな……とにかく中に入って落ち着くんじゃ。周太郎、雪翔を連れてって行ってくれ。京弥、雪翔に付いててやってくれんか?」

「分かりました」

部屋に連れていかれ、とにかく落ち着けと言われる。

「何があったのかな?」

「連絡が来るまで待とう。なにか本でも読むかい?」

「そんな呑気に!」

「雪翔君、何もわからないのに動いて冬弥の邪魔になるのと、ここから出て足で纏いになるの。どっちが良い?」

「それは……」

「でしょ?ほら、この部屋の本棚にも何冊か増やしておいたんだ。こんなのどう?」

渡された本は陰陽師のマークについての本と書かれていた。

「ね?興味あるでしょ?」

「うん……まだないこと多くって探してたんだ」

「前にも言ってたから集めておいたんだ。私も読んだんだけど、その首にある痣との関係は分からなかったけど、雪翔君なら何かわかるかも知れないねぇ」

「はい……」

「四郎、周太郎にお茶を持ってきてくれるように言ってくれるかい?ここは大丈夫だから」

『畏まりました』

「え?居たんなら出てきてくれたらいいのに」

「基本的には陰から守ってくれる一族だからね。特別な時以外は許してやっておくれ」

その後は周太郎がお茶を二人分持ってきてくれ、いつもと同じように何かあったら呼んでくれと言われる。

本は五行の法則などが書いてあり、木火土金水で星のマークが描かれている。見たところでピンと来ないが、これは覚えておこうと頭に叩き込む。

その後、青龍・白虎・朱雀・玄武と東西南北と色が書いてあり、段々と頭の中がこんがらがってきたので、メモ用紙に書き留める。

「何か分かったかい?」

「いえ……この図形は僕の痣と同じで、この四種類の朱雀とかって洞窟で見たのと同じだから……書いておこうと思って。すぐに覚えられそうにないから」

「そうやって段々覚えていって、謎が解けるといいんだけどね」

「そうだけど、これだけじゃまだ何にも分からなくって」

「何でもすぐには分からないさ。学校の勉強でも繰り返しするだろう?それに近いんじゃないかな?」

「はい」

「焦ることは無いよ?」

「分かってるんですけど、どうして僕にあの人は執着するのかなって思って。それに本人は出てこないなんて卑怯だし」

「ほらほら、イライラしない!雪翔君がイライラすると、中の狐たちにも影響が出るよ?」
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