53 / 76
非日常
.
しおりを挟む
「バーに行きながらって無理じゃないですか?他のことはいいとしてもですが」
「週二日と、忙しい時だけでいいそうだし、こいつ空手できるだろ?そのへんの妖怪共には負けることは無いさ」
「私の許可ねぇ。ちゃんと色々調べはつけたんですよね?」
「裏もとった。報告させようか?」
「良いです。書面にして提出してくださいね?でもどこからそんな話になったんです?」
「俺がたまたま聞いたのが切っ掛けで。雪翔が子になれたのなら、俺もなれるのかって話をしてて。いくつか質問されて答えてたら、旅行中にどんどん話が進んでいったんです。雪翔は優しいから、多分人を攻撃するとかできないと思うんです。俺と二人なら俺が攻撃で雪翔が守りで丁度いいのにって話もしたんですけど……」
「なるほど。分かりました。私が後見になりましょう」
「冬弥さん!」
止めるまもなく、冬弥の指先が航平の額に当てられ、すぐに終わりましたと言われる。
「な、何したの?」
「私と彼の絆を作ったんです。雪翔にもありますよ?今から那智の狐は航平君を守ります。それと……契約したんですね?」
「はい」
「契約って何?」
「俺、歳をとるのを遅くしてもらったんだ」
「え?」
「簡単に言っちゃうと、みんなよりも長生きするって事で、雪翔がこのまま50になっても俺の見た目はこのまま……かな?」
「人じゃなくなるの?」
そう言って冬弥と那智を見ると、そうではないと首を横に振っている。
「人のままです。滅多にそんな許可下ろしませんが、これは昴さんの気ですね。那智が天狐になれば、那智の気で出来ますが、今は昴さんが代わりにと言ったところでしょうか。雪翔にも話そうと思ってたんです。ですが、強要はしません。よく考えて答えを出してください。そのまま寿命を全うするのか、少し私たち側へ来るのか……」
そう言われ、よく考えたらよく生きて70年くらい。その間どんどん自分は老いていくのに、冬弥たちはまだまだ生きる。その為になにかの契約をして航平のように寿命を延ばすのもありなのだろう。
「雪翔、お前はゆっくり考えればいい。航平は自分で決めたんだ」
「うん……でも、人のまま年取らないって……見た目とかどうするの?」
「それは狐に代わりをさせるしかないな」
「那智さんは航平ちゃんを幸せにできるの?本当に子供が欲しかったの?」
責め寄っていると、冬弥に「雪翔!」と大きな声で言われ、その時に自分が泣いていることに気づく。
「ぼ、僕……部屋行ってくる!」
逃げる様に部屋に行き扉を閉め、布団をかぶって何も聞こえない、聞かないと目を瞑る。
途中、紫狐や航平、那智の声がしたが返事をせずに布団の中にうずくまり、声を殺して泣いた。
次の日は起きていかないとまた怒られてしまうと思って、おはようとダイニングへ行く。
「お、おはよう。喉乾いたでしょ?お茶飲む?」
「麦茶……ある?」
「作ってあるわよ。ちょっと待っててね」
栞が氷を入れたグラスに麦茶を入れてくれたのでありがとうと顔をみると、目の下にクマが出来ていた。
「栞さん?寝てないの?」
「眠れなくて。冬弥様は朝の見回りに社に行ったの。お盆前後は妖も沢山出るから、私の社の方にも行ってもらってるんだけど、気にしてたわよ?」
「僕、何も聞いてなかったし、いきなりあんな話されても付いていけなくて……ごめんなさい」
「誰も怒ってないわ。それに、那智様も雪翔君がそう言う反応するってわかってたみたい」
「だったら何で?」
「いつ言っても、雪翔君は同じ反応すると思ったと思うのよ。それに、まだ手続きは完全に終わってないから、すべてが終わってから聞くより良かったと思うの。私も驚いちゃって何も言えなかったもの」
「航平ちゃんの親は術で何とかするの?」
「最終的にはそうなるけど、どうしてなのかは冬弥様に聞く?」
「待ってたら航平ちゃんは話してくれないだろうし、帰ってきたら聞こうかな……」
「今日から下宿も朝から始めるから、私は支度に行くけど……無理しなくていいのよ?」
「僕も行く。逃げてちゃダメなんだよね?」
「そうね。行きましょうか!ほら、笑って笑って!」
「週二日と、忙しい時だけでいいそうだし、こいつ空手できるだろ?そのへんの妖怪共には負けることは無いさ」
「私の許可ねぇ。ちゃんと色々調べはつけたんですよね?」
「裏もとった。報告させようか?」
「良いです。書面にして提出してくださいね?でもどこからそんな話になったんです?」
「俺がたまたま聞いたのが切っ掛けで。雪翔が子になれたのなら、俺もなれるのかって話をしてて。いくつか質問されて答えてたら、旅行中にどんどん話が進んでいったんです。雪翔は優しいから、多分人を攻撃するとかできないと思うんです。俺と二人なら俺が攻撃で雪翔が守りで丁度いいのにって話もしたんですけど……」
「なるほど。分かりました。私が後見になりましょう」
「冬弥さん!」
止めるまもなく、冬弥の指先が航平の額に当てられ、すぐに終わりましたと言われる。
「な、何したの?」
「私と彼の絆を作ったんです。雪翔にもありますよ?今から那智の狐は航平君を守ります。それと……契約したんですね?」
「はい」
「契約って何?」
「俺、歳をとるのを遅くしてもらったんだ」
「え?」
「簡単に言っちゃうと、みんなよりも長生きするって事で、雪翔がこのまま50になっても俺の見た目はこのまま……かな?」
「人じゃなくなるの?」
そう言って冬弥と那智を見ると、そうではないと首を横に振っている。
「人のままです。滅多にそんな許可下ろしませんが、これは昴さんの気ですね。那智が天狐になれば、那智の気で出来ますが、今は昴さんが代わりにと言ったところでしょうか。雪翔にも話そうと思ってたんです。ですが、強要はしません。よく考えて答えを出してください。そのまま寿命を全うするのか、少し私たち側へ来るのか……」
そう言われ、よく考えたらよく生きて70年くらい。その間どんどん自分は老いていくのに、冬弥たちはまだまだ生きる。その為になにかの契約をして航平のように寿命を延ばすのもありなのだろう。
「雪翔、お前はゆっくり考えればいい。航平は自分で決めたんだ」
「うん……でも、人のまま年取らないって……見た目とかどうするの?」
「それは狐に代わりをさせるしかないな」
「那智さんは航平ちゃんを幸せにできるの?本当に子供が欲しかったの?」
責め寄っていると、冬弥に「雪翔!」と大きな声で言われ、その時に自分が泣いていることに気づく。
「ぼ、僕……部屋行ってくる!」
逃げる様に部屋に行き扉を閉め、布団をかぶって何も聞こえない、聞かないと目を瞑る。
途中、紫狐や航平、那智の声がしたが返事をせずに布団の中にうずくまり、声を殺して泣いた。
次の日は起きていかないとまた怒られてしまうと思って、おはようとダイニングへ行く。
「お、おはよう。喉乾いたでしょ?お茶飲む?」
「麦茶……ある?」
「作ってあるわよ。ちょっと待っててね」
栞が氷を入れたグラスに麦茶を入れてくれたのでありがとうと顔をみると、目の下にクマが出来ていた。
「栞さん?寝てないの?」
「眠れなくて。冬弥様は朝の見回りに社に行ったの。お盆前後は妖も沢山出るから、私の社の方にも行ってもらってるんだけど、気にしてたわよ?」
「僕、何も聞いてなかったし、いきなりあんな話されても付いていけなくて……ごめんなさい」
「誰も怒ってないわ。それに、那智様も雪翔君がそう言う反応するってわかってたみたい」
「だったら何で?」
「いつ言っても、雪翔君は同じ反応すると思ったと思うのよ。それに、まだ手続きは完全に終わってないから、すべてが終わってから聞くより良かったと思うの。私も驚いちゃって何も言えなかったもの」
「航平ちゃんの親は術で何とかするの?」
「最終的にはそうなるけど、どうしてなのかは冬弥様に聞く?」
「待ってたら航平ちゃんは話してくれないだろうし、帰ってきたら聞こうかな……」
「今日から下宿も朝から始めるから、私は支度に行くけど……無理しなくていいのよ?」
「僕も行く。逃げてちゃダメなんだよね?」
「そうね。行きましょうか!ほら、笑って笑って!」
0
お気に入りに追加
70
あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
下宿屋 東風荘 4
浅井 ことは
キャラ文芸
下宿屋 東風荘4
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:..
大きくなった下宿に総勢20人の高校生と大学生が入ることになり、それを手伝いながら夜間の学校に通うようになった雪翔。
天狐の義父に社狐の継母、叔父の社狐の那智に祖父母の溺愛を受け、どんどん甘やかされていくがついに反抗期____!?
ほのぼの美味しいファンタジー。
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:..
表紙・挿絵:深月くるみ様
イラストの無断転用は固くお断りさせて頂いております。
☆マークの話は挿絵入りです。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
便利屋ブルーヘブン、営業中。~そのお困りごと、大天狗と鬼が解決します~
卯崎瑛珠
キャラ文芸
とあるノスタルジックなアーケード商店街にある、小さな便利屋『ブルーヘブン』。
店主の天さんは、実は天狗だ。
もちろん人間のふりをして生きているが、なぜか問題を抱えた人々が、吸い寄せられるようにやってくる。
「どんな依頼も、断らないのがモットーだからな」と言いつつ、今日も誰かを救うのだ。
神通力に、羽団扇。高下駄に……時々伸びる鼻。
仲間にも、実は大妖怪がいたりして。
コワモテ大天狗、妖怪チート!?で、世直しにいざ参らん!
(あ、いえ、ただの便利屋です。)
-----------------------------
ほっこり・じんわり大賞奨励賞作品です。
アルファポリス文庫より、書籍発売中です!
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる