下宿屋 東風荘 5

浅井 ことは

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非日常

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ロープウェイを降りてからしばらく歩き、人のいない公園の奥へと進む。

「帰りはここからになります。適当に二手に分かれてくださいね」

「ここから何回くらい?」

「二回でいけると思いますよ?」

言われた通りに二手に別れて纏まっていると、冬弥達の術で、あっという間に社の裏に出た。

「便利だけど、今度は電車に乗りたいな」

「そうですねぇ。屋根に乗る人は置いていきましょうか」

そう言って祖父達や昴を見る。

「儂もか?儂は屋根には乗っておらんぞ?」

「トロッコで乗り出してましたよね?いい歳をして」

「兄上、息子に怒られるとは情けない」

「馬鹿か!儂じゃないわい!屋根に乗っておったのは昴じゃ!」

「お爺ちゃん、乗りたがってたよね?」

「儂にもまだ、姿を消して乗るくらいの力はある!」

「そんなに自信満々に言われても……みんなもう帰っちゃうの?」

「またいつでも会えるわよ」と三人の祖母が言い、帰り支度を始めている。

荷物等もどこから出してきたのか、ワゴンに載せられていて、重次と周太郎が押していた。

「坊ちゃん、またお会いできるのを楽しみにしてます」

「周太郎さん……そんなこと言われたら涙出ちゃうよ。またみんなで遊びに行こうね」

「はい」

近いようで遠い狐の国にみんなが帰る準備が出来たと言っている後ろで、航平と昴が何かを話しており、「またな、坊主!」と肩を叩かれていた。

「ああ、冬弥。あなたちゃんと腕の治療に行かないとダメよ?」

「分かってます。薬だけは今夜取りに行ってきますが、一応人間のお医者さんの所にも行っておきますから心配しないでください」

「ちゃんと治すのよ?」

「母上、心配し過ぎですよ?」

「そう?」

「ええ。昴さん、あとはお願いします」

「任せておけ」

その後は社から続いている洞窟にみんなが入り、狐の国に帰っていく。

「寂しいですか?」

「うん……」

「次は子が生まれたら宴会ですよ?また騒がしくなります」

「そうだよね」

「今日はまだ下宿は休みなので、航平君もうちでご飯食べます?」

「いいんですか?」

「構いませんよ。荷物置いてゆっくりしたら来てくださいね」

「ありがとうございます」

「ねえ、買い出し行くの?」

「行きますよ。商店街で買おうかと思ってるんですけど」

「僕も行く。棟梁にお土産渡したいから寄って欲しいんだけど」

「じゃあ、雪翔も荷物置いて準備してくださいね。栞さんは留守番しててください」

「え?私も行きます」

「疲れたでしょう?お腹の子が疲れたって言ってますよ?」

「だったら洗濯しておきます。二人共洗濯物出してから行ってくださいね」

「はーい」

一旦家に戻り、洗濯物を出してからカバンを下げてお土産を袋に入れる。

「僕準備できたよ!」

「車で行きましょうか。止めるところはありますから」

「冬弥様、日用品もお願いしてもいいですか?家の方のトイレットペーパーとティッシュがもう少ないので」

「洗剤とかあります?」

「前に買った大きなのがまだまだあります」

「安いんですけど、ビッグサイズ過ぎますからねぇ。棚から下ろす時は呼んでくださいよ?」

「はい」
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