下宿屋 東風荘 5

浅井 ことは

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夏休み~狐一族温泉観光ツアー後編~

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頭を抱えたいのは僕だ!とも言えず、なんとか食事を終わらせて、食後のデザートに手をつける。

「みんなどうしてそんなに悩むの?」

「いえ、確かに白龍達の気を消す力は素晴らしいので、たまに私でも気配を感じないこともありますが、今回は特に注意をしてたのでしょうねぇ。キーホルダーにいる時には、存在などわかるのですが、反応が無かったので気にはなっていたんです。使いに出してたんですか」

「うん」

「その男、危険じゃないのか?」

「敵じゃないって感じだけど、何考えてるのかはわかんない」

「とにかく、この旅行が終わったら一度対策を考えましょうか。私も会ってみたいですけどね」

呑気にそんなことを言ってる横で、京弥も腕を組んで何やら考えていたが、冬弥に任せると言っただけで、なにもいい案が浮かばないと言っていた。

「この後はもうロープウェイに乗るの?」と無理やり話を変え、まだもう一つ奥に展示物があると書いてあったので、そこを見てからロープウェイに乗りましょうと言われ、地図を見ながら航平と何が飾ってあるんだろうねと話してデザートを堪能した。

展示はそれ程広い訳ではなく、こじんまりとした部屋で、この鍾乳洞から発見された物がいくつか飾られていただけだった。

お土産屋さんで、鍾乳洞と書いてある箱のお菓子を二種類買い、学校に持って行くお土産は、仲良くしている山本と小池と新田の分だけでいいだろうと、四種類のキーホルダーを買う。

それぞれ、白虎・青龍・朱雀・玄武のキーホルダーを買い、一つずつ袋に入れてもらう。

その横に四神についての小冊子が置いてあり、300円だったのでそれも購入して、帰りの電車で読もうと鞄の中に入れる。

「お土産はそれだけでいいんですか?」

「山本君にも買ったんだけど、棟梁にも渡してもらおうと思ってお菓子買ったよ」

「下宿の子達のは私たちが買いますから。もう一つのお菓子は?」

「これはしーちゃんやひーちゃんで食べる用。白や黒にもあげたいんだ」

「喜ぶと思います。秋彪たちのはどうします?」

「何がいいんだろう?」

「なんでも食べますけど、玲の好みはわからないですからねぇ」

「洞窟クッキーじゃ駄目なの?」

「そうしましょうか。茶菓子にでもするでしょう」

帰りはロープウェイで降りると決まっていたので、二手に別れて順番を待ち乗り込む。

那智・航平・夏樹・冬弥の両親・三郎・周太郎・冬弥・栞。

自分を入れて10人。

先にほかのみんなが乗ったので、次に来たロープウェイに乗り、扉が閉まる。

「高い……」
「見晴らしいいですよねぇ」
「窓は開かんのか?」
「お爺さん大人しくしててくださいよ?」
「誰?揺らすの!」

それぞれ思い思いに口にするが、一番気になるのは前に乗っている昴。

なにかの術を使ったのだろうが、しっかりと屋根の上に乗っている。

「なんで乗り物は屋根なの?落ちないかな?」

「落ちませんよ。普段は浮遊城で暮らしてますから、このくらいの高さは平気なんでしょうね」

「儂も高さは気にならんぞ?」

「お爺ちゃんダメだからね?絶対外に出ないでね?」

「折角なのにか?あっちのロープウェイはこんなに高くないし、すぐに着くからつまらんのじゃが……」

「叔父上、こちらの乗り物は揺れも少ないですね」

「そうじゃな。それにあちらのは小さいからのぅ」

「移動用ですから仕方ありませんよ。それに私達には必要ないでしょう?」

「確かにな」

「でも、街のみんなには必要なんでしょ?」

「そりゃそうだ。歩くより早いからのぅ。電車もできたら良いのじゃが、電気が無くてはな」

「あ、電気なんですけど……冷蔵庫ありましたよね?あれはどうやって使ってるんですか?」

「京弥が持ってきたから私達にはよくわからないの。何か後ろに取り付けてたみたいよ?」

「航平ちゃん、今度見せてもらえば?」

「そうだな。冬弥さん、俺また行けますか?」

「ええ、行けますよ。ただし雪翔の休みに合わせてですけどね」

「じゃあ、次は冬休み?」

「航平ちゃんはお母さんとかお父さんのところに帰らなくていいの?」

「うん、しばらくは帰りたくないって言うより帰れないって感じかな」

遠くを見て話す航平がちょっとさみしそうに見え、それから声はかけなかったが、冬弥の顔を見ると何か知ってるような顔つきをしていた。
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