下宿屋 東風荘 5

浅井 ことは

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夏休み~狐一族温泉観光ツアー後編~

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「いつの時代のだろう?」

「昴さんならわかると思いますけど、まだ後ろの方で騒いでますねぇ」

「何かあるのかな?」

「見に行きます?」

「ここからでも見えないことはないけど、祠?かな?」

「おーい、河童と亀のミイラって書いてあるぞー。雪翔降りてこい」

と昴さんに言われ、ちらっと冬弥を見ると笑っていたので「待ってて」と声をかける。

「周太郎さんいい?」

「はい。背に乗ってください」

おんぶして貰ってすぐ横の階段を降りてもらうと、祠の前でしゃがんでくれる。

「えー?ほんとにミイラなのかな?ただの木にしか見えないよ?」

祠の周りの石畳には五円や十円、百円などの小銭が沢山置かれ、通る人みんなが拝んでいく。

「立て札も無いし、なにかのご利益あるのかな……って、お爺ちゃん達まで拝んでどうするの!」

「みんなしとるだろう?健康を祈っておるが、違うのか?」

「ち、違うと思う」

お爺ちゃん達に隠れて見えなかったが、おばあちゃん達も小銭を置いて手を合わせている。

「元気な赤ちゃんが生まれますように」などと、安産祈願しているので、それも違う気がすると、周太郎に車椅子まで戻ってもらい、写真を撮ってから次に進むことにした。

「待たなくていいの?」

「何かのミイラらしきものに、安産祈願とかしてて。うん、放っておいたほうがいいと思う」

「うちの両親までって恥ずかしいわ……」

「まぁまぁ、気持ちだと思いますから。次どうします? 」

二手にわかれた入り口を見て、看板には『玄武』『青龍と書かれている』

「途中で合流できたよね?」

「地図ではどちら周りでも二つ見ることができますからねぇ。その先に喫茶店とお土産屋さんに、食堂もあるみたいです。みんなとはそこで待ち合わせにしましょうか」

「うん。どっちも見られるんだったらこのまま左から進んでもいい?」

「では行きましょうか」

そのまま青龍から見て回ることにし、中に入るとやはり青を基調にライトアップされている。

「綺麗ねぇ、幻想的ってこういう感じなのかしら」

「そうですねぇ。栞さん寒くないです?」

「はい。それよりもあそこの隅にある小さな鍾乳石、何か見たことありません?」

「これですか?」

「なんか宇宙人みたい……」

「あ!前に雪翔が見ていた映画の!」

「エイリアン?」

「それです!似てませんか?こう、頭がニョキっと後ろに長いところとか」

「そう言われたらそう見えるけど、航平ちゃんわかる?」

「角度によっては。緑のライトの時はそれっぽいな。写真撮れるかな?」

と、携帯のカメラで悪戦苦闘している間に、周太郎に支えてもらって乗り出して見る。

「猿っぽくない?」

「ぼっちゃん、私にはそのエイリアンが分からないのですが、カッパにも見えませんか?」

「なんにでも見えるのがある意味すごいかも」
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