下宿屋 東風荘 5

浅井 ことは

文字の大きさ
上 下
43 / 76
夏休み~狐一族温泉観光ツアー後編~

.

しおりを挟む
エレベーターが開くと、外とは違いヒヤッとした空気に包まれる。

「寒い位だね……」

「そうですね。あかりも最小限ですし、皆さんまだのようですが待たれますか?」

「うん」

「あ、看板あるよ?」

そう言って看板を見ると、一周するのに大体15分程度と書いてあり、その奥の鍾乳洞は10分と書いてあった。

「そんなに大きくないのかな?」

「歩いて回ればその程度ということだと思いますよ?ここから少し見えますが、明かりの色が青・赤・黄色・緑・紫と変わってますから、それを楽しむ人は長い時間いると思います」

「どこ?」

指を指してもらった方を見ると、確かに色がゆっくりと変わっていってる。

「お待たせしましたか?」

「大丈夫。ね、見て見て!」

冬弥に色が変わっていくところを見せると、不思議な感じですねぇと、興味津々のようだった。

もちろん、男集がそれに黙っているはずもなく、行くぞ!と急かしてくる。

「では行きましょうか」

「私も雪翔君と同じ道で行くわ。滑るから危ないし」

「そうですねぇ。母上たちはどうされます?」

「折角だから私達は降りてみてくるわ。それにしても冬のような寒さね」

那智の母親が上着を持ってきたら良かったと言っている横で、着物は暖かいですよ?とおすすめしているお婆ちゃん達も強者だと思いながら、後で真ん中で落ち合うことを告げてスロープで進んでみていく。

最初に書いてある看板は『朱雀』

「朱雀だって。どんなんだろう?」

「赤が基調の様ですね。それにしても石筍が凄いです」

「あ、なにか小さいのがある。隙間にもできてるんだ」

そこも赤を貴重にうすいピンクから白にまで色が変わりとても綺麗だった。

「石筍の赤ちゃんみたい」

まだ小さいものを見て、そう言い先に進むと、大きく区切られたところに朱雀と書かれていた。

真ん中を赤く照らし、その周りは色とりどりに照明が当てられ、動き出すかのように翼を広げた鳳凰が一枚の絵のようにかかっている。

「凄い、僕本でしか見たことないよ……」

「私もです。これはちょっと鍾乳洞の水滴で自然に作られたように見えますが違いますね」

「違うって?でも彫った感じないよ?」

「人間が見たら自然にできたとしか思えないでしょうが、多分昔の……何でしたっけ?遺跡みたいなところに書かれてた絵とかあるじゃないですか。あのような時代に彫られたんだと思いますよ?それが、水滴で長年上手く当たったのか計算されたのか分かりませんけど、周りと融合したとしか思えませんねぇ」

「冬弥様、そんな事出来るんですか?」

「出来ると思いますよ?こういったことに長けた力は雪翔や航平君辺りが近いと思います」

良く見ると、ちゃんと嘴や目もあり、広げた翼は羽の1枚1枚までよく見るとわかる。
言われると『彫った』と言った方がしっくりくるが、遺跡では絵が多少残っているだけで、本で見た記憶と合わせても、こちらの方がずっとリアルに見える。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

下宿屋 東風荘 4

浅井 ことは
キャラ文芸
下宿屋 東風荘4 ☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:.. 大きくなった下宿に総勢20人の高校生と大学生が入ることになり、それを手伝いながら夜間の学校に通うようになった雪翔。 天狐の義父に社狐の継母、叔父の社狐の那智に祖父母の溺愛を受け、どんどん甘やかされていくがついに反抗期____!? ほのぼの美味しいファンタジー。 ☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:.. 表紙・挿絵:深月くるみ様 イラストの無断転用は固くお断りさせて頂いております。 ☆マークの話は挿絵入りです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

便利屋ブルーヘブン、営業中。~そのお困りごと、大天狗と鬼が解決します~

卯崎瑛珠
キャラ文芸
とあるノスタルジックなアーケード商店街にある、小さな便利屋『ブルーヘブン』。 店主の天さんは、実は天狗だ。 もちろん人間のふりをして生きているが、なぜか問題を抱えた人々が、吸い寄せられるようにやってくる。 「どんな依頼も、断らないのがモットーだからな」と言いつつ、今日も誰かを救うのだ。 神通力に、羽団扇。高下駄に……時々伸びる鼻。 仲間にも、実は大妖怪がいたりして。 コワモテ大天狗、妖怪チート!?で、世直しにいざ参らん! (あ、いえ、ただの便利屋です。) ----------------------------- ほっこり・じんわり大賞奨励賞作品です。 アルファポリス文庫より、書籍発売中です!

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

処理中です...