下宿屋 東風荘 5

浅井 ことは

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夏休み~狐一族温泉観光ツアー後編~

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荷物はみんなが分けて持ってくれ、先にいらない荷物だけ何匹かの狐に渡し、家まで運んでもらうという。

「航平ちゃん、トロッコ乗ったことある?」

「無いよ。山頂まで行けるって書いてあったし、どのくらい時間かかるんだろうね?」

パンフレットを見ると30分と書いてあったので、そんなに高いところまでは行かないのだろうと予想して、チェックアウトに向かう。

「早乙女様、またのご利用お待ちしております」と受付の人に言われ、ゆっくり歩いてトロッコの発着場まで行く。

「あれ?看板みて……鍾乳洞って書いてあるよ?」

「ホントだ。ちょっと待って……」

航平がスマホで検索してくれ、中は車椅子でも進めるようになっていると書かれていたので、みんなに行きたいと告げる。

「洞窟にか?」

「鍾乳洞だってば。お爺ちゃん行こうよー」

「そうじゃな。じゃが、まずは列車じゃ。儂も楽しみでのぅ」

バスでトロッコ乗り場の近くまで行き、歩いて行くと、既に列車は停まっていてスマホで写真を撮る。

「雪翔、写真撮ろうか?」

「一緒に撮ろうよ」

そう言って、車椅子を押してくれていた周太郎にボタンの押し方を教え、一緒に撮ってもらう。

看板の前で団体の人たちが記念写真を撮っているのを見て、那智さんにみんなは写真に映ることが出来るのかと聞く。

「写るように俺達が気を流せばいいだけだが、あれか?」

「うん、折角三家族で来たんだし、駄目かな?」

「分かった。だったら、撮ってもらえるみたいだから頼んでくるか?」

「僕行ってくる!」

航平と一緒に、人数を言うとすぐに撮れるというのでみんなを手招きする。

「こちらで撮ります。お帰りの際に受付でお渡しできますので、枚数とお名前を書いてもらえますか?」

言われたとおりに早乙女と書いて、何枚いる?と聞くとみんなが欲しがったので、各家族と合わせて10枚頼む。

「では並んでください。車椅子のお坊ちゃんが真ん中と思って左右と後ろに……はい、では撮りまーす」

カシャッ!

「ありがとうございました。ではトロッコ列車の旅をお楽しみ下さい」

チケットを団体で買い、来た列車に乗る時に、周太郎と三郎が手伝ってくれ、窓際に座る。

「窓にガラスがないよ?この森を抜けるんだよね?」

「そんなにはしゃがないでも、自然と列車は逃げませんよ?」

「でも、お爺ちゃんたちのがすごいよ?」

見ると既に兄弟でこんな箱が山を登るのか!と栞の父親まで巻き込んで騒いでいる。

そんな中、意外にも京弥と夏樹も運転席の前に陣取り、運転席を覗き込んでいる。

「まぁ、団体なので私たちだけだってことが救いですよねぇ」

「え?うん。後ろも騒いでるけどね」と栞たち女性陣も見る。

「こんなに皆が集まって楽しむのは初めてなので、私も嬉しくて仕方ないんですよ?」

「毎年来れたらいいのにね」

「毎年コンテスト出ます?」

「それは嫌だよ。恥ずかしいもん」
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