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夏休み~狐一族温泉観光ツアー後編~
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部屋に入るとテーブルの上にお膳が用意されていて、一つ椅子がどけてあった場所に車椅子で入る。
「冬弥さん大丈夫?」
「ええ。左腕で助かりました。それにしても朝餉なのに豪華ですねぇ」
「これも雪翔と航平君のお陰ねぇ」
「俺はただ出ただけなので。凄いのは雪翔ですよ」
「私が用意したスーツ着たらもっと可愛かったのに!」
「え?やだ。だってバァバの服って全部フリフリのなんか付いてるんだもん」
「まっ!」
「だったら着物仕立れば良かったかしら」
それぞれ好きなことを言っているが、どうしてもお風呂での出来事が頭から離れない。
「ほら、魚も炙らないと!雪翔君聞いてる?」
「あ、うん。お味噌汁もお鍋みたいなので出てくるんだね」
「こりゃ!翡翠、デザートはいらんのか?」
ご飯に手を伸ばしていた翡翠に昴が怒り、翡翠は「むむむー!」と悔しそうにしている。
「しーちゃんは?」
「影に戻しました。あまりにもダンスの話がうるさいので、中で桜狐にでも怒られてると思いますよ?」
「ちょっと可愛そうだけど……」
「いいんですよ。それより今度は焦げますよ?」
「あー!何で微妙な火加減なのこれ」
「このくらいで丁度いいんじゃないか?」
「夏樹さんの綺麗なきつね色になってる……」
「飯だけは俺はうるさいぞ?」
「そうなの?」
「兄貴がうるさいのは桜餅だけだろ?」
「まぁな。あれだけはこっちで売ってるものの方が美味い。また送ってくれ」
「買って帰れ!」
「ねぇ、狙われてるよ?翡翠に……」
「あ!デザートは最後だチビ!」
「むぅ!」
食にうるさいのは翡翠も同じようで、美味しそうなものが出てくると、必ず影から出てくるようになった。
「今日はみんなで山に行きますけど、栞さん平気です?」
「山登りじゃないので。トロッコ列車でしたっけ?私初めてです」
「どんなのかな?」
「我々も初めてですからねぇ」
早く食べて、もう一度温泉に入ってから行くことになり、朝入ったからと部屋で待ちながら誰もいないことを確認して、白と黒に出てきてもらう。
「ねぇ、あの男の人まだいる?」
「もう気配は感じません。あれも式神だったようです」
「白達は木から出てきたけど、式なの?」
「主の気を練って作られたので、式と言えば式です。普段は人形にも昔のような形にもなれますが、まだ力が弱いので、この中にいて力を貯めておくのが楽なのです」
「白は守りで黒は攻撃?」
「強いていえば、金と銀もです。あれらは狐ですが、もう少し大きくなればどんな形にでも変化出来るかと。後は主が術を使って自分の替え玉を使ったり、遠見をしたりできると良いのですが……」
「黒はその方法知らない?」
「こればかりは。師がいればいいのですが」
「あの人が言ってたのはこのことかな?」
「この旅が終わるまでは我らでお守りしますので」
「うん」
扉の前がザワザワとしていたので、みんな帰ってきたんだと白と黒を戻し、鞄に荷物を詰める。
「いいお湯でした」
「京弥、お前貧弱だと思ったら以外に鍛えてたんだな」
「当たり前です。これでも役場で毎日鍛錬してますよ?そう言う夏樹こそ太ったんじゃ?」
「そ、そんなことは無い……筈だ!」
「雪翔、荷物詰めたか?」
昴に返すとばかりに翡翠をヌッと出され、一緒に行ってたんだと今更ながらに思う。
「ひーちゃん、いい子にしてた?」
「してた!ひーちゃんいい子!」
「泳いでたけどな?」
「やっぱり……」
「薬飲みました?ちゃんと飲まないとだめですよ?」
「僕は飲んだけど、冬弥さん飲んだの?」
「一応飲みました。帰ったら天満の薬貰いに行ってきます。人外の薬のが効き目はいいので」
「僕も行きたいな。奏太さんとも話したいし」
「帰ったら行きましょうか。連絡しておきますので」
「やった!」
「冬弥さん大丈夫?」
「ええ。左腕で助かりました。それにしても朝餉なのに豪華ですねぇ」
「これも雪翔と航平君のお陰ねぇ」
「俺はただ出ただけなので。凄いのは雪翔ですよ」
「私が用意したスーツ着たらもっと可愛かったのに!」
「え?やだ。だってバァバの服って全部フリフリのなんか付いてるんだもん」
「まっ!」
「だったら着物仕立れば良かったかしら」
それぞれ好きなことを言っているが、どうしてもお風呂での出来事が頭から離れない。
「ほら、魚も炙らないと!雪翔君聞いてる?」
「あ、うん。お味噌汁もお鍋みたいなので出てくるんだね」
「こりゃ!翡翠、デザートはいらんのか?」
ご飯に手を伸ばしていた翡翠に昴が怒り、翡翠は「むむむー!」と悔しそうにしている。
「しーちゃんは?」
「影に戻しました。あまりにもダンスの話がうるさいので、中で桜狐にでも怒られてると思いますよ?」
「ちょっと可愛そうだけど……」
「いいんですよ。それより今度は焦げますよ?」
「あー!何で微妙な火加減なのこれ」
「このくらいで丁度いいんじゃないか?」
「夏樹さんの綺麗なきつね色になってる……」
「飯だけは俺はうるさいぞ?」
「そうなの?」
「兄貴がうるさいのは桜餅だけだろ?」
「まぁな。あれだけはこっちで売ってるものの方が美味い。また送ってくれ」
「買って帰れ!」
「ねぇ、狙われてるよ?翡翠に……」
「あ!デザートは最後だチビ!」
「むぅ!」
食にうるさいのは翡翠も同じようで、美味しそうなものが出てくると、必ず影から出てくるようになった。
「今日はみんなで山に行きますけど、栞さん平気です?」
「山登りじゃないので。トロッコ列車でしたっけ?私初めてです」
「どんなのかな?」
「我々も初めてですからねぇ」
早く食べて、もう一度温泉に入ってから行くことになり、朝入ったからと部屋で待ちながら誰もいないことを確認して、白と黒に出てきてもらう。
「ねぇ、あの男の人まだいる?」
「もう気配は感じません。あれも式神だったようです」
「白達は木から出てきたけど、式なの?」
「主の気を練って作られたので、式と言えば式です。普段は人形にも昔のような形にもなれますが、まだ力が弱いので、この中にいて力を貯めておくのが楽なのです」
「白は守りで黒は攻撃?」
「強いていえば、金と銀もです。あれらは狐ですが、もう少し大きくなればどんな形にでも変化出来るかと。後は主が術を使って自分の替え玉を使ったり、遠見をしたりできると良いのですが……」
「黒はその方法知らない?」
「こればかりは。師がいればいいのですが」
「あの人が言ってたのはこのことかな?」
「この旅が終わるまでは我らでお守りしますので」
「うん」
扉の前がザワザワとしていたので、みんな帰ってきたんだと白と黒を戻し、鞄に荷物を詰める。
「いいお湯でした」
「京弥、お前貧弱だと思ったら以外に鍛えてたんだな」
「当たり前です。これでも役場で毎日鍛錬してますよ?そう言う夏樹こそ太ったんじゃ?」
「そ、そんなことは無い……筈だ!」
「雪翔、荷物詰めたか?」
昴に返すとばかりに翡翠をヌッと出され、一緒に行ってたんだと今更ながらに思う。
「ひーちゃん、いい子にしてた?」
「してた!ひーちゃんいい子!」
「泳いでたけどな?」
「やっぱり……」
「薬飲みました?ちゃんと飲まないとだめですよ?」
「僕は飲んだけど、冬弥さん飲んだの?」
「一応飲みました。帰ったら天満の薬貰いに行ってきます。人外の薬のが効き目はいいので」
「僕も行きたいな。奏太さんとも話したいし」
「帰ったら行きましょうか。連絡しておきますので」
「やった!」
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