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夏休み~狐一族温泉観光ツアー後編~
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朝起きるとまだみんな寝ており、仕方ないと一人で風呂場へと向かう。
何とか色んなところに掴まって露天風呂まで行くと、朝日がまだ登りきっていなかったので、急いでかけ湯をして湯船に入り、のんびりと太陽が登っていくのを見る。
「綺麗ですね」
「誰!?」
「私を覚えていませんか?」
「あ、バス停の……なんで服着てここにいるの?それもここ外だよ?」
「ちょっと術を使った迄です」
「術……?僕に何か用ですか!?」
「私もあなたと同じ陰陽師です。そんなに警戒しないでください。ただ、話がしたくてきただけなので」
「ぼ、僕はなんにも話すことない!」
そう言って風呂を出ようとするも、何かされたのか体が動かない。
「ちょっとだけ話を聞いてくれたら解きますよ。君、まだ式たちを使いこなせていないでしょう?私が教えて差し上げると言ったらどうします?」
「僕は今のままでいい」
「おや?そうですか?ほかの狐の皆さんのことも守れるようになりますよ?今みたいに助けてもらってばかりではなくね?」
「それは……」
図星だった。
何も出来ていない。
いつも周りに助けられ、大切にされている事は言われなくとも自分でよくわかっている。
「バスの事故。あなたがしたの?」
「あれは本当に偶然なんですよ?私も巻き込まれましたし」
「冬弥さん見たってあなた?」
「そうです。嘘はいけませんからね」
「僕に用があるんでしょ?だったら冬弥さん達を巻き込まないで欲しい」
「おやおや、思っていたよりもはっきり物を言う子だ。余計に気に入りました。いつか君は私を頼ってくると思いますよ?それも自然な形でまた会うと思います。では……」
「ちょっと!」
下は崖になっているのに、ふわりと落ちるというよりは降りていってしまった。
「あ、動く……」
ガラガラっと音がして、坊ちゃん!と三郎と四郎が入ってくる。
「お怪我は?」
「無い……体が動かなくなる術をかけられたけど、今は動ける……」
周りを全部見て四郎が居ないと言ったが、あれは本人なのだろうか?という疑問が残った。
降りたところは見たが、消えるように居なくなった。
本で読んだ式神が本人に化けていたなら、術を消せばいいだけだ。
「坊ちゃん?」
「大丈夫。せっかくだけどもう出るよ……」
「何か言われたのですか?」
「うん……でも少し考えさせて。みんなには言わないで欲しいんだ。考えがまとまったらちゃんと僕から話すから」
「分かりました。ですが今日のお出かけは……」
「平気だと思う。なんとなくだけど、そんな気がするんだ。もうご飯だよね?戻ろうか」
風呂から出て廊下を車椅子で進んでいると、栞が既に着替えて呼びに来るところだった。
「お風呂って聞いて来たの。ひとりで平気だった?」
「三郎さんたちが来てくれたから平気。翡翠たちは?」
「翡翠ちゃんはいい子にしてるわよ?昴様が愚図ったら朝ごはんのデザートあげないって言ったら泣き止んで、紫狐ちゃんは航平君にベッタリね。好きになっちゃったのかしら?」
「えー!僕の航平ちゃんなのにっ!」
「二人共二人で一人って感じよね?早く行きましょう、ご飯なくなっちゃうわよ?」
「ご飯何かな?」
「まだ見てないの。やっぱり冬弥様も腕が動かしにくいみたいで、手伝わないといけないし」
「僕もできることは手伝うからね?」
「ありがと!」
何とか色んなところに掴まって露天風呂まで行くと、朝日がまだ登りきっていなかったので、急いでかけ湯をして湯船に入り、のんびりと太陽が登っていくのを見る。
「綺麗ですね」
「誰!?」
「私を覚えていませんか?」
「あ、バス停の……なんで服着てここにいるの?それもここ外だよ?」
「ちょっと術を使った迄です」
「術……?僕に何か用ですか!?」
「私もあなたと同じ陰陽師です。そんなに警戒しないでください。ただ、話がしたくてきただけなので」
「ぼ、僕はなんにも話すことない!」
そう言って風呂を出ようとするも、何かされたのか体が動かない。
「ちょっとだけ話を聞いてくれたら解きますよ。君、まだ式たちを使いこなせていないでしょう?私が教えて差し上げると言ったらどうします?」
「僕は今のままでいい」
「おや?そうですか?ほかの狐の皆さんのことも守れるようになりますよ?今みたいに助けてもらってばかりではなくね?」
「それは……」
図星だった。
何も出来ていない。
いつも周りに助けられ、大切にされている事は言われなくとも自分でよくわかっている。
「バスの事故。あなたがしたの?」
「あれは本当に偶然なんですよ?私も巻き込まれましたし」
「冬弥さん見たってあなた?」
「そうです。嘘はいけませんからね」
「僕に用があるんでしょ?だったら冬弥さん達を巻き込まないで欲しい」
「おやおや、思っていたよりもはっきり物を言う子だ。余計に気に入りました。いつか君は私を頼ってくると思いますよ?それも自然な形でまた会うと思います。では……」
「ちょっと!」
下は崖になっているのに、ふわりと落ちるというよりは降りていってしまった。
「あ、動く……」
ガラガラっと音がして、坊ちゃん!と三郎と四郎が入ってくる。
「お怪我は?」
「無い……体が動かなくなる術をかけられたけど、今は動ける……」
周りを全部見て四郎が居ないと言ったが、あれは本人なのだろうか?という疑問が残った。
降りたところは見たが、消えるように居なくなった。
本で読んだ式神が本人に化けていたなら、術を消せばいいだけだ。
「坊ちゃん?」
「大丈夫。せっかくだけどもう出るよ……」
「何か言われたのですか?」
「うん……でも少し考えさせて。みんなには言わないで欲しいんだ。考えがまとまったらちゃんと僕から話すから」
「分かりました。ですが今日のお出かけは……」
「平気だと思う。なんとなくだけど、そんな気がするんだ。もうご飯だよね?戻ろうか」
風呂から出て廊下を車椅子で進んでいると、栞が既に着替えて呼びに来るところだった。
「お風呂って聞いて来たの。ひとりで平気だった?」
「三郎さんたちが来てくれたから平気。翡翠たちは?」
「翡翠ちゃんはいい子にしてるわよ?昴様が愚図ったら朝ごはんのデザートあげないって言ったら泣き止んで、紫狐ちゃんは航平君にベッタリね。好きになっちゃったのかしら?」
「えー!僕の航平ちゃんなのにっ!」
「二人共二人で一人って感じよね?早く行きましょう、ご飯なくなっちゃうわよ?」
「ご飯何かな?」
「まだ見てないの。やっぱり冬弥様も腕が動かしにくいみたいで、手伝わないといけないし」
「僕もできることは手伝うからね?」
「ありがと!」
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