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夏休み~狐一族温泉観光ツアー前編~
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待っていたらすぐに祖父母と昴に航平が来て、他のみんなは旅館で待っているとのことだった。
「栞さんは大丈夫?」
「大丈夫ですよ。あちらの御両親がいらしてよかったわ。雪翔は怪我はないわね?」
「うん、白たちが守ってくれたんだ。でも……」
「何、雪翔のせいじゃないわい。冬弥も人助けの負傷じゃろう?なら気にせんでもいい」
「お爺ちゃん……」
「あの、これどうぞ」
航平が那智にコーヒーを渡し、お茶やコーヒーを配ってからみんなで飲んで待ち、呼ばれて中へ行くと、上半身裸にジーンズ姿の冬弥が、腕を包帯で巻かれて座っていた。
「いやぁ、傷は深かったんですが、止血がよかったのと運も良かったです。大きな血管は切れてませんでしたし、縫合のみで済みました。但し、10日は動かさないでくださいね。一週間後の抜糸が済むまではダメです。お薬出しておきますので後は地元の病院で大丈夫ですよ」
ありがとうございましたとお礼を言って、航平の連絡で持ってきたのか、祖母がシャツを冬弥に渡して着せている。
「車は借りてきた。大型だからみんな乗れるだろ」
「昴さんが運転してきたんですか?」
「俺に出来るわけないだろう?この坊主だ!」
「航平ちゃん?」
「免許は持ってるから。それにこれ、八人乗りの乗用車だから俺でも運転できるよ」
「良かったです。昴さんの運転では絶対に事故しますから」
「おいおい、信用ないなぁ。あ、嫁さんだいぶ堪えたみたいだ。早く帰ってやらないとな」
「あ!これ貰ってたんだ」
そう言って冬弥にサファリパークの人からもらった名刺と連絡先の紙を渡す。
「那智、電話しておいてください。あの麻酔というので眠くて仕方ありません」
「腕だけなのに?」
「私は効きがいいんですよ」
冬弥が目を瞑っている間に、那智が電話して病院名と怪我の診断書のことなどを話、旅館名を言っていた。
旅館について部屋に行くとみんな揃っていて、夕飯はまだだと呑気に京弥が言っている横で、栞がしくしくと泣いていた。
「冬弥様!大丈夫なのですか!?」
「大丈夫です。心配をかけました。しばらく動かしてはいけないそうなんですが、縫われてしまった以上は医者にかからないといけません。傷跡は薄くなるそうです」
「一体何があったのですか?那智、夏樹、重次!あなた方がついていながら何をしていたのです!」
「バァバ、怒らないで……乗ってたバスが故障したんだ。冬弥さんは車に残された運転手さんを助けて……那智さん達は僕達のこと守ってくれたの」
「雪翔、だからと言って……」
「まぁまぁまぁ、これだけで済んだんだ。奥さんもそんなに怒らないでください。栞さんは落ち着いて。俺も一緒に行かなかったのにも責任があるんで……ね?」
「天狐様にそう言われたら何も言えないじゃないですか!」
祖母がまくし立てている隣で、珍しく祖父がぼーっとしており、「ジイジ?」と声をかける。
「あ?あぁ。さ、みんな料理が来るよ、座ろうか」
「そうですよ。周太郎たちもほら!」
祖母が言うとみんなが従うので、素直に座ったが、みんなくらい顔をしている。
「栞さんは大丈夫?」
「大丈夫ですよ。あちらの御両親がいらしてよかったわ。雪翔は怪我はないわね?」
「うん、白たちが守ってくれたんだ。でも……」
「何、雪翔のせいじゃないわい。冬弥も人助けの負傷じゃろう?なら気にせんでもいい」
「お爺ちゃん……」
「あの、これどうぞ」
航平が那智にコーヒーを渡し、お茶やコーヒーを配ってからみんなで飲んで待ち、呼ばれて中へ行くと、上半身裸にジーンズ姿の冬弥が、腕を包帯で巻かれて座っていた。
「いやぁ、傷は深かったんですが、止血がよかったのと運も良かったです。大きな血管は切れてませんでしたし、縫合のみで済みました。但し、10日は動かさないでくださいね。一週間後の抜糸が済むまではダメです。お薬出しておきますので後は地元の病院で大丈夫ですよ」
ありがとうございましたとお礼を言って、航平の連絡で持ってきたのか、祖母がシャツを冬弥に渡して着せている。
「車は借りてきた。大型だからみんな乗れるだろ」
「昴さんが運転してきたんですか?」
「俺に出来るわけないだろう?この坊主だ!」
「航平ちゃん?」
「免許は持ってるから。それにこれ、八人乗りの乗用車だから俺でも運転できるよ」
「良かったです。昴さんの運転では絶対に事故しますから」
「おいおい、信用ないなぁ。あ、嫁さんだいぶ堪えたみたいだ。早く帰ってやらないとな」
「あ!これ貰ってたんだ」
そう言って冬弥にサファリパークの人からもらった名刺と連絡先の紙を渡す。
「那智、電話しておいてください。あの麻酔というので眠くて仕方ありません」
「腕だけなのに?」
「私は効きがいいんですよ」
冬弥が目を瞑っている間に、那智が電話して病院名と怪我の診断書のことなどを話、旅館名を言っていた。
旅館について部屋に行くとみんな揃っていて、夕飯はまだだと呑気に京弥が言っている横で、栞がしくしくと泣いていた。
「冬弥様!大丈夫なのですか!?」
「大丈夫です。心配をかけました。しばらく動かしてはいけないそうなんですが、縫われてしまった以上は医者にかからないといけません。傷跡は薄くなるそうです」
「一体何があったのですか?那智、夏樹、重次!あなた方がついていながら何をしていたのです!」
「バァバ、怒らないで……乗ってたバスが故障したんだ。冬弥さんは車に残された運転手さんを助けて……那智さん達は僕達のこと守ってくれたの」
「雪翔、だからと言って……」
「まぁまぁまぁ、これだけで済んだんだ。奥さんもそんなに怒らないでください。栞さんは落ち着いて。俺も一緒に行かなかったのにも責任があるんで……ね?」
「天狐様にそう言われたら何も言えないじゃないですか!」
祖母がまくし立てている隣で、珍しく祖父がぼーっとしており、「ジイジ?」と声をかける。
「あ?あぁ。さ、みんな料理が来るよ、座ろうか」
「そうですよ。周太郎たちもほら!」
祖母が言うとみんなが従うので、素直に座ったが、みんなくらい顔をしている。
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