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夏休み~狐一族温泉観光ツアー前編~
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車椅子から降りて、ついグスグスとしていると、京弥に「冬弥は大丈夫だから椅子に座って」と言われる。
「やだ。ひーちゃんが頑張ってるから僕もここにいる!」
「全く我儘ですねぇ雪翔は。そこが可愛いんですけど。では、お水をください」
「はい!」
ストローがないので少しずつ口に入れて飲ませ、冬弥も心配だが翡翠もそんなに力を使ったことがないのに大丈夫なのかと心配になる。
「那智さん、金と銀出してもいい?」
「あいつらが姿を消せるならな?」
出てきてと言うと、ポポンと二人が出てきてこちらを見てくるので、冬弥を治している翡翠を手伝って欲しいと頼む。
「僕達では治癒は無理だよ?あれはひーちゃんにしか出来ないんだ」
「白と黒も出来ない。兄ちゃんも僕も、人形としては姿を消して側にいて手伝うことが出来るけど……主の命に背いてはないんだけど、ごめんなさい」
数人の足音が聞こえたので一度翡翠を戻し、振り返ると夏樹と航平、添乗員が二人こちらに掛けてきた。
「あの!僕のお父さんが怪我して、それで、血が止まらなくって……」
「これは酷いな。すぐに救急車が着きます。乗られる方はそばにいて下さい。ほかのご家族の方には車を用意させていただきます」
「被害はどのくらいでしたか?」
「喋っちゃダメだよ!」
「貴方と、今意識のない運転手だけです。爆発の際に男性が運転手を下ろしているのを見たという方がいるので……貴方でしたか」
「見られていた?」
「ええ、男性のお客様がそう仰ってましたので」
みんなが目と目を合わせる中、救急車のサイレンが聞こえ、息子だからと自分と那智が乗っていくことになった。
「航平、みんなへの説明は任せた。上手くやってくれよ?兄貴達じゃ心許ないからな。後、栞には動揺させないようにして欲しい」
「はい。でも奥さんだから……」
「みんながいるから平気だろうが、妊婦ってこと忘れるなよ?」
「分かりました」
救急車に乗り込み、何かあったら連絡すると言って後ろの扉が閉まる。
救急車の中で処置をしてもらっているのを見ながら、隊員の人に聞かれたことを答えていく。
《 冬弥さん見た人ってもしかして……》
《 今、黒龍が追ってます。多分間違いないかと》
《 無理しないでね?二人共》
《 御意》
「……雪翔」
「え?何?」
「何をポーっとしてるんだ?」
「那智さん、輸血とかってどうなるのかなって思って」
「それは問題ない。それより俺たち以外にいなかったのに、冬弥を見たってやつが気になるよな」
「う、うん……」
「後にしましょう。これは多分縫われますねぇ。普段ならなんとか出来たんですが、処置が遅れました。栞さんに叱られてしまいます。それと雪翔」
「どうしたの?痛い?」
「お父さんではなくて、パ・パです!」
「もう!今そんなこと言ってる時じゃない……あ、LINEだ」
「誰だ?」
「航平ちゃん。みんなと合流できたって。病院の名前だけ入れておくね」
コソっと返事だけ送り返して、病院につくのを待つ。
前にバス停で会った男の人のことを皆に言うか言わないかで迷っているうちに病院につき、待合室で待たされる。
「やだ。ひーちゃんが頑張ってるから僕もここにいる!」
「全く我儘ですねぇ雪翔は。そこが可愛いんですけど。では、お水をください」
「はい!」
ストローがないので少しずつ口に入れて飲ませ、冬弥も心配だが翡翠もそんなに力を使ったことがないのに大丈夫なのかと心配になる。
「那智さん、金と銀出してもいい?」
「あいつらが姿を消せるならな?」
出てきてと言うと、ポポンと二人が出てきてこちらを見てくるので、冬弥を治している翡翠を手伝って欲しいと頼む。
「僕達では治癒は無理だよ?あれはひーちゃんにしか出来ないんだ」
「白と黒も出来ない。兄ちゃんも僕も、人形としては姿を消して側にいて手伝うことが出来るけど……主の命に背いてはないんだけど、ごめんなさい」
数人の足音が聞こえたので一度翡翠を戻し、振り返ると夏樹と航平、添乗員が二人こちらに掛けてきた。
「あの!僕のお父さんが怪我して、それで、血が止まらなくって……」
「これは酷いな。すぐに救急車が着きます。乗られる方はそばにいて下さい。ほかのご家族の方には車を用意させていただきます」
「被害はどのくらいでしたか?」
「喋っちゃダメだよ!」
「貴方と、今意識のない運転手だけです。爆発の際に男性が運転手を下ろしているのを見たという方がいるので……貴方でしたか」
「見られていた?」
「ええ、男性のお客様がそう仰ってましたので」
みんなが目と目を合わせる中、救急車のサイレンが聞こえ、息子だからと自分と那智が乗っていくことになった。
「航平、みんなへの説明は任せた。上手くやってくれよ?兄貴達じゃ心許ないからな。後、栞には動揺させないようにして欲しい」
「はい。でも奥さんだから……」
「みんながいるから平気だろうが、妊婦ってこと忘れるなよ?」
「分かりました」
救急車に乗り込み、何かあったら連絡すると言って後ろの扉が閉まる。
救急車の中で処置をしてもらっているのを見ながら、隊員の人に聞かれたことを答えていく。
《 冬弥さん見た人ってもしかして……》
《 今、黒龍が追ってます。多分間違いないかと》
《 無理しないでね?二人共》
《 御意》
「……雪翔」
「え?何?」
「何をポーっとしてるんだ?」
「那智さん、輸血とかってどうなるのかなって思って」
「それは問題ない。それより俺たち以外にいなかったのに、冬弥を見たってやつが気になるよな」
「う、うん……」
「後にしましょう。これは多分縫われますねぇ。普段ならなんとか出来たんですが、処置が遅れました。栞さんに叱られてしまいます。それと雪翔」
「どうしたの?痛い?」
「お父さんではなくて、パ・パです!」
「もう!今そんなこと言ってる時じゃない……あ、LINEだ」
「誰だ?」
「航平ちゃん。みんなと合流できたって。病院の名前だけ入れておくね」
コソっと返事だけ送り返して、病院につくのを待つ。
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