下宿屋 東風荘 5

浅井 ことは

文字の大きさ
上 下
32 / 76
夏休み~狐一族温泉観光ツアー前編~

.

しおりを挟む
「お待たせしましたねぇ」

「うわっ!いつ乗ったの?」

「さっきです。森の中の方が隠れられますし。ちゃんと術はかけてありますよ?」

「一言言ってよ……僕びっくりしちゃった」

「雪翔気づかなかったのか?」

「何を?」

「冬弥さん達普通に乗ってきたんだけど……」

「動いてたのに?」

「このバスゆっくりだから乗れないことは無いよ?開けてもらわないといけないけど」

「僕外見てたから……」

「航平君は気配に敏感みたいですねぇ」

「昔からです。後、さっき旅行中兄弟交換するって言ってましたけど」

「馬鹿か!なんで俺の兄貴が京弥さんなんだよ……」

「嫌なんですか?」

「そうじゃなくてですね……」

「那智は兄上には口でも勝てないですからねぇ」

「そうなの?だったら僕も見てみたいから交換賛成!」

「だそうですよ?私は夏樹さんでも構わないですけど。那智と思えばなんにも変わりませんし」

「冬弥、一応俺の方が歳上なんだけどな?」

「知ってますよ?でも那智とそっくりじゃないですか」

「「似てない!」」

ほらね?と面白そうにからかっているが、アナウンスでもうカバとワニの近くに来ていると聞いて、みんなを無視して窓から探すと、京弥もスケッチブックを抱え、夏樹までも窓からキョロキョロと探していた。

カバもワニも暑いからか水の中にいてあまり見えなかったが、それでも係の人が餌かなにかをポイっといくつか置いた瞬間ノソノソっと歩いて出てきたのには驚いた。

「雪翔、カバさんですよ!ワニは思ったより大きいですねぇ」

「うん。本当に汗の色がピンクなのか見てみたかったなぁ」

「流石にそばまではいけませんからねぇ。那智行ってきてくれます?」

「アホかお前は!」

ワニの口は何かで縛るとあかないと聞いたが、それでもそれをする人はショーだとしてもすごいと思うとボソッと言ったつもりが聞こえていたらしく、航平に思いっきり笑われてしまった。

「笑うところあった?」

「真面目な顔で言うから。テレビかなにかで見たんだろ?」

「うん。噛まれた人もいるって。頭突っ込んでる人もいたんだよ?僕見てるだけでドキドキしちゃってて、それが目の前にいるんだもん」

「最後の赤ちゃんライオン抱っこする時どうするんだよ」

「え?赤ちゃんだから噛まないんじゃないの?」

「怒らせたら噛むだろ?」

「そんな事しないもん」

次々と進んでいき、いよいよライオンなどの猛獣エリアに進んだ時、ガクッと車が止まってしまった。

「溝にでもハマったのかな?」

「何か変な匂いしません?」

「金、銀。姿消してみてきてよ」

スっといなくなったと思ったら、すぐに戻ってきて、前からも後ろからも煙が出ているという事だった。

「故障か?」

「那智、私達後部座席ですけど、逃げた方がいいですかね?」

「こんなに人数いたら抜けるとまずいだろう?」

そうこう言ってるうちに、アナウンスで金網に近寄らないように、係の指示に従って降りるようにと言われる。

『餌やりのエリアまでは金網が張ってあるのでライオンは来ません。安心して降りてください。車からなるべく離れてください』

夏樹がおんぶしてくれたので、航平が車椅子と荷物を持ち、降りて離れてから車椅子に座らされる。

「故障にしては大げさだよな?」

「ものすごくガソリンくさいんですけど……」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

下宿屋 東風荘 4

浅井 ことは
キャラ文芸
下宿屋 東風荘4 ☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:.. 大きくなった下宿に総勢20人の高校生と大学生が入ることになり、それを手伝いながら夜間の学校に通うようになった雪翔。 天狐の義父に社狐の継母、叔父の社狐の那智に祖父母の溺愛を受け、どんどん甘やかされていくがついに反抗期____!? ほのぼの美味しいファンタジー。 ☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:.. 表紙・挿絵:深月くるみ様 イラストの無断転用は固くお断りさせて頂いております。 ☆マークの話は挿絵入りです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

便利屋ブルーヘブン、営業中。~そのお困りごと、大天狗と鬼が解決します~

卯崎瑛珠
キャラ文芸
とあるノスタルジックなアーケード商店街にある、小さな便利屋『ブルーヘブン』。 店主の天さんは、実は天狗だ。 もちろん人間のふりをして生きているが、なぜか問題を抱えた人々が、吸い寄せられるようにやってくる。 「どんな依頼も、断らないのがモットーだからな」と言いつつ、今日も誰かを救うのだ。 神通力に、羽団扇。高下駄に……時々伸びる鼻。 仲間にも、実は大妖怪がいたりして。 コワモテ大天狗、妖怪チート!?で、世直しにいざ参らん! (あ、いえ、ただの便利屋です。) ----------------------------- ほっこり・じんわり大賞奨励賞作品です。 アルファポリス文庫より、書籍発売中です!

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

処理中です...