下宿屋 東風荘 5

浅井 ことは

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夏休み~狐一族温泉観光ツアー前編~

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「すいません、お待たせしました。俺だけでは無理なのでノアに手伝ってもらってたんです。あとは魔力を流せば目的地に着くようにしてあります」

「あ、あの!」

「あれ?デパートの時の」

「はい」

「元気だった?」

「とっても!また会いたいなって思ってたんです」

「俺もだよ。よかったらお昼にでもここに来て。そしたら軽食くらい出せるから」

「本当ですか?ありがとうございます」

「そろそろお時間です」

「もう、少し話してただけじゃん!ノアのケチ!」

真ん中に集まってくれと言われ、荷物を持って真ん中に集まると、そのまま白く輝き、ふっとすぐに景色が変わる。

「着きましたねぇ」

「もう?」

「あちらの方は魔法を使いますから。旅館に荷物を預けてから観光しましょうか」

着物や洋服、それになんの集まりか分からない老若男女がゾロゾロと旅館まで歩き、冬弥が手続きをしてくれたので、行きたいところをそれぞれ楽しむことにした。

祖父母と栞の両親と栞は近くの港から出ている遊覧船観光。那智の両親はわかってはいたがショッピング。冬弥・那智・昴組は先に近くの社に挨拶に行くと言ってみんな出かけてしまい、残ったのは八名。

「周太郎たちも好きなところを見て回るといい」と那智が言ったものの、周太郎と重次はついて行きますと頑として動かず、三郎と四郎は柔軟に、人の世界を見学してきますと行ってしまった。

近くにサファリパークがあるというので行ってみたいと航平にオネダリすると、今度は残り全員がついてくるという。

六人で行き、バスもほぼ貸切となって車に乗り込む。

「なにかの映画みたい」

「餌あげられるんだろ?」

「そう書いてあるけど、赤ちゃん虎も抱っこしたいし、このバスはライオンとかカバとか見るみたいだよ?京弥さんと夏樹さんもいいの?」

「俺たちはこちらで見たことがないんだ。説明はふたりに任せたからな?」

「分かるのだけだよ?」

その後バスが動き出し、係のおじさんの話を聞きながらポイントで何分か止って見せてくれる。

「あ、カンガルーだ!」

「お腹からなにか出てきましたよ?」

「カンガルーはお腹の袋で子育てするんです。中におっぱいがあって、その中で赤ちゃんは母乳を飲んで育つと聞いたことがありますよ」

「航平ちゃん動物詳しいの?」

「普通だよ?」

そんな話をしていると、京弥はノートにササッと模写し、夏樹はカメラで写真を撮っていて、重次と周太郎に至っては窓にかじりついている。

「次はどこだろう?」

「パンフレットだと次はシマウマみたい。その後何でかバッファローって書いてある」

「虎とかライオンは?」

「最後の方じゃない?」

「お、おい。何だあれは?」

車が動いてシマウマの群れを見た夏樹が、変な柄の馬がいるといいだしたのでつい笑ってしまう。

「シマウマだよ。馬みたいだけど違うからね?」

「乗馬は出来んのか?」

「聞いたことないけど……」
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