下宿屋 東風荘 5

浅井 ことは

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夏休み~狐一族温泉観光ツアー前編~

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みんなで食べた後は片付けをし、早めに就寝して早起きをする。

「おはよう。航平ちゃんおきてよ」

「ん?あぁ。雪翔に起こされるってことはまた眠れなかったんだろ?」

「うん、あんまり。だってどこに行くのかドキドキしちゃって眠れなかったんだもん」

「今何時?」

「六時半だよ」

「早くないか?」

「だって……」

とにかく顔を洗ってきてくれと言って、荷物を玄関に置いてからリビングに行くと、冬弥が新聞を読んでいた。

「冬弥さんおはよう 」

「おはよう。早いですねぇ」

「航平ちゃんも起こしちゃった!」

「まだ時間はありますよ?」

「分かってるんだけど。ねえ、天満の所まで一気に行けないの?」

「昴さんと私の力でしたら一瞬なんですけど、荷物と人数的に中継していく方が楽なんですよ」

「そうなんだ。僕も出来たらいいのになぁ」

「出来ないんですかね?」

「分かんない。でも、あの感覚がまだ忘れられないんだ」

「コンテストの時のですか?」

「そう。怖くなかったし、気持ちよかったんだよ?」

「それなんですけど、若しかしたら姿を消してできないんですかね?って兄と少し話してたんですけどね、白龍と黒龍と一度ちゃんと話した方がいいと思いますよ?」

「うん、旅行中も何度か話しかけてみる」

「それと、栞さんなんですけど……」

「何かあったの?」

「最近少しお腹が張ると言ってましてねぇ。幸さんの時もよく似たことを聞いたので、ちょっと気をつけてあげてください。あ、内緒ですよ?」

「わかった。お婆ちゃん達もいるからこっそり話しておくね」

「お願いします。じゃぁ、朝ごはんにします?」

「僕、糠漬け出してくる」

最近はもう匂いにもなれ、ぬか床を混ぜたり出したりしても平気になり、つけるのも楽しくなってきていた。

「くさっ!」

「糠漬けだよ?」

「そんなに匂いするんだ……あ、おはようございます。俺もなにか手伝いましょうか?」

「大丈夫ですよ。温めるだけですから」

炊きたてのご飯に、じゃがいものお味噌汁。糠漬けに卵焼き。残りの煮物を出したところで栞が降りてきて、航平が荷物を下ろすのを手伝っている。

「多くない?」

「だって!服が決まらないんですもの。お母様たちお洒落だし、うちの母大丈夫かしらって昨日あまり眠れなくて……」

「普通でいいのに。動きやすい服が1番だと思うよ?」

「分かってはいるんだけど……」

「帰りは送りますし、女性は荷物が多いって言いますから」

では行きましょうかと言う冬弥の1言で待ち合わせ場所に向かうと、既にみんな来ていて「遅い!」と言われてしまう。

「お爺ちゃん!お婆ちゃん!」と言うと、すぐにニコニコしだして、さっきまで遅いと言っていたのが嘘のようだった。

「みんな揃ったか?」

「昴さん、早すぎです。こちらには妊婦もいるんですよ?」

「すまんすまん、俺もこちらの温泉なんて数100年ぶりだからついな」

ついじゃないです!と文句を言いつつも、九人ずつに別れ、それぞれポイントまで飛ぶ。

飛ぶたびに航平ちゃんが「異空間移動なのか?」と聞いていたが、それはちょっと違うと一言で済まされ、数回飛んで天満の路地に入る。

「さてと。ここから温泉まで一気に行けるんですけど、奏太君がまだですね」

「そやつは何者じゃ?」

「人です。と思っていたら天界と幻界のハーフでしてね、今は天界の王子です」

「そ奴が繋げてくれるのか?」

「昴さん、興味深々でしょう?」

「まぁな、めったにお目にかかれん連中だし、ここは姫さんが薬屋やってたんじゃないのか?」

「色々とあちらも大変みたいですよ?」
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