下宿屋 東風荘 5

浅井 ことは

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夏休み~狐一族温泉観光ツアー前編~

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紫狐と桜狐、雫はデザートの用意。

水狐と籃狐は畑に野菜を取りに行き、翡翠はいちごだけを洗っている。

「何作るの?」

「お肉が多く残ってまして、今アスパラなど採ってきてもらってるので、豚肉のアスパラ巻きは決定ですね。後はカレーは残ったら冷凍できるのでカレーとサラダ。卵もあるのでカボチャの残り物でキッシュを栞さんが作ってくれてます。他に食べたいのあります?」

「鶏肉ありますか?」

「胸肉しかないですよ?」

「ハーブで蒸したらどうでしょう?」

「良いですね。サラダの上に乗せちゃいましょうか」

「俺作ります」

「僕も!」

キッチンはいっぱいだから、座っててくれと言われ、暇なので金と銀とテレビを見ようとつける。

ぎゅっとキーホルダーを握って、白達にも呼びかける。

《そんなに強く握らずとも、主とは繋がっておるので離れていても駆けつけられる》

《何か問題でも?》

《明日から旅行なんだ。この前のバス停であった人覚えてる?》

《何やら人の匂いではなかったもの…… 》
《だが、害はなさそうに見えたが……》

《あの人近くにいる気がするんだ。旅行中見張っててくれないかな?》

《御意。何かあれば報告する》

《うん、ありがとう》

「雪翔君どうしたの?ボーッとしちゃって」

「え?そう?何でもないよ?」

「ならいいんだけど、話しかけても反応しないからどうしたのかと思っちゃった」

「それって……どの位?」

「5分くらいかしら?」

「そんなに……?」

「雪翔、白達と話してたんですか?」

「う、うん。旅行だからって報告」

「それにしては時間かかってましたねぇ」

「僕そんなに長く話してないんだけど」

「もう少し練習したらどうですか?まだ慣れてないだけだと思いますけど、意識が飛んだままは危険です」

「そうだよね。金たちとは上手くいくんだけど……」

遊び出した金と銀を呼んで少し話をするが、答えは外に出ていないから。

それだけだとわからないと思い、次の報告を聞く時には、金たちにそばにいてもらうことにしようと決めた。

「そろそろ出来ますから、お皿だしてください」

「僕やる!」

みんなの分のお皿を並べ、コップとお茶のボトルも出し、テーブルに乗せていく。

ハーブの蒸し鶏はまだ解されておらず、とてもいい匂いがしていた。

「航平ちゃん凄いね。美味しそう」

「取り分ける時に切り分けてるんだけど、切っておいた方が良かった?」

「航平ちゃん切ってね?」

「了解。カレーももう出来るみたいだし、狐ちゃんたちはどこで食べるの?」

「あっちのテーブルでみんな食べるよ。金たち最近行儀も良くなってきたし、翡翠はまだこぼすけど、下に新聞敷いたら片付けも楽なんだ」

「雪翔も充分パパみたいじゃないか」

「そう?でもしーちゃんがいつも見てくれてるから、僕はたまにだよ?」

ボウルにサラダを盛り付けている紫狐が、そんなことないですぅと、フリフリとしだし、それを人睨みで辞めさせる桜狐。

力関係は桜狐の勝ちのようだ。

「ほらほら、みんな手伝ってください。籃狐も運んでくださいよ?桜狐は怒らない!」

出来上がりと同時に、ぬっと漆と琥珀が出てきて、リビングのテーブルに翡翠と先に居座る。
それを見て狐たちみんなが先に漆と琥珀に料理を出していた。
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