下宿屋 東風荘 5

浅井 ことは

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夏休み~狐一族温泉観光ツアー前編~

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リハビリに行き、足を動かして貰い、かなり足の動く範囲が広くなったことと、自分で多少なりとも歩けるようになったこと、それにしばらくの間でも自力で立てていることもあり、歩行器で自由にに歩いても良いと言われ、普通にリハビリ施設内を歩きながら時々歩き方の指導を受ける。

「もう少し姿勢を何とかしないといけないね」

「気を付けてはいるんですけど……なかなか前みたいにうまく背伸びとかできなくって」

「ずっと座ってたからかもしれないね」

「屈むのだけ得意になっちゃいました」

「それは直さないと。買い物とかはどう?」

「やはりカウンターは高くってたまにお釣りとか落としちゃったりするんだけど」

「スーパーのレジはどうかな?」

「それはまだ試したことがないけど、本屋さんとか病院のも高いかな」

場所によっては車イス対応のカウンターもあるとは聞くけどとは言われたが、やはり駅前までいかないと無いとの事だったので、この辺ではないねとの話をして、最後のストレッチを終わらせ、お会計をして、栞に電話をする。

「もしもし、何かあった?」

「あのね、早く終わったから図書館によって帰りたいんだけど」

「いいわよ。何冊借りれるのかわからないけど、大皿料理の本があったら借りてきてくれる?学校はどうするの?」

「時間聞いてなかったから次から行く。夕方までには帰るから」

「重かったらいいからね?」

「椅子に乗るから平気だよ。じゃあ行ってくるね」

電話を切ってからのんびりと図書館に向かい、一通り見たあとに陰陽師や魔術系の本と一緒に、料理の本を探す。

下宿の夕飯で使うんだろうと、いくつか見て三冊取り、受付で図書カードを作って借りる。

椅子の横に二つに分けて置きバス停に行くと、思っていたよりもたくさんの学生が並んでいた。

プシューっとドアが開き、みんなが乗り込むのを待ってから、車椅子で中に入ると、あからさまに邪魔だなと言う顔をされつい下を向いてしまう。

「大丈夫ですか?」

「え?あ、朝の……」

「朝はありがとうございました。あまりバスに乗らないので助かりました」

「いえ、時刻表見ただけですから……」

「降りる場所は同じなので押しますよ」

「でも……」

「顔を上げてくださいね?誰かに言われませんでしたか?」

そう言われ、周りにも顔をちゃんとあげていろと言われたことを思い出す。

「所で、あのバス停近くに神社があると聞いてきたのですけど、東風神社って知ってます?」

「あ、はい。あそこからなら反対通りになります」

「道を間違えてしまったんですかね?地図を見てきたんですが……」

「旅行かなにかですか?」

「ええ、出張のついでに。大きな神社だと聞いてたので見てみたかったんです」

そんな話をしながら、バス停につき車椅子を押して降ろしてもらってから、地図を見て行く道を教えてわかれる。

「どこかで見たような感じの人だったなぁ……」

ただいまと玄関を開けてリビングに行き、栞に本を渡してから、バス停での出来事を話して、病院でのリハビリの話もした所で、そろそろ準備をしなくちゃと、一緒に隣の下宿の厨房まで行く。
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