下宿屋 東風荘 5

浅井 ことは

文字の大きさ
上 下
18 / 76
夏休み~狐一族温泉観光ツアー前編~

.

しおりを挟む
「二人共、図書館で調べられるだけ調べてください。私は昴さんからの巻物の解読をしておきます。那智は……することないんで帰っていいですよ?」

「はぁ?何だそれは!俺も俺で調べてみる。悔しいが大鍋店主のところに聞きに行ってくる」

「あの方なら航平君のことがわかるかも知れませんからねぇ」

「まぁな。報酬がちょっとムカつくが……」

「昔からですが、雪翔のことは気に入ってるみたいなので、無茶は言わないでしょうし、連絡は入れておきます」

「大鍋の人?あの人は魔女なの?」

「魔女ではありませんけど、こういったことに詳しいので心配いりませんよ?それより……」

と翡翠を見て、お風呂に連れていってくれと言われる。

見ると、アイスクリームで服も手もベタベタになっていて、猫のように毛繕いをしているが、それでさらにベタベタになっている。

「翡翠ー?お風呂入ろうか」

「やっ!」

「やじゃないよ。ベタベタだよ?」

「むむむむむ!」

「翡翠ちゃん、俺が入れてあげようか?後で御褒美あげるよ。何がいいかなぁ?」

「イチゴっ」

「じゃあ、いちごの御褒美あげるから、お風呂入る?」

「あいっ!」

「ずるいっ!翡翠が航平ちゃんに口説かれちゃった……」

「し、紫狐もお手伝いしますぅー」

紫狐まで、またクネックネッと不思議なクネクネダンスをしながら、航平とお風呂場まで行っているので付いていくと、いつも遊んでなかなか洗わせてくれない翡翠がちゃんと洗面台とはいえ、お湯に浸かり、ニコニコしながら体を洗ってもらっている。

「今までの僕の苦労は何だったんだろう……お父さんてこんな気分になるのかな……」

「何言ってるの?」

「何でもない。タオル、このイチゴ柄が翡翠のだから」

「うん。ドライヤーで乾かすのかな?」

「紫狐がある程度拭いてから術で乾かしますー。その後毛並みを整えてひーちゃんはお洋服を着ますー」

「術?」

「しーちゃんも使えるみたいなんだ。いつも乾くの早いと思ってたけど、術だったんだね」

「はいー。でも、金たちは普通に拭くのが好きみたいですー。たまに裸で紫狐の教えた踊りを踊ってますよ?」

「何教えたの?その……フリフリダンスって」

「ちょっと待ってくださいね。みんながお風呂から出たら披露します―」

金と銀が服を着て、翡翠も航平に服を着せてもらってからリビングへと移動し、那智と冬弥に栞が観客のようにソファに座り、その横に車いすで移動し紫狐達が出てくるのを待つ。

「では、まず一曲目ですー」

そう言うと、何故か漆や琥珀、水狐に藍狐に桜狐みんなも出てきて拍手をしている。

「栞さんの狐に那智さんの狐まで出てきてる……みんな見たことあるのかな?」

「さぁ?私もそんな話は聞いてませんけどねぇ」

「俺も聞いてないが、たんに興味があるだけだろう?」

どこから出してきたのか、CDデッキを出してきて、ズンチャッズンチャッと可愛い音楽が流れ、金と銀に続いて翡翠もトコトコと歩いてリビングとダイニングの間に位置どる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

下宿屋 東風荘 4

浅井 ことは
キャラ文芸
下宿屋 東風荘4 ☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:.. 大きくなった下宿に総勢20人の高校生と大学生が入ることになり、それを手伝いながら夜間の学校に通うようになった雪翔。 天狐の義父に社狐の継母、叔父の社狐の那智に祖父母の溺愛を受け、どんどん甘やかされていくがついに反抗期____!? ほのぼの美味しいファンタジー。 ☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:.. 表紙・挿絵:深月くるみ様 イラストの無断転用は固くお断りさせて頂いております。 ☆マークの話は挿絵入りです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

便利屋ブルーヘブン、営業中。~そのお困りごと、大天狗と鬼が解決します~

卯崎瑛珠
キャラ文芸
とあるノスタルジックなアーケード商店街にある、小さな便利屋『ブルーヘブン』。 店主の天さんは、実は天狗だ。 もちろん人間のふりをして生きているが、なぜか問題を抱えた人々が、吸い寄せられるようにやってくる。 「どんな依頼も、断らないのがモットーだからな」と言いつつ、今日も誰かを救うのだ。 神通力に、羽団扇。高下駄に……時々伸びる鼻。 仲間にも、実は大妖怪がいたりして。 コワモテ大天狗、妖怪チート!?で、世直しにいざ参らん! (あ、いえ、ただの便利屋です。) ----------------------------- ほっこり・じんわり大賞奨励賞作品です。 アルファポリス文庫より、書籍発売中です!

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

処理中です...