下宿屋 東風荘 5

浅井 ことは

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夏休み~狐一族温泉観光ツアー前編~

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「雪翔はさっきの二人と、金・銀に翡翠ちゃんだけと思ったらいいんですよね?みんなにもあんな力があるんですか?」

「書物によると、あの二体は雪翔の手足となっていいことも悪いことも引き受けてくれる存在ですねぇ。翡翠は前悪い狐に襲われた時にわかったのですが、守ることが得意みたいです。何に対しても敏感ですし、イチゴと言えば飛んでくるくらい耳もいいです。金たちはどうやら我々の狐と同じような役割のようですね。ただお札を使うというのが詳しく書かれていなくて、今調べてる最中なんです」

「冬弥さんのが詳しいね」

「息子のことですからねぇ。私も書き写しながら勉強しましたよ?」

「僕、小説とかマンガとかでなら分かるんだけど、昔に本当にあったんだよね?」

「あったから血筋とかで残ってるんじゃないのか?分家とか色々あるだろうけど、そのへんは俺にもわからん」

「私はもうサッパリ。ただ、悪いことをしているんじゃないでしょ?だからこのままでもいいと思うんだけど……」

「そうですねぇ。無理しなくてもいいと思いますよ?」

「だが、上は放っておかないだろう?」

「みんな待って!僕と航平ちゃんがついていけてないから!」

「俺はなんとなくわかるけど?」

「えー?僕だけわからないの?」

「雪翔はそのままでいいんじゃないかな?」

そう言われるとそうだとも思うが、こればかりは急いでどうにかなるものでもないのでと、図書館などで調べることにし、航平の力を見せてもらうことにした。

「魔除として部屋においてあるのはこのハーブのようなものをいくつか混ぜたもので、窓際と扉、枕元に置いてます。人は臭わないと聞きました」

小さな袋を手に取った瞬間「くっさ!」と袋を投げたのは那智。

栞も口元を抑えているので、相当匂いがするのだろう。

「どんな匂いなの?」

「普通のハーブみたいな匂いですけど、我々社狐に害がないとはいえ、近づけ過ぎです」

「私は香水みたいな匂いと思いましたけど」

「栞、腹に子ができて鈍ったか?」

「そんなことは。今は特に敏感ですよ?」

「これは邪気を払うものだと聞いてます。昔から持たされていて、自分でも作れるようにと子供の頃から教わっていたものです。前、イギリスにいた頃に、祖母と母から霊や悪いものを追い払う術などを学びました。俺は小学生の高学年の時には悪いものといいものとは見分けがついていたので、鞄にはいつもお守り替わりに邪気袋をつけてましたし、簡単な文言で祓うことも出来ていましたが、一度だけどうにもならない事があって……その時も小さな精霊たちが守ってくれていたんですが、雪翔が来た途端、悪いものが消えたんです……」

「僕がなにかしたの?」

「雪翔は来ただけだよ?何でかは今までわからなかったけど。雪翔、首の後ろにあざがあるだろ?そこが光った記憶はあるんだ」

「そんな時からあったの?」

「まぁ、後ろだから気づかなくても仕方ないといえば仕方ないが、無意識に航平を守ったんだろう」
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