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狐の国~美男美女コンテスト~
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「ところで、あのお題の時のはなんだったんだい?」
「あ、あれはコレです」と、キーホルダーを見せる。
「白龍と黒龍。黒龍が僕を持ち上げてくれて、歩いたふうに見せかけてくれたんです。演出とか階段とかは白龍が。何も反応がなくて、お題ギリギリでしたけど」
「それは式なのか?」
「はい」
「話には聞いていたけど、全く姿が見えなかった。これはさぞ天狐も驚いただろうな」
「見えないように確認してたって白が言ってましたけど、階段は見えるようにしてもらったんです」
「初めて見たものがほとんどだから驚いただろうけど、練習してたのか?」
「いえ、ずっと話しかけてただけで。ほかの人は何したんですか?僕全然見てなくって」
「短歌だったり、狐を使っての軽業だったりが多かったよ」
だからかえって目立ちすぎたくらいだと言われてしまった。
「おう、夏樹飲んでるか?」
「飲んでますよ?昴さん酒くさいですね」
「那智と同じ顔で言うな!雪翔、見事だった。俺も推したかいがあったってもんだ」
昴が原因だったのかと思い、なんで優勝できたのか、それも仕掛けとかあったのではないかと聞くと、流石にそれは全くなかったということで、航平は美貌と空手のギャップでお姉さま方を魅了し、僕は可愛いからと票を集めたとの事だった。
「可愛いって……」
「もちろん、お題では圧倒的票数だったが、この家はハイブリッド揃いか?全員総合優勝者ばっかじゃねーか」
「でしょう?やっぱりそう思います?まぁ、うちの子ほど可愛い子はいませんけどねぇ」
「でた!バカ親」
「失礼ですねぇ。夏樹だって舞台袖で耳出てましたよ?」
「あー、ちょっと厠に行ってくるわ」
逃げた!絶対に逃げた!狡いと思いながらも横を見ると、お腹がいっぱいになったのか、航平が普通に酒を注がれ、那智の両親と話している。
「冬弥さん、上着だけでも脱いでいい?ネクタイも。もう肩凝っちゃうよ」
「いいですよ。みんな勝手に騒ぎ出しましたから」
「それとね、航平ちゃんはまだ未成年だよ?」
「ええ、ですが外国の方と言うのは18で成人の国もあるとか。程々にしておきますが、彼かなり強いですよ?」
「もうみんなそう言うんだから。でも何でふたりが後ろにいたの?僕一人で行くんだと思ってた」
「お題も聞いてなかったですし、舞台も即席ですから、何かあった時のために控えておこうと思ったんですけど、私にもあの二人うっすらとしか分かりませんでしたよ?」
「見えてたの?」
「最後の方は。雪翔の集中力が切れればもっと見えていたかも知れませんが、御簾の向こうは分からなかったでしょうねぇ」
「ああ!!!忘れておったわい」
「お爺さん煩いですよ?」
「すまんすまん、お前達が逃げたあと、賞金を渡すのを忘れておったからと預かっておったんじゃ。二人共旅行券というものが付いておった」と渡され、中を確認する。
「温泉チケットだ。この券一枚で本人とは別で五名様までだって」
「俺のも同じ」
「十人ですか。うちの家族を抜けば二人は留守番ですねぇ」
「俺のを合わせたら行けますよ?」
「みんなで行こうよ!ジイジ達も行ける?」
「雪翔のためなら仕事なんぞ放っていくぞ?」
「そのくらい分かっておるわ!」
「昴さんは行けます?」
「俺は無理だ。流石にここを空けるのはちょっとな」
「わ、私も赤ちゃんを連れてはまだ……」
結局栞の両親・那智の両親と祖父母に冬弥と栞で八人。それに京弥と夏樹が加わって丁度十人となった。
「日にちはこちらで組みます。お盆明けでどうです?人間の世界でも祭りがあるので終わってからにしてください」
「早めに連絡してくれ」
「ちょっと待て、なんで俺が入ってないんだ?」
「あ!忘れてました。自腹で……」
「アホか!」
「昴さん何とかならない?」
「なんとかと言われてもなぁ。仕方ない、枠を一つくらいなら増やせるから、新しいのを送る。盆明けなら間に合うだろ」
「ありがとう!那智さんも一緒に行けるね!」
撫で撫で撫で撫で撫で撫で……
「何でみんな撫でるの?」
「高さ的に丁度いいんだよ」
どれ?と夏樹まで触りだし、最終的には髪がグチャグチャになって、鳥の巣みたいになってしまった。
「それより、夏樹さんも夏が付くんだね」
「俺も『那月』とも呼ばれるが、特に気にしてないからなぁ。那智くらいだろ?嫌がったのって」
「当たり前だ。何で春夏秋冬に合わさないといけないんだよ」
「揃った時は驚きましたもんねぇ。滅多にないことなのに……」
「いいんだよこれで」
「夏智もいいと思うけどなぁ。ね、航平ちゃん?……て、寝てるしっ」
「疲れたんでしょう。三郎、連れてってあげてください」
「分かりました」
「坊っちゃまもお薬の方は?」
「お昼飲むの忘れてた!今から夜の分飲むけど、みんな帰っちゃうの?」
「いえ、明日の皆さんの帰宅までいることになっていますので」
「そうだった。明日帰るんだ僕達」
「なぁに、すぐに会えるじゃろう?雪翔よ、温泉で会えるからそれまでしっかりと勉強しておくのじゃぞ?温泉に宿題は持ち込み禁止じゃ!」
「はーい」
「あ、あれはコレです」と、キーホルダーを見せる。
「白龍と黒龍。黒龍が僕を持ち上げてくれて、歩いたふうに見せかけてくれたんです。演出とか階段とかは白龍が。何も反応がなくて、お題ギリギリでしたけど」
「それは式なのか?」
「はい」
「話には聞いていたけど、全く姿が見えなかった。これはさぞ天狐も驚いただろうな」
「見えないように確認してたって白が言ってましたけど、階段は見えるようにしてもらったんです」
「初めて見たものがほとんどだから驚いただろうけど、練習してたのか?」
「いえ、ずっと話しかけてただけで。ほかの人は何したんですか?僕全然見てなくって」
「短歌だったり、狐を使っての軽業だったりが多かったよ」
だからかえって目立ちすぎたくらいだと言われてしまった。
「おう、夏樹飲んでるか?」
「飲んでますよ?昴さん酒くさいですね」
「那智と同じ顔で言うな!雪翔、見事だった。俺も推したかいがあったってもんだ」
昴が原因だったのかと思い、なんで優勝できたのか、それも仕掛けとかあったのではないかと聞くと、流石にそれは全くなかったということで、航平は美貌と空手のギャップでお姉さま方を魅了し、僕は可愛いからと票を集めたとの事だった。
「可愛いって……」
「もちろん、お題では圧倒的票数だったが、この家はハイブリッド揃いか?全員総合優勝者ばっかじゃねーか」
「でしょう?やっぱりそう思います?まぁ、うちの子ほど可愛い子はいませんけどねぇ」
「でた!バカ親」
「失礼ですねぇ。夏樹だって舞台袖で耳出てましたよ?」
「あー、ちょっと厠に行ってくるわ」
逃げた!絶対に逃げた!狡いと思いながらも横を見ると、お腹がいっぱいになったのか、航平が普通に酒を注がれ、那智の両親と話している。
「冬弥さん、上着だけでも脱いでいい?ネクタイも。もう肩凝っちゃうよ」
「いいですよ。みんな勝手に騒ぎ出しましたから」
「それとね、航平ちゃんはまだ未成年だよ?」
「ええ、ですが外国の方と言うのは18で成人の国もあるとか。程々にしておきますが、彼かなり強いですよ?」
「もうみんなそう言うんだから。でも何でふたりが後ろにいたの?僕一人で行くんだと思ってた」
「お題も聞いてなかったですし、舞台も即席ですから、何かあった時のために控えておこうと思ったんですけど、私にもあの二人うっすらとしか分かりませんでしたよ?」
「見えてたの?」
「最後の方は。雪翔の集中力が切れればもっと見えていたかも知れませんが、御簾の向こうは分からなかったでしょうねぇ」
「ああ!!!忘れておったわい」
「お爺さん煩いですよ?」
「すまんすまん、お前達が逃げたあと、賞金を渡すのを忘れておったからと預かっておったんじゃ。二人共旅行券というものが付いておった」と渡され、中を確認する。
「温泉チケットだ。この券一枚で本人とは別で五名様までだって」
「俺のも同じ」
「十人ですか。うちの家族を抜けば二人は留守番ですねぇ」
「俺のを合わせたら行けますよ?」
「みんなで行こうよ!ジイジ達も行ける?」
「雪翔のためなら仕事なんぞ放っていくぞ?」
「そのくらい分かっておるわ!」
「昴さんは行けます?」
「俺は無理だ。流石にここを空けるのはちょっとな」
「わ、私も赤ちゃんを連れてはまだ……」
結局栞の両親・那智の両親と祖父母に冬弥と栞で八人。それに京弥と夏樹が加わって丁度十人となった。
「日にちはこちらで組みます。お盆明けでどうです?人間の世界でも祭りがあるので終わってからにしてください」
「早めに連絡してくれ」
「ちょっと待て、なんで俺が入ってないんだ?」
「あ!忘れてました。自腹で……」
「アホか!」
「昴さん何とかならない?」
「なんとかと言われてもなぁ。仕方ない、枠を一つくらいなら増やせるから、新しいのを送る。盆明けなら間に合うだろ」
「ありがとう!那智さんも一緒に行けるね!」
撫で撫で撫で撫で撫で撫で……
「何でみんな撫でるの?」
「高さ的に丁度いいんだよ」
どれ?と夏樹まで触りだし、最終的には髪がグチャグチャになって、鳥の巣みたいになってしまった。
「それより、夏樹さんも夏が付くんだね」
「俺も『那月』とも呼ばれるが、特に気にしてないからなぁ。那智くらいだろ?嫌がったのって」
「当たり前だ。何で春夏秋冬に合わさないといけないんだよ」
「揃った時は驚きましたもんねぇ。滅多にないことなのに……」
「いいんだよこれで」
「夏智もいいと思うけどなぁ。ね、航平ちゃん?……て、寝てるしっ」
「疲れたんでしょう。三郎、連れてってあげてください」
「分かりました」
「坊っちゃまもお薬の方は?」
「お昼飲むの忘れてた!今から夜の分飲むけど、みんな帰っちゃうの?」
「いえ、明日の皆さんの帰宅までいることになっていますので」
「そうだった。明日帰るんだ僕達」
「なぁに、すぐに会えるじゃろう?雪翔よ、温泉で会えるからそれまでしっかりと勉強しておくのじゃぞ?温泉に宿題は持ち込み禁止じゃ!」
「はーい」
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