下宿屋 東風荘 5

浅井 ことは

文字の大きさ
上 下
12 / 76
狐の国~美男美女コンテスト~

.

しおりを挟む
「さて、逃げましょうか!」

「え?」

「三郎、四郎航平君を抱えてください。一緒に飛びます!」

「ま、まだ舞台の上……」

話してる途中から、いきなり景色が変わり、四郎が車椅子を持ち、三郎が航平を肩に担ぎ、那智に抱っ子されて冬弥の力で上空まで飛んでいた。

「さて、フィナーレに相応しいようにしておきましょうかねぇ。桜狐、桜吹雪を。水狐、凍らせて少し雪を。任せましたよ」

「御意!」

すると、綺麗な結晶がはっきりとした雪と、桜の花びらが宙に舞い、それを利用して「行きます」と、冬弥が言ったと思ったら、街の屋根の上を飛んで屋敷まで一気に帰ってきてしまった。

「ちょ、いいの?」

「いいんです。後は桜狐と水狐の術で観客が魅了されていることでしょうから」

「それ、お前がお題で昔やったやつか?」

「ええ、あれらも天狐の力の片鱗を持ってますから、前より広範囲に広げていると思いますよ?」

「お爺ちゃん達は?」

「術に紛れて帰ってくると思います。さて、宴会の用意は出来てますかねぇ」

「僕達着替えちゃダメ?」

「折角なのに?」

「う、うん」

パタパタパタっと走る音が聞こえ、「き、聞きました今、お義母様の影から連絡が……」

「幸さんそんなに走っては体に障りますよ?」

「大丈夫です。雪翔君、航平君おめでとう!もう私嬉しくて!」

「雪翔ーーー!でかしたーーー!」

「航平君ーーー!かっこよかったわぁ。おばさん惚れちゃったわぁ」

「ば、バアバまで?」

撫で撫で撫で撫で撫で撫で撫で撫で……

「もう、はーげーるー!」

「おおすまん!宴じゃ。昴も連れてきたから大広間に用意じゃ」

誰に言ったのかわからないが、大広間に次々と料理が運び込まれ、みんなからもおめでとうと言われる。

「あ、周太郎さんに重次さん?」

「ご無沙汰しております。御二方共おめでとうございます」

「ありがとう。見てくれたの?」

「はい、人混みに紛れながらですが」

「私は使用人のみんなと奥で。凄かったです。空から落ちた時ヒヤッとしました」

「さぁさぁ、こんなにみんなが集まるのは滅多にないんですから、座ってくださいな。重次・三郎・四郎・周太郎も座りなさい」

「我らは……」

「そうです、私もただの使用人で……」

「何を言ってるの?周太郎はここに来た時の雪翔の付き人でしょう?お世話せずにどうします?三郎と四郎は今日は姿を現してますし、航平君の補佐で活躍しましたから、航平君と座りなさい。そこの恥ずかしいお爺さん二人は黙って!あ、南の奥様も航平君から離れてくださいな。栞さんと幸さんはのんびりしててちょうだいねぇ」

「お婆ちゃん仕切ってる」
「静かに話してるのに重圧が……」

「雪翔?聞こえてますよ。ほら、二人は真ん中に」

準備が整えられ、乾杯してから料理を小皿に取り分けてもらう。

「あ、あれって……肉みたいな魚?持ってきてくれたの?」

「重次に頼んだんだ。雪翔の口に合うなら航平も食えるだろう?」

「魚に見えないけど。肉団子かと」

「そういう魚なんだよ」

一口食べて美味しいと航平は食べに回り、みんながほろ酔い出した頃に夏樹と京弥から話しかけられる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

下宿屋 東風荘 4

浅井 ことは
キャラ文芸
下宿屋 東風荘4 ☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:.. 大きくなった下宿に総勢20人の高校生と大学生が入ることになり、それを手伝いながら夜間の学校に通うようになった雪翔。 天狐の義父に社狐の継母、叔父の社狐の那智に祖父母の溺愛を受け、どんどん甘やかされていくがついに反抗期____!? ほのぼの美味しいファンタジー。 ☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:.. 表紙・挿絵:深月くるみ様 イラストの無断転用は固くお断りさせて頂いております。 ☆マークの話は挿絵入りです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

便利屋ブルーヘブン、営業中。~そのお困りごと、大天狗と鬼が解決します~

卯崎瑛珠
キャラ文芸
とあるノスタルジックなアーケード商店街にある、小さな便利屋『ブルーヘブン』。 店主の天さんは、実は天狗だ。 もちろん人間のふりをして生きているが、なぜか問題を抱えた人々が、吸い寄せられるようにやってくる。 「どんな依頼も、断らないのがモットーだからな」と言いつつ、今日も誰かを救うのだ。 神通力に、羽団扇。高下駄に……時々伸びる鼻。 仲間にも、実は大妖怪がいたりして。 コワモテ大天狗、妖怪チート!?で、世直しにいざ参らん! (あ、いえ、ただの便利屋です。) ----------------------------- ほっこり・じんわり大賞奨励賞作品です。 アルファポリス文庫より、書籍発売中です!

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

処理中です...