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狐の国~美男美女コンテスト~
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「パパだから!「叔父だからだ!」
那智は黒系のストライプのスーツ。冬弥はグレーのチェックのスーツを着ている。
「ほら、このシャツを着て下さい。ネクタイは私がしましょう」
「頭は……このままでいいか」
「このまま?」
「何もしない方がかえっていい!」
紺色に大きなチェックのスーツに黄色いネクタイ。シャツはグリーン系と七五三のような出来栄えについ引きつってしまう。
「少年部の方お願いします」
係の人が呼びに来たので、キーホルダーを握りしめ車椅子を押してもらい舞台の袖に行く。
反対側には青年部だろう人たちと航平の姿が見えるので安心だが、ここから一人で出るのはかなり勇気がいる。
『エントリーナンバー五番。早乙女雪翔君』
「行ってこい!」
「え、うん……」
車椅子を動かし舞台の最後に並び前を向くと、通路の横には両祖父母と京弥、それに京弥と年が似た男性がひとりいて、その横に那智の両親がいる。
おじいちゃん達がいるから大丈夫!そう思いながら、歩く願いが届くかが賭けだった。
『……では、五番早乙女君お願いします』
ザワザワザワっと会場がざわめいたと思って、ついキョロキョロっとすると、後ろには那智と冬弥が立っていた。
「雪翔、行きますよ?」
「ま、待って!」
お願い白龍、黒龍力を貸して……
《この舞台だけ立つのならば黒龍に。黒龍が皆に見えぬように支えるので歩いてください。お題は私が引き受けましょう。イメージ通りに進めて貰って大丈夫です》
《なんで今まで……》
《我等が他の者に見えぬか試しておりました。特に天狐に……さ、自然に立ってください。そして一歩踏み出してください》
《うん!》
「雪翔?」
そう心配そうに那智に言われるが、手すりに手を置いて、自力で立つ。
後ろで支えられているのがわかり、ちょっと恥ずかしくなってふたりを交互に見てから、襟を持って「やっぱり恥ずかしいな」と練習道りに歩く。
もちろん冬弥たちは何かあった時のためについてきてくれているが、歩き終わりもう一度真ん中にたってお辞儀をして、ついエヘッと笑ってしまう。
「雪翔……足が……」
「後で説明するね」
『え、えー。歩けないと聞いていたのですが、何とかなったようです。次はお題です。時間は三分、どうぞ!』
「僕一人で行くね」
「だが……」
「雪翔に任せましょう。何かあるはずです」
そう冬弥が言ってくれたので、前にした透明の階段を思い出し、《白お願い》と言って半透明に見えるように作り出してもらい、その階段を黒龍の力でいかにも自分で歩いているかのように登り、丁度天狐の真上辺りで階段を消し、白い羽をばらまきながら、ふわりと舞台の真ん中に降り立つように飛び、着地する。
その時はもう後ろのふたりは興奮状態で耳も尻尾も出ており、どうだとばかりの顔をしている。頑張ったのは僕だよ?とつい思ってしまうが、会場からはもの凄い拍手が沸き起こり、やっと終わったと車椅子にドスッと腰が抜けたみたいに座り込む。
那智は黒系のストライプのスーツ。冬弥はグレーのチェックのスーツを着ている。
「ほら、このシャツを着て下さい。ネクタイは私がしましょう」
「頭は……このままでいいか」
「このまま?」
「何もしない方がかえっていい!」
紺色に大きなチェックのスーツに黄色いネクタイ。シャツはグリーン系と七五三のような出来栄えについ引きつってしまう。
「少年部の方お願いします」
係の人が呼びに来たので、キーホルダーを握りしめ車椅子を押してもらい舞台の袖に行く。
反対側には青年部だろう人たちと航平の姿が見えるので安心だが、ここから一人で出るのはかなり勇気がいる。
『エントリーナンバー五番。早乙女雪翔君』
「行ってこい!」
「え、うん……」
車椅子を動かし舞台の最後に並び前を向くと、通路の横には両祖父母と京弥、それに京弥と年が似た男性がひとりいて、その横に那智の両親がいる。
おじいちゃん達がいるから大丈夫!そう思いながら、歩く願いが届くかが賭けだった。
『……では、五番早乙女君お願いします』
ザワザワザワっと会場がざわめいたと思って、ついキョロキョロっとすると、後ろには那智と冬弥が立っていた。
「雪翔、行きますよ?」
「ま、待って!」
お願い白龍、黒龍力を貸して……
《この舞台だけ立つのならば黒龍に。黒龍が皆に見えぬように支えるので歩いてください。お題は私が引き受けましょう。イメージ通りに進めて貰って大丈夫です》
《なんで今まで……》
《我等が他の者に見えぬか試しておりました。特に天狐に……さ、自然に立ってください。そして一歩踏み出してください》
《うん!》
「雪翔?」
そう心配そうに那智に言われるが、手すりに手を置いて、自力で立つ。
後ろで支えられているのがわかり、ちょっと恥ずかしくなってふたりを交互に見てから、襟を持って「やっぱり恥ずかしいな」と練習道りに歩く。
もちろん冬弥たちは何かあった時のためについてきてくれているが、歩き終わりもう一度真ん中にたってお辞儀をして、ついエヘッと笑ってしまう。
「雪翔……足が……」
「後で説明するね」
『え、えー。歩けないと聞いていたのですが、何とかなったようです。次はお題です。時間は三分、どうぞ!』
「僕一人で行くね」
「だが……」
「雪翔に任せましょう。何かあるはずです」
そう冬弥が言ってくれたので、前にした透明の階段を思い出し、《白お願い》と言って半透明に見えるように作り出してもらい、その階段を黒龍の力でいかにも自分で歩いているかのように登り、丁度天狐の真上辺りで階段を消し、白い羽をばらまきながら、ふわりと舞台の真ん中に降り立つように飛び、着地する。
その時はもう後ろのふたりは興奮状態で耳も尻尾も出ており、どうだとばかりの顔をしている。頑張ったのは僕だよ?とつい思ってしまうが、会場からはもの凄い拍手が沸き起こり、やっと終わったと車椅子にドスッと腰が抜けたみたいに座り込む。
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