下宿屋 東風荘 5

浅井 ことは

文字の大きさ
上 下
7 / 76
狐の国~美男美女コンテスト~

.

しおりを挟む
「お兄さんて……」

「言ってなかったか?親父と一緒で城勤めだ」

「じゃなくって、似てる?」

「どうだろうな?気にしたことがないからわからんが、兄弟だから多少は似てるんじゃないか?」

「楽しみが増えた!」

「終わるのは何時なんですか?」

「いつも十五時だが、屋台も出るからお祭騒ぎだぞ?見て回れると思うなよ?参加者、特に賞を取ったやつは男女関係なく、役人共の格好の見合い相手にされるからな?」

目立たないようにしようと思いながら屋敷に帰り、いつものように台所に調味料を置きに行き、早速野菜スープを作る。

「坊ちゃまは本当にお料理が好きなのですね」

「うん、美味しいの食べると幸せにならない?」

「なります。夏は皆さん食欲が落ちますから、冷粥など好まれますが」

「そうなの?でもこのスープは野菜がメインだから」

そう言って大鍋印の大鍋で作ったのはウインナーなしポトフ。

野菜は豊富にあったので、ブロッコリーをいれて色鮮やかになり、見た目は綺麗だった。

「あとはね、この塩とコショウが一緒になったのをふりかけて、味見して終わり。簡単でしょ?」

「これなら私どもでもできます。今日は前に教えて貰った卵焼きを作ろうと思ってまして。中に明太子を入れるのが今の流行りなんですよ?」

「やった!僕それ好き」

夕御飯の後、宿題は大分済んでいるのでと道場に集められ、最終の確認をさせられる。

「ほれ、空手の演舞ならやってみぃ」

「あ、いえ。本番で……でないと恥ずかしくてと言うのもありますが、そう何度も割るのはちょっと」

「ん?板じゃろう?」

「瓦にしました」

「馬鹿かお主は!?掌と蹴りだけで割るつもりか?」

「はい。一枚から三枚まで」

「カァーッ!また無茶なことを。腰を据えて割るのとは違うぞ?」

「はい、それも分かっていますが、人間でしかもハーフの俺は、そのくらいインパクトがなければ、客人扱いのままで誰も見向きしないでしょうし、お爺さんの目標の優勝にはこれでも足りないと思っています。ですが、俺にとっては今出来る最高のことはこれしか思い浮かばないんです」

「分かった。ただし、怪我はさせられん。ちょっとでも違和感があれば必ずやめて欲しい」

「わかりました」

「で、雪翔は決まったのか?」

「うん、ぶっつけ本番だけど……」

「お前もか!!!」

「御館様。雪翔や航平はちゃんと考えています。明日を楽しみにされたらどうですか?」

「那智まで……分かった。ならば、今宵は体を温めて早々に寝た方が良い。明日は一日長く感じると思うでの。それと、あいつはまだか?」

「父ですか?現地で落ち合います」

「全く、中々顔も見せんくなって……明日は引きずってでも連れてこねばならん」

「仲悪くないよね?」

「この屋敷の別宅で住んでおった時はよう来た。冬弥たち兄弟と、那智たち兄弟とよく河原に行っておったの。仕事で夏に行ってからは距離のこともあるが、お互い忙しくなって中々会わんくなった」

どこかさみしげに見える祖父に、なんと声をかけていいかわからず、大人しく言われたとおりにお風呂へいき、薬を飲んで横になる。

「航平ちゃん、明日どんな人が出るんだろうね?」

「そりゃ、美男美女集団だろ?各地で選ばれてるんだから」

「そうじゃなくてさ、お題だよ!何するのかな?」

「女の子は歌とか踊りじゃないかな?多いって三郎さんたちも言ってたし。男は筋肉自慢もいるんだって」

「何でもありだね」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

下宿屋 東風荘 4

浅井 ことは
キャラ文芸
下宿屋 東風荘4 ☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:.. 大きくなった下宿に総勢20人の高校生と大学生が入ることになり、それを手伝いながら夜間の学校に通うようになった雪翔。 天狐の義父に社狐の継母、叔父の社狐の那智に祖父母の溺愛を受け、どんどん甘やかされていくがついに反抗期____!? ほのぼの美味しいファンタジー。 ☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:.. 表紙・挿絵:深月くるみ様 イラストの無断転用は固くお断りさせて頂いております。 ☆マークの話は挿絵入りです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

便利屋ブルーヘブン、営業中。~そのお困りごと、大天狗と鬼が解決します~

卯崎瑛珠
キャラ文芸
とあるノスタルジックなアーケード商店街にある、小さな便利屋『ブルーヘブン』。 店主の天さんは、実は天狗だ。 もちろん人間のふりをして生きているが、なぜか問題を抱えた人々が、吸い寄せられるようにやってくる。 「どんな依頼も、断らないのがモットーだからな」と言いつつ、今日も誰かを救うのだ。 神通力に、羽団扇。高下駄に……時々伸びる鼻。 仲間にも、実は大妖怪がいたりして。 コワモテ大天狗、妖怪チート!?で、世直しにいざ参らん! (あ、いえ、ただの便利屋です。) ----------------------------- ほっこり・じんわり大賞奨励賞作品です。 アルファポリス文庫より、書籍発売中です!

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

処理中です...