下宿屋 東風荘 5

浅井 ことは

文字の大きさ
上 下
6 / 76
狐の国~美男美女コンテスト~

.

しおりを挟む
その後は航平の着替えを待って、那智に妖街まで連れてきてもらい、団子屋でみたらし団子を食べて、お土産に草団子を買い、いつもお願いしている電池の充電ができているか聞きに行ってから、また増えたと言うショッピングモールへと行く。

「なんだこれ?」

「僕も最初驚いたけど、ショッピングモール?」

「ありえない……」

新しい店がどこなのかはすぐにわかり、小さな店に入ると、思っていたよりも種類の豊富な調味料がたくさん置かれており、カレー粉やシチューの素にコンソメスープの素なども置かれていた。

「調味料殆どあるんじゃない?」

「いちばんまともな店だな。なにか買うのか?」

「こっちの人って、食事は和食多いでしょ?それに胡椒もあまり使わないし」

「塩の次に高いからな」

「じゃあ、これ買う」

手に取ったのはいつも見ている味塩コショウ。これならば短時間でたくさんのものが作れる事と、いくつかあればみんなで使い回しもできるだろうと三つ買うことにし、お会計を済ませる。

「思ってたより高めだった……」

「俺も換金してもらったから、何か買おうかな?」

「ここで?」

「いや、ほらあそこの古着屋」

「いいのあった?」

「大学の近くの古着屋に欲しいのがあったんだけど、あまり出回ってないやつだから高くて。今ちらっと見たら安かったみたいだし、ちょっと見てくるよ」

航平が服屋さんに行っている間に、氷と書かれたお店でかき氷のイチゴ味を食べる。

「ねぇ、なんでこんなに向こうとこっちで値段が違うの?」

「価値がわかってないだけだ。こっちの者は着物が多くて、呉服屋か露天商から買うことが多い。その値段に合わせてるんだと思うんだが、よくこれだけ統一感のないものを作ったものだ」

「だよね……」

走って戻ってくる航平がニコニコしていたので、値段のことを聞くと、あちらと同じものが半額だったと言い、サイズも良かったので買ってきたという。

「それでも高いんじゃない?」

「5000円位かな。向こうだとあと一万はいるからお買い得!それに本物だし」

「偽物とかわかるの?」

「あ、この服のブランドはナンバーが書いてあって、100番以降は必ず#(シャープ)が付いてるんだ」

「それで見分けるの?」

「後はロゴだけどね」

「お前達呑気にしてるが、コンテストは明日だぞ?今頃他の奴らは髪を切ったり色々としてると思うんだが……」

「だって、お爺ちゃんが優勝って言ってるけど、僕達勝手に出されるんだから、各地で勝ち残ってきた人に勝てるわけないじゃん。ね、航平ちゃん」

「うん、でも雪翔は特に注目されそうだけどね」

「そうかなぁ?」

「全く自覚のない奴らだ。まぁいい、明日は朝の九時には付いてないといけないし、お前達の出番は雪翔が十時半頃、航平がお昼前。その後全員がステージに並んで、各部の結果発表に、総合優勝が決まる流れだ」

「各部での優勝の中から決まるの?」

「審査は全体からだ。総合は観客からの票が特に左右されるからどれだけお題でアピール出来るかだな」

「那智さんは三冠王で、冬弥さんが五冠でしょ。京弥さんも優勝したことあるって言ってたけど、那智さんのお兄さんは?」

「あいつは二冠だ。歳は京弥さんと冬弥の間だから被るんだよ。運がいいって笑ってたけど、うちの家のものの中では唯一まともかもしれん」

「結局、会えないままだったんだけど……」

「あぁ、明日会いたくなくても会える」

「ジイジと一緒に来るの?」

「いや、あいつは参加者を引率してくるんだ。人手が足りないとかで駆り出されたらしい」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

下宿屋 東風荘 4

浅井 ことは
キャラ文芸
下宿屋 東風荘4 ☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:.. 大きくなった下宿に総勢20人の高校生と大学生が入ることになり、それを手伝いながら夜間の学校に通うようになった雪翔。 天狐の義父に社狐の継母、叔父の社狐の那智に祖父母の溺愛を受け、どんどん甘やかされていくがついに反抗期____!? ほのぼの美味しいファンタジー。 ☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:.. 表紙・挿絵:深月くるみ様 イラストの無断転用は固くお断りさせて頂いております。 ☆マークの話は挿絵入りです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

便利屋ブルーヘブン、営業中。~そのお困りごと、大天狗と鬼が解決します~

卯崎瑛珠
キャラ文芸
とあるノスタルジックなアーケード商店街にある、小さな便利屋『ブルーヘブン』。 店主の天さんは、実は天狗だ。 もちろん人間のふりをして生きているが、なぜか問題を抱えた人々が、吸い寄せられるようにやってくる。 「どんな依頼も、断らないのがモットーだからな」と言いつつ、今日も誰かを救うのだ。 神通力に、羽団扇。高下駄に……時々伸びる鼻。 仲間にも、実は大妖怪がいたりして。 コワモテ大天狗、妖怪チート!?で、世直しにいざ参らん! (あ、いえ、ただの便利屋です。) ----------------------------- ほっこり・じんわり大賞奨励賞作品です。 アルファポリス文庫より、書籍発売中です!

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

処理中です...