下宿屋 東風荘 5

浅井 ことは

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狐の国~美男美女コンテスト~

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「この舞台にまず三人が立たされるんじゃ。そして1人ずつ左から右に歩いて中央に行き、真ん中から伸びる通路を歩いて戻ってくる。その通路の先には御簾があってのぅ、そこに天狐がおるで、ニッコリと笑ってやれば良い」

「でも僕車椅子だよ?」

「それは許可をとってあるから構わん」

「歩くだけですか?」

「いや、今回のお題は特技じゃ。瓦割りでも踊りでもなんでも良い」

「じゃあ俺は空手かな?」

「瓦にするのか?」

「いえ、誰かに手伝ってもらうことはできますか?」

「三人までなら良かったはずじゃが……」

「俺は演武にします。板を割りながらするので二人誰かにお願いしたいのですけど」

「ならば三郎と四郎でどうじゃ?あれらは慣れておるから」

「はい、有難うございます」

「僕は何にしよう……」

「後二日あるで考えればいい。それとな、もうすぐ来ると思うのじゃが……衣装じゃ」

「あ!嫌だよ?ジイジ達の趣味の服は着ないからね?」

「あいつらはなんと言うか……変な服を着せたがるからのぅ。ほれ、胸にれえすとかいうものが付いた洋装じゃろう?」

「航平ちゃんなら似合いそう……」

「俺も嫌だよ。男がレースなんて……」

「まぁ、明日には届くじゃろうがお主の空手着が必要じゃのぅ。三郎と体格が似ておるで、あやつのでも構わんか?」

「はい」

その後は流れを聞いて、航平から順番に歩かされ、「もっと背筋を伸ばせぃ!」
「もっとゆっくり歩けぇ!」
「ニコッと笑ってみんか!」

と何度もやらされ、冬弥達が来た時にはもうクタクタだった。

「父上、家まで聞こえてきてうるさいですよ?」

「そうか?で、なんじゃ?」

「お昼なので迎えに来たんですよ。栞さんがカレー作ってくれましたから冷めないうちにと思いましてねぇ」

「助かったぁ。僕左右に動くだけでも疲れたのに、お爺ちゃん注文多いんだもん」

「午後は日差しが強くなるので家にいた方がいいですよ?雪翔は宿題もありますし」

「よし、ならば道場で演武の練習を航平はしておくこと!明後日には優勝じゃ!」

「僕何しようかなぁ……」

家に帰ってからご飯を食べ、宿題をしてから道場へ行こうとしたが、お楽しみは当日までとっておこうと、幸さん達の部屋に行き、赤ちゃんを見せてもらう。

「可愛い。少し大きくなったのかな?」

「抱っこする?」

「いいの?」

「はい、そっとね?」

「軽いね。それにあまり泣かないし。赤ちゃんはもっと泣くのかと思ってたけど」

「お乳の時は泣くのよ?でも、起きてる時も結構ご機嫌な時が多いし、親狐がずっとそばに居るから安心なのかも」

「こんなに小さいのに影に入れてるの?」

「みんなそうよ。このことは相性もいいみたいで、すぐに中に入って行ったの」

「もし、相性が合わなかったら?」

「その時は返すことは出来ないから、常に外に出ていて、大きくなってから短時間だけ中に入れてる人もいるわよ」

「うーん、複雑」

「それよりお題は何だったの?」

「特技だって。でも僕何も無いからどうしようかなぁって」

「私も見に行けたらいいんだけど、代わりに京弥さんが見に行くって張り切ってたわよ?」

「京弥さんは出たことないの?」

「一度青年部で出て、ちゃんと優勝したわ。その時も優勝したら結婚してくれって言われちゃって」

「それで決めたの?」

「いいえ。ちゃんとお仕事が決まってからとか言って逃げていて。あの時はお題は長唄だったかしら?」
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