下宿屋 東風荘 5

浅井 ことは

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狐の国~美男美女コンテスト~

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夕御飯を食べてのんびりしていた時の祖父の一言。

『コンテストに二人共絶対参加』

それを聞いてから、プンプンと怒り部屋に戻って航平に出てもいいのかと聞く。

「お世話になってるし、結果がどうであれ俺は出ても構わないよ?」

「なんで平気なの?各部と、総合と結果発表あるんだよ?」

「俺が残るはずないだろ?立ってニコッと笑えば終わりなんじゃない?」

呑気に言っている幼馴染の航平はハーフということもあり、綺麗なブロンドの髪に、端正な顔立ちをしており、大学近くのアルバイト先のカフェでは『王子』とまで呼ばれているイケメンぶり。

かく言う自分は平凡な顔立ちで、背も低い上に車椅子に乗っている。

何をどうしたら参加になるのか、城にいる天狐の考えることは良くわからないでいた。

「しーちゃーん」

そう言って影に潜っていた冬弥の狐の紫狐を呼び出し、いつもどんなふうにコンテストが行われているのか聞いてみることにした。

「えーっとですね、前にもお話しましたけど、今回はもう決まっている、春夏秋冬の各部二人ずつの所に、少年少女部にゆっきー。青年部に航平君と追加されたので、三人で戦うわけなのです。その中の各部一名の中から優勝と準優勝が決まり、各部の優勝者の中から総合優勝が決まるのですが、大体は各部で行われるコンテストで既に決まるとも言われていますー」

「どんな事するの?」

「昔はヨーヨーや和歌、軽業などでしたけど、最近では歌や踊りなどにも変わってきてますー。今回のコンテストは本当に久しぶりなので、商品も賞金も大きいと思いますよ?」

「立ってるだけとかじゃダメなの?お爺ちゃんが明日から特訓だって……何するのかなぁ?」

「あ!そうです。『ぱんこれ』と言うものみたいに、舞台から少しお客さんの前で歩いて『あひる』をするんですー!」

「紫狐ちゃん、パリコレのように歩いて、アピールしたらいいの?」とさり気に航平がフォローしてくれる。

普段から人間の世界での言葉は難しいと言っていて、特に横文字は間違えることが多い紫狐だが、実はとても面倒見がよく、あわてんぼうなところを除けばとても頼りになるお友達だ。

「そうなのです。那智様や冬弥様の時は、特に何もしていなかったと思うんですけど、女性陣がキャーキャーと言っていて、圧倒的投票数で冬弥様は五冠、那智様は三冠。しかも冬弥様も那智様も全ての部で優勝と総合優勝してます」

「え?投票?」

「そうなのですー!みんなが城の周りの舞台にたくさん来るんですよ。紫狐はそこの綿菓子と水飴が大好き……じゃなくて、投票数に天狐様の票で決まるんですけど、過去に那智様と冬弥様以外に天狐様の満票取った方はいません」

「僕、もうダメ……京弥さんの子に期待しようよ……」

「あ、お題が毎回ありました」

「お題?」

「例えば狐火をどれだけ美しく見せれるかとか、いなり寿司を早く美味しく作れるとか……ですが、お題が無いなんて聞いたことないですし、みなさんそれに向けて練習するので……」

「順番があとの方が有利なのかな?」

「だろうね、前の人のが見れるから。でも、俺は特に見せれるものなんてないんだけどな」

「紫狐もそこが分からないのです。分かっていれば、御館様も教えてくれると思うのですー」
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