栗花落と姫と妖と……

浅井 ことは

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水の神

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やっと中間にたどり着き、昨日と同じように流れ落ちる滝の水を手で掬い口に含む。

「春の持ってくる水より少し硬めの味ですね」

「そうだな。だが、身体には染み込む感じがする」

「だよね!私も昨日そう思ったの」

みんなが水を飲み、一息ついてから一気に上を目指す。

「お、蝶の滝って書いてある」

「どこをどう見たら蝶なんでしょう?」

「滝の周りに小さいけど花咲いてるよ。蝶々が来るからとか?」

「そんな単純につけたのか……」

「この滝全部に名前つけた人を褒めてあげましょうか。栗花落、この先で折り返しです。周りをよく見ておいてくだはいよ?」

「わかった」

昨日も来て登ったのに、足がそんなに疲れない。

今日は上に行けば行くほど、自分の足が滑って上に上がっていくかのように楽に思うのだが、伝えようにも上手く言葉にならない。

『姫、ようこそ』

『姫様、こんにちは』

「あれ?」

「どうした?」

「昨日は一番上のところで声が聞こえたのに、今声が……」

「なんて言ってますか?」

「ようこそとか、こんにちはとか挨拶かな」

「やはり僕は聞こえませんねぇ。栗花落と春は?」

「全く」

「俺も」

「二人とも水に関係する神なのにですか?」

「関係ないんじゃないか?」

「ねえ、もしかしてだけど」と眼鏡を外して片目を隠してよく見ると、目の端々にチラチラと何かが動くようなものが見える。

その事を言うと栗花落も同じことをしていたが、「オーブみたいです」というので、「たんぽぽの綿毛じゃない?」と見える形は違うよう。

「悪いものでは無いのなら歓迎されてるのでしょう。悪いものならば春が敏感に感じとりますし」

「俺は妖精なら羽がついた小さい人ってイメージが抜けないがな」

『羽は無いけど』

「羽はないって言ってるよ」

「嘘だろ?」

「そう聞こえるんだもん」
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