栗花落と姫と妖と……

浅井 ことは

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仮題

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会場に着くと、かなりたくさんの花。

花屋さんだったからかなと見ていると、色んなお店の名前が書いてあり、来ている人たちも若い人から年配の方までたくさん居る。

「多分、夜の店のママたちだな」

「定期的に花を届けたりお世話しにいってたのは知ってるけど、こんなに沢山……」

「それだけ信頼もされていて、好かれてたんだろう」

「姫愛ちゃん!」

「内田さん。あの……」

「聞いてすぐ来たんだけど、ちょっといい?」

春を見ると行ってこいと言う顔をしていたのでついて行くと、「はい、コーヒーでいい?」

「ありがとう」

「お店のことで、スーツの人が来て」

絶対に栗花落だ!

「俺達も最後になるから手伝うって言ったんだけど、清掃業者が全部するって。明日の葬儀が午前からだから、昼から。葬儀後に忘れ物や欲しいものがあれば早めに来てって言われたけど、姫愛ちゃん忘れ物はある?」

「無いけど……花たちは全部だめになってるよね」

「多分。行かないなら持ってこようと思ってたんだけど」

「私も行こうかな……」

ほかのバイトの子達は葬儀だけで帰ると言っていたそうで、内田さんはみんなにこのことを伝えていると言っていた。

「みんなもう違うところでバイトしてるんだよ。俺なんだか悔しくて。生活のためには働かないといけないのはわかるんだけど……」

「内田さんは開店からいるんだっけ?」

「そう。店長が二店舗目は任せるからねって言ってくれて……」と涙を堪えている。

「私も一年だけどお姉さんみたいで大好きだった」

「そうだよな?」

葬儀後に一緒に行くことを約束して会場に戻り、隅っこの席でただじっと座っているのが精一杯だった。

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