栗花落と姫と妖と……

浅井 ことは

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仮題

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スーパーでは1週間分まとめ買いすると言ってはいたが、父と母二人でカートを押してここぞとばかりに買い込んでいるのに大丈夫か?と思ってしまったが、母曰く「仕込んで冷凍!」といつも言っていたので、帰ったら手伝わされるんだろうなと諦めて着いていく。

「姫愛、お豆腐持ってきて!厚揚げと普通の揚げを三つずつね!」

「はーい」

土曜日で混んでいるのは仕方ないのだが。特売と書かれているのでいつもより人は多い。

「やだなぁ、この混み具合」

持ってきたものをカートに入れて、やっとお会計。

「お母さん、一週間で食費どのくらい?」

「そうねぇ、私はお弁当だから夜の残り詰めてるし、一週間で一万円いかないくらいかしら?」

「こんなに買ったのに?」

「姫愛ー?よーく見なさい。ほら、おつとめ品!」

「へ?」

「すぐに冷凍しちゃうから、値引きのでいいのよ。お肉も分けて冷凍しちゃうし。まさか、あなた料理してないんじゃ……」

「してない。家政婦さんみたいな人がいて、全部してくれるの……」

「たまにはお手伝いくらいはしなさいね」

「分かってる」

会計後に父がダンボールに食材を詰めてカートに乗せているのを手伝い、家に帰ってからは、ジップロックに食材を分けて保存していく。

「ずっとしてたんだ」

「そうよー。姫愛が赤ちゃんの頃からずっと」

「私って、どんな子供だったの?」

「あまり泣かなかったわよ?どちらかと言えば公園より家で絵本とかお絵描きとかするのが好きだったし」

それを聞いていたのか、父がアルバムを引っ張り出してくる。

「これが産まれたての時で……」とたって歩けるようになるまでをまず見せてくれるが、そこまでアルバム2冊。

「写真多くない?」

「こんなものだろ?ほら、これなんて砂場でものすごく嫌な顔してる写真」

「引きつってる」

「これは保育園での運動会だろ?遠足に、学芸会」と高校の入学式まで見てかなり疲れた。

こんなに撮られてるなんて!

何故か嫁に行く時でもアルバムはやらん!と言われてしまい、押し入れの奥深くに閉まって欲しいと頼む。

「姫愛、夕飯どうする?」

「食べる!」

夕食はお鍋。

お腹がはち切れそうなほど食べ、「運動もしなさいよ」と言われてジムを思い出す。

森さんに連絡をして荷物のことを言うと玄関まで来てくれた。

「初めまして。運転手をしております森と申します」と丁寧に名刺まで。

「すいません、果物があるので重いんですが」

「手伝いますね」と父と荷物を車に運び、また「行ってきます」と言って家を後にする。
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