栗花落と姫と妖と……

変化

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時間だけが過ぎ、日が沈み初めた頃に電話が鳴る。

スピーカーにしてくれたので一緒に聞けたのはいいのだが。

『栗花落様、申し訳ありません。逃げられてしまいました』

「逃げられた？」

『はい。最初は縛って散らせば良いだけかと思っていたのですが、突然教室からいなくなりまして』

「お二人は無事ですか？」

『はい。今、妻が校舎裏の建物の方に……って……ま……』

「もしもし？聞こえますか？」

電話を切り、「出かけます」と上着をはおり出すので、慌てて自分も上着を着る。

「待っていてください」

「だって……。裏の校舎って聞こえたし、場所わかるし……」

「でしたら、私から離れないと約束してください」

「する！」

車で学校まで行き、裏門になら停めていても邪魔にならないかもと言って道案内をすると、いつも乗っている車も停まっていた。

「裏から入ったんだ。かしこーい！」

「この門錆びてますねぇ。草も伸び放題ですし」と鍵は壊れていたので無理やり開ける。

「去年はこんなに汚い感じじゃなかったのに……。栗花落さん、右側が昔の部室のあるところ」

走っていくと、無事だと言っていたのに森の着ているスーツはボロボロで、葉子さんのスカートも所々破れている。

「栗花落様、中に！」

「葉子さんまだ持ちますか？」

「あと少しならば」

「開けます」

栗花落が扉を開けると中は真っ暗というより、黒い何かがうねっているようにも見える。

「なに……これ」

気持ちが悪いと後ろに下がると目の前には見知らぬ男性が弓を構えている。

「春、姫を……」

「御意」

失礼……と手を引かれ、かなり離れたところまで遠ざけられる。

だが目の前の男性は構えた弓を離す気は無いようだ。